Tuesday, July 29, 2008

A Few Good Men

いやーーーー、バタバタしていて本当に久々の投稿になってしまいました。

先日、映画『A Few Good Men』を久々に見ました。

いやーーーー、やっぱ好きだわ、この映画。
法廷のシーンに限らず様々な台詞が本当にお洒落に出来ている。凄いと思います。
ジャック・ニコルソンはともかく、トム・クルーズもデミ・ムーアもちょっと苦手なのですが、もうこの映画のおかげで決して嫌いにはなれない私です。

しかしですね、そんなディベータ魂揺さぶりまくりの作品ですが、ハタと気がつくことが。
ジャックもキャフィーもディベートのタブー侵しまくりではない?ということ。

私がディベートを始めた頃、入門編のレクチャーで先ず教わったのは、
「Conclusion comes first」でした。オブジェクト指向な議論構成?
それがですよ、この映画ではわざと結論を言わないシーンばかりです。

ネタバレですが、
例えば、検察が「コード・レッドは隊則の何処に載っているのか」という質問をするシーンは、つまり「コード・レッドは幻想で、実態を伴わないものだ。皆にコードレッドがなんたるかの共通見解もない」と言いたいものと思われます。
これに対し、弁護側は「食堂は隊則の何処に載っているのか」という質問で反撃します。これはつまり、「隊則に載っていなくても厳然と存在するものがある。コード・レッドの定義が隊則に記載されていなくとも実際には隊の誰もがその意味と存在を知っている日常的で身近なものだ」と言いたいものと思われます。
このやり取りは、視聴者に明白に弁護側がこの部分では勝ったという印象を与えますが、同時に大変スマートな印象も与えます。直截的ではなく婉曲的だからこそ格好良いわけです。

検察側のジャックに至っては、「帰りの車が故障した場合、どうやって兵舎に帰られるんですか?」とかいう質問を被告にして、キャフィーに「彼は何を言いたいんだ?」と疑問を呈されています。実はそれが最終的に罠になる質問で、彼の主張を裏づける上で重要な役割を担っています。なので、結論を先に言っては台無しです。罠にはめることができない。そして視聴者は罠が完成した瞬間に「おおっ!そういうことか、こいつ頭良い!」と思う・・・んでしょう。

・・・が、これってディベートの基礎講座的にはダメな感じ。
結論を先に言わないと聴衆を迷子にさせてしまうから絶対先に言え、聴衆に頭を使わせるな、と口が酸っぱくなるほど私自身も言っている気がする。

・・・で、思うに、これは聴衆の頭の問題ではないのではないか、と。
実は弁者の頭の問題ではないか、と思うようになったわけです。
とかく初心者は主張と関係ない枝葉末節に議論を終始させてしまったり、目的に合わない議論を組み立ててしまったりしがちです。これを矯正するため、つまり目的意識を持って各議論を提出するためにまず主張を言うようにするのではないか、と。
なので、一旦そこら辺の初歩技術が身に着いてしまった上級者の場合には、主張の開示を先延ばししても議論の無駄打ちをしないので問題ないし、聴衆も混乱しないのではないか・・・と。

・・・と妙にマニアックな感慨を抱いて興奮していたら、隣で見ていた人曰く、
「この映画難しいよね。何が言いたいのか解らない台詞があった」

・・・・・・・・・・・・。
そ、そうですか・・・・・・。
(さらば新発見・・・・・・やはり基礎講座は不滅なのか・・・)