Friday, December 29, 2006

コブクロの桜 Kobukuro's Sakura

を昨夜から聴いています。

昨日(27日)から色々ありました。

いち。
レジストレーションでYCUとYNUの区別がついていないのを
まるで両大学が悪いかのように言われ続け腹を立てました。
証拠が幾らでも残っているのにどうして面と向かって堂々とウソをつけるのか。

に。
漸くYCUのミスではなく主催者のミスであると認めさせ,謝罪してもらい,
予定通り全員の参加を確保してもらいました。
が,しかし,その後YCUがシェラトンではない別のホテルに収容されたことが判明。
怒りの持って行き場がありません。
なぜYCUの子達がそんな目に合わされなければならないのか。

その後YCUの子達が,私が彼らのために交渉したお礼に,と
虎屋の菓子折りをくれました。
有難く貰ったけど,切なかった。
だって菓子折りの大きな箱は重たくて,
年末で出国前の忙しい時に彼らがそれを買いに行ったのかと,
こんな重いものを飛行機で持ってきたのかと思うと言葉がみつからなくて。
だって彼らは悪くないのに。
一体何故にただ普通に参加するために「付け届け」が必要だろうか。
ここまでして参加してホテルが違うということを彼ら自身はどう思っているのだろうか。
切なくて思わずお風呂場で泣いてしまった。

さん。
夜のパーティのチケットをロビーで配っていて,
会場が二箇所に分かれていることが判明。
二箇所のどちらかを選び,翌日はその逆の会場に行くというシステムだそうで。
つまりSocialなのに皆に会えない(というか半分にしかあえない)ということ。
しかも翌日の晩も同じ人たちと会えないということになるではないですか。
なんだそりゃ。

どういうSocialだ,と思いつつ,ご飯から帰ってきたときに
減りが早かった方に行こう,という話になりました。
で,ご飯から帰ってきてカウンターに行ったら,片方のチケットしか残っていないとのこと,
仕方ないのでそちらを貰って会場へ向かうことに。
しかし,あとになって実はもう片方の会場の分も残っていて,
他の人にはそちらも渡していたことが判明。
なんだそりゃ。

つまり沢山の人が行く大きい方のパーティと小さい人気のないパーティとがあり,
主催者側が大きいパーティに参加できる人とそうでない人を選んでいたわけです。
そして日本人は小さいほうに隔離されていたのです。

からくりが分かり,チケットを無視して大きい方のパーティ会場に行き,
一般客と同じように並んで入ることに。
目の前をチケットを持ったほかの参加者がさっさと過ぎていく中,
静かに寒空の下待ちました。

そこに審査委員長団が通りかかり,同じように過ぎていきました。
その中にいた我々のコーチが私たちに挨拶をするのを一瞬躊躇うのを見てしまいました。
審査委員長団の中での彼の境遇を想うとそれも責められないように思いました。
ちなみにもう一つの小さい方の会場はアジア人特にバングラディッシュ人が目立ちました。
千人参加する大会でたった40人ほどとのことでした。

まるで現代版アパルトヘイトな状況に私はすっかりグランピイに。
グランピイ…というか…凹みました。
なぜ人は人を愛せないのでしょうね。
なぜ誰かを差別したいと思うのだろうか。

ここまでが27日,第1日目のできごとです。
(その後某コーチが事情を知って凄く気にしてくれました。
ビール奢るよとか,明日の分のチケット自分のあげるよとか色々行ってくれたけど,
全部断りました。だって悲しいのは自分の境遇だけじゃない。
自分さえパーティにいければ解決するのならEquity Officerなんてやってない。
私は一年生が寒空の下待たされるのを見たことが悲しい。
彼らに「でもこっちのチケットはもうないってカウンターのお姉さん何回も行ってましたよね?」と
言われることの方がずっと心を刺します。
コーチは自分のところの大学のルームパーティにも誘ってくれたし,
その好意は受けることにしたけど,だから何だというのだろう。
人種差別という現実の前にどんな意味があると言うのだろう。)

28日はこれよりももっともっと暗くなりました。

今の私にはコブクロの桜を聴いているのが精一杯。
肩を抱いて安心させてくれる人もないこの国で明日から予選が始まります。
(ちょっと嘘。某コーチはハグしたり頬にキスしたりして慰めようとしてくれた。
でもその時はまだパーティ会場にいて,私は無理につくった顔で騒がしく談笑していたから,
いくら慰めようとしてくれても応じるわけにいかなかった。強がったままの私でした。
だって反吐が出るようなレイシストたちの前で落ち込むなんて意地が許さなかったから。)

寒い夜空の下の街路にはホームレスと物乞いが溢れていて,
話しかけられるのを無視するたびに心が傷みます。
昼間も空は暗く淀んでいて,まるで人の心まで灰色に染まっているようです。

頑張れ,ニッポン。
本当は日本に限らなくて。
頑張れ,みんな。
頑張れそして悲しみと共にあれ。

Tuesday, December 26, 2006

めりいくりすまあす

カナダに着きました。
こちらはまだクリスマスの夜です。
時差のせいで日本が今いつなのかすら危うい私ですが,
とりあえず携帯の充電,ビデオカメラのバッテリパックの充電・・・と,
既にお決まりになった作業に入りました。いつものことながら面倒です。

今回撮ったビデオを使うことは多分ないんだろうなぁ・・・
とは思うのですが,流石に世界大会の好機を逃すのは惜しいので持参しました。
今回は自費で旅行用の三脚を購入したため少し荷物が減りました。やれやれ。

出国直前はコーチはいるは,財布を落とすは,
キャッシュカードを止めた直後に財布がみつかるは,
みつかっても出国前に平日がなくてキャッシュカードの復活手続きができないは,
おかげで引き出しもできないは・・・もう死ぬかと思いましたが,
色々し損なった事はあるものの何とか到着し・・・ました。飛行機では大爆酔でした。
(いやあ,中国国際空港の中国色の濃さにビックリしました。しゅごい。)
あとはカナダ側から航空券代の一部を受け取って,
会計整理をして,残り(わずかでしょうが)を形ばかりのお礼としてコーチに渡します。

私たちと一日違いで到着していたコーチとは,本日無事再会し,
ビールを一杯奢ってもらいました。しかし心は傷みません。
我々にはそれ以上のお礼の準備があるからです(笑)

まだ本人には内緒だけど,大量のチューハイ缶を日本勢がひとりひとり少しずつ
持ってきてあるので,最初の着席型パーティで伝説の「チューハイピラミッド」をします☆
(2年前,ディナーの席でコーチを取り囲み,大勢でチューハイの缶を一つずつ
積み上げて巨大なピラミッドをテーブルに作り感謝を表したことが,
大会全体の注目を集め伝説となりました。コーチと日本勢の結束を強めただけでなく,
日本にコーチしに行くと厚い感謝を受ける,というパフォーマンスとして効果抜群でした)

今回はなんと15大学から32チーム,31名審査員,1名見学者で,
総勢96人が日本選手団としてこの世界大会に参加です。

96人ですよ!!!

凄いですよねo(^v^)o
大会が千人程度の規模なので,およそ10%を日本人が占める計算です。
いやはや時代は変わりました。

明日は毎年恒例の日本勢練習会をします。
頑張るぞー!!!!
日本の皆様,めりいくりすますでございます。

Tuesday, December 12, 2006

今こそ味方して Stand by me now

世界大会も近づき,らしくもなくミュージカホリックな生活に突入しました。
大会中用の音楽を今回も用意します。コンディションを整えるためのものです。

パートナーのKちゃんは暇さえあれば聴くという輪をかけたミュージカホリックぶりで,
休み時間や待ち時間は寸暇を惜しんで聞きたがるようです。
私の場合は行き帰りのバスの中や就寝時のベッドで必要になります。
音楽があった方が寝入りが良いので特に夜は必須です。

そういうわけで個人的に思い入れのある曲を集中的にプレーヤーに落としていきます。

選曲の基準ですが……
普段は少しでも英語をマシにしようとドラマとかを流しっぱにして寝ている私ですが,
国際大会中は二種類の気持ちが交叉します。
一つは,少しでもリズム感を英語に合わせておかないと不安だという気持ち。
もう一つは,日本らしいものへの強烈な恋しさ。

そういうわけなので,両方の欲求を満たすべく,
海外で聴くと強烈に心を掴むタイプの邦楽(必要以上に泥臭いヤツ)と,
流行全開のレンタルできる中で一番新しい洋楽,を持って行きます。

前者だと古いところは中島みゆき,松任谷由実,サザン,チャゲアス, ヒートウェーブあたり。
新しいところだとコブクロとか平原綾香とか鬼塚ちひろとか。BoAとかMisiaとかも入っている。
後者は,Black Eyed Peas, Maroon 5, Kanye West, Green Dayの他,
女性ヴォーカルものを色々取り混ぜて入れました。AiMEEとかAlicia Keysとか。

どちらにも入らないものとして,
Chi Ro, Ace of Base, Bon Jovi, Queen, U2, Eric Clapton, Madonna, Celine Dion, Britney Spears, Kevin Little などなど・・・・・・があります。Stand By Meも入ってますヨ。

何でも良い!!とにかく味方して!!!!!
999曲というプレーヤーに入れられるマックスまで入れて持っていくつもりです。
どれかは気分に合うはず。頼みます,ホント。

Kちゃんとは,とにかくメンタル・コンディションに気を配って行くことにしていて,
そのために出発前にしておきたいことが何点か決めてありました。

一つは先週末の大会で優勝することでした。
これは何とか達成。
優勝して行くのと負けて行くのでは精神的に全然違うからどうしても勝ちたかった。
試合内容的には褒められないものも幾つかありましたが,
とりあえず目標は達成できてホッとしました。
これで自分たちにできる事はやって出発したという割り切った気持ちでいられます。

もう一つは自分たちの準備がトレンドから大きく外れていないという確信を得てから向かうこと。
こちらは週末からのコーチとの最終調整でチェックできることになっています。
前回Australsの時,コーチとの練習が凄くプラスだったので,同じ効果を期待しています。
安心感が全然違うので。

あとは,読んだ情報の共有のためのミーティング。
これは毎週かなり時間を割いて,読んだ内容について話し合ってきました。
OGになった時の不安感を少しでも払拭するべく,ケースも多少準備しました。
これも先週末の大会で一つはヤマが当ってスムーズに議論する助けになりました。

そして,それぞれが安心できる音楽を持参すること。
これは現在大急ぎで突貫工事中。
1200曲あまりから999曲を選ばなければなりません。
頑張るぞ,と。

そういうわけで,できることは精一杯やっている筈……
だからあとは幸運に恵まれますように……

先週末の大会の感想を少し書くと…

R1: 商業捕鯨解禁
できればGovが良かったがOppに。
心にもない議論を本心からかのように出すのが大変でした。
OGがあまりに過激なセッティングにしたために救われました。

R2: ジャンクフードのCM制限
子供用番組中とかに限定されていて不思議な論題でした。
最近はケンタッキーの油の方が話題なんじゃないかなぁ・・・と思いつつ,
珍妙な議論をいかにも尤もらしいかのように出しました。
他のチームは発想が海外のものとズレていると感じました。
うーん…海外のドキュメンタリーとかもっと見たほうが良いと思います。

R3: フセインを死刑ではなく終身刑に
キター!!!こういうの大好きです。しかも肯定側!よっしゃー!
本心からの議論をガシガシ出せて幸せでした。
OGだったのですがセッティングが楽な論題でもありました。
ただ,COになってから反駁が入ったので,
POIで反論するのには限界があってストレスが溜まりました。

R4: カソリックのゲイ・プリースト許可
COでした。マイノリティ・ライツのディベートで反対を引いてしまったら,
勝つ方法は一つしかない,というコーチの台詞を思い出しながら,
教わったとおりに忠実に議論を準備しました。
サブの議論で作った,「カソリックの僧侶はsexuality自体を放棄しなければならない。彼らは結婚しないし,女性との性交も持たない。sexually activeでないことが僧侶になる条件だ。だから彼らは確かにhomo-sexualではないけれどもhetro-sexualでもない。ゲイの場合,homo-sexualだと公言しているという事はsexually activeだということ。だからダメなのであって,別にゲイだからダメなのではない。hetro-sexualだってダメなのだから」という話は結構気に入りました。クリスチャン相手に通用するのかどうかコーチに聞いてみようと思います。
しかし対戦相手には「僧侶の息子が可哀想」という謎の議論を出され色々と残念。MOのスピーチで,「カソリックの僧侶は結婚しませんし子供も持ちません」というアホらしさの塊のような反駁をしなければならなくなった上,GWに「カソリックの僧侶が結婚しないという科学的証拠を出せ」と言われてパートナー共々キレてしまいました。そんなもんに科学的証拠も何もあるかっつーーーの!!

SF: 国際養子縁組に反対
OGでした。こりゃやっぱマドンナの件だろう,ということで,
マラウィの2年在住要件の存続をプロポーズしました。
法廷で争われているのはそこですので。
しかしこのセッティングは不評だったようです。
なんでじゃい。納得いかんわ。
周りの皆が読んでなさ過ぎなんじゃい,と可愛くない選手の典型でした。

GF: 中絶費用の国家負担
OOでした。
正直この論題は中国にでもセッティングしない限り肯定側に不利だったと思います。
うちは否定側を引いてラッキーでした。
後ろのCOがライバルチームだったので,これでもかという程キャッチーワードを
自分たちのスピーチに寄木細工のように組み込んで,COのExtention妨害をしました。
ごめんね,CO……。こんな古典系の論題で広く満遍なくOOに舐められたら,
よほど独創的なものを見つけなければならないわけで,正直不当だったと思います(汗)
Sanctity of LifeもGender EquityもRole of StateもLife Ethicsも・・・全て言葉だけは
自分のスピーチで使うというあざといことをした私がStructureで不評だったようなので
それで勘弁してください。

Monday, December 04, 2006

タイトなジーンズーにねーじーこーむぅー Too Tight

最近スケジュールがきつすぎて何が何だかって感じですが,
折角ネット上にいるんだ。書いて置こうっと。

金曜日になって来日予定の講師が職場でクリスマスも働け宣言を出されるなど,
一時はどうなることかと思った年末の練習企画。
講師が根性で上司を説得し,来日許可ゲット。
偉いぞ,ソネレック氏。
っていうかもう2週間前ですよ。
ハラハラさせすぎですよ。本当に。

しかし,一旦上司のOKが出れば最早クリスマス休暇とり放題らしく,
17日にも来日するつもり,とのこと。
・・・ああ・・・そうですか・・・と半ば意識を手放しつつSMSを返したが・・・
「フライトが取れればね」というソネレック氏の一言。
・・・ええ・・・ホントにね・・・

今日,フライトスケジュールをくれることになっているソネレック氏。
第1希望は17日成田着で24日成田発と送ったらしい。
ここで小さな問題発生。
待て待て,それじゃ23日の晩の宿が必要でしょうが!

というわけで大慌てで23日の宿を探してみる。

・・・・・・ない・・・。
(ビミョーなところはあるけど)

そりゃそうか・・・
23日は土曜日かつ祝日。
24日のイヴが日曜日。
22日の金曜の夜から連続で異様にホテルが混んでいる週末だ。
ああ・・・どうしよう・・・

一泊だけ,しかもフライト前なのでゆっくりシャワー浴びてすっきりしたいはず。
あまり清潔感がないというのはどうか・・・
一泊くらいまともなところ取ってあげたいなぁ。今回遊ぶ暇ゼロだし。

と,悩んだ末,ちょっと良さそうなところを発見。

東京のホテルがあまりに空いていないので,
いっそのこと成田はどうかと思ったのです。
凄い凄い。流石に空いてます。

しかも,ちょっと良い感じの旅館も発見。
夕飯の写真がメチャメチャおいしそうだ・・・
値段も結構リーズナブル。

うーん・・・これ,取ってあげようかなぁ・・・
本人普通の空港ホテルの方が良いかしら?
けど唯一のジャパネスクイベントとして,
旅館の「部屋で食事」+「畳に敷布団で寝る」を体験させてあげたい気もする。

しかし,旅館の食事はきっとどんなに交渉しても19:30とかには着かないとだろう。
そうすると・・・,練習会場は17:30には撤退しなければならない・・・。
うーん・・・。夜の教室とった意味全然ないなぁ・・・。
皆もめいっぱい練習したいだろうしなぁ・・・

悩むところです。

ていうか早くフライトスケジュール寄越せ,こんちくしょーーーー。

Tuesday, November 21, 2006

正直と不誠実の間 In between honesty and ambidexterity

私の欠点であり長所であるところは正直さだと思ってきたのですが、
最近それはとんだ勘違いであるような気がします。

私って嘘つきかもー!!

今日は、NHKに対する強制報道問題と、日本のスポーツ選手の海外流出についてディベートしました。二つ目の方でスピーチしました。肯定側の第三スピーカでした。結果は4対3で負けと僅差だったし、私のスピーチのレトリックを気に入って下さった方もいらした(あれ、もしかして慰めてくれただけ?)ようなのですが、痛恨のミスを幾つかしたので凹み気味です。

ひとつは、スポーツ選手の力は環境の賜物なので個人の選択の権利だけを優先すべきではない、という話に持っていく筈が後半を言い損なってしまったこと。何のためのイントロだったのか不明なことに・・・。短期・長期の比較と、社会・個人の比較、という二重のマクロ・コンパリをしようとかなりテクニカルなスピーチを狙って失敗した格好。うーん・・・残念。

もうひとつは、コンパリ重視の総括スピーチは自分より前のスピーチと重複しなくて良い反面、進出議論に聞こえないように使う言葉には最新の注意が必要だということ。今日は、第一スピーチの二つ目の議論を伸ばしたつもりだったのに、言葉尻はかなり新しい印象を持たれてしまった危険があったようです。チームの一貫性にマイナス。全体的に浮いた印象を持たれたのかも。もっと第一スピーチで使われた言葉遣いを入れ込むべきでした。これは失敗するとチームメイトの方たちに対して失礼千万なことになりがちなので、次回は絶対気をつけたいと思います。

まあ技術的な失敗なので、そういうのを気にする会ではない、という説もありますが・・・世界大会前なので、むしろ技術面の失敗の方が凹む私です。もっと基本に忠実なスピーチをしよーっと。変にアクロバティックなスピーチを狙うのしばらくよそーっと。

まあそういう反省は置いておいて。表題の件ですが。

日本の選手が海外に移籍するべきでないという主張は、正直自分の意見に反しているように思います。でもスピーチしている時は半ば本当にその主張を信じている状態。これ、競技ディベートの中ではその方が良いわけなんですが、最近日常でそういう状態になることが増えている気がします。そういう自分になんだか少し違和感を感じます。なんで実生活でロールプレイングしてるんだろう・・・みたいな。普段の友人たちとの会話でも、最近自分がカメレオン体質なような気がして困ります。 これ、ある女友達と先日飲んだ時に思ったのですけど・・・。

嘘じゃないけど本音でもないことをサラーッと言える様になってしまっている気がする!!

でも大人って皆そんなもんなのかも・・・
友達の方だって明らかに「嘘じゃないけど本音でもない」言葉で
場をうまくつなごうとしてる時結構あるし。
Since when???

うーん・・・よくわかんないな。
もはやそれが正直なのか不誠実なのかも分からなくなってしまう。

・・・けどコミュニケーション・フェチ的にはそういうのやっぱり苦手です。
熱くないのよね。燃えないのよね。
なんというか、頭を使っていない怠惰なコミュニケーションだと思うのです。
続けると馬鹿になりそう(今更心配しても手遅れ?ひどい・・・)
自分の考えをひとつの意見の形に収斂させるためには膨大な情報処理が必要なわけで、
その白黒つけるためのエネルギーは凄いと思います。
最近それを惜しんでいる気がする。怠け者だ・・・。

で、熱くさせるコミュニケーションをして唸らせる人、というのが少数ですがいるわけです。たまたま私と問題意識が似てるとか、たまたま本音になれる波長が合うとか、偶然の要素も大きいようです。でも何はともあれそういう人とのやりとりは本当値千金。この怠け者モードを脱却するためのスイッチが押されるのが良く分かるんです。ああこの瞬間のために残りの人生息してるんだな、って思います。

うーん・・・そういう電気がビビビッと通るようなコミュニケーションに飢えてるかも。最近。
誰か何か抽象的なことについて意見を戦わさせてくれないかしら・・・(笑)
他力本願なこと言ってないで自分でよく考えるべきなんでしょうけど。

まあ、そういう日常のことはおいておいて、ディベートの会は頭使えるから好き。
なんだか技術に走ってしまった今日のスピーチ。(おそらく他の人にはそうは全く見えず、どちらかというと大味なスピーチに見えたかと・・・)まるでサービス・エースを狙いすぎてラインオーバーしたみたい・・・。次回はあんなに大技狙わずに身の丈にあったスピーチをして話題自体を楽しもうっと。

Sunday, November 19, 2006

何故女はろくでなしに惚れるのか Reasons why women fall in love with jerks

いやまったくなんででしょうね・・・ホント・・・

昨晩は友人の結婚の前祝に集まり、
未来の旦那様を初めて紹介していただきました。
その方はしごく全うな方で、さりげなく会話に溶け込む素敵な方でした。
二人で日本酒をさしつさされつする姿も、
嬉しそうな友人の表情も、ご馳走さま、って感じでした。
よかった。(*^v^*)
本番の結婚式が今から楽しみです。

それは良いのです。それは。
そっちじゃなくて。もうちょっと一般論としてですね・・・

なんで女はろくでなしに惚れるのか。
安い言い方をすれば、何故だめんずウォーカーになってしまう女性がいるのか。

DVとか極端なケースじゃなくてですね(首都圏の既婚女性の1/3は夫に暴力を振るわれたことがある、という記事を最近読んで目を疑いましたが・・・そんなアホな・・・ねえ?)、女性のライフプランにどれだけ理解があるか、とかまで広げるとトラブルも様々じゃないですか。けど自分の人生設計と合わないんだけど好きな人、っていうのが当てはまるケース、女性は特に多いんじゃないですかね・・・。

・・・ホントなんでですかねぇ。

なんでこんなことを考えたのかというと、友人と飲んでいて、
「異性としては魅力的なのだが、よくよく考えると相当酷いやつ」というのに
惚れてしまったらどうするか、みたいな話になったからなわけです。
(男女逆のケースにも当てはまる話なのですがそこは女友達との飲みだとですね。うふ)

結構話すも結論出ず。
もうそういう時は「時のすぎゆくままに」気づく日が来ると信じる・・・みたいな(笑)

何が腹が立つってそういう恋愛しちゃう気持ちが少しは分かるからですかね。
誰でもやっぱり「それでいいのか自分!?」と思うことってありますものね。
気づく日が来るも何も、最初から自覚ありって場合が大半ですものね。

ま、がんばれ乙女。
みんなで幸せになろー。

それは置いておいて、実家で目当てのものを見つけて大興奮な朝です。

何か・・・というとですね。とある箱です。
数年前の私のディベートのリサーチ用資料ケースなのですが、今見ても結構新鮮です。
大量の記事が話題別に分けてあるというだけのものなのですが、かなり便利。
最近バックグラウンドを忘れてしまってしっくりこない議論をまわすことが増えたので、
ちょっと復習しようと思ったのです。

副産物は、当時ピンと来なかった記事なんかも、知識が増えたせいでわかるようになったこと。
今で言うとイラクのクロノロジーをまとめた記事が、
ベネズエラやボリビアの経済の話を読む時の参考になって凄く面白いです。
油田の国有化というのは、欧米との摩擦を生むのを避けられないので、
今後南米の資源リッチはどうするのか岐路に立たされるだろうと。
そう考えた時、同じく油田を国有化してから色々問題を抱えたイラクのケースは興味深いです。

あと、91年の湾岸戦争の原因。クウェートがイラク領内の石油をイラン・イラク戦争のドサクサに無断採取したせいだったということを、恥ずかしながら知りませんでした。油田の国有化の話にしても、バース党の理念にしても、イランやクウェートとのやりとりにしても、フセインという人にカリスマがあったというのも分からなくもないな、という気がしました。

何故イラクはサダムに熱狂したのか

お。国は英語ではsheですからね。
サダムはjerkではないけどrogueと呼ばれましたしね、アメリカに。

この話もやっぱり、何故女はろくでなしに惚れるのか、かな(笑)

Saturday, November 11, 2006

今日は絶対スイートに I must have a sweet day today!

がんばりました……。
この夕方は結構集中して大量のデータアップ作業に励みました。

絶対帰りに巨大なプリンか巨大なチーズケーキを買います……
絶対むしゃむしゃ食べます……
お腹すいた……

もうホントありえない……
頭が甘いものを喰ってくれと叫んでいます。
糖分が足りない……

しかし。

これでかなり国際ニュースのトレンドの把握ができた筈……
これで今年のAdjudication Coreがトレンド丸無視だったら……

……

……本気でぶっころします。

Thursday, November 09, 2006

はっぴいねーす・ばんぐばんぐ・・・ Happiness...bang, bang...

一昨日友達の誕生日があり,はっぴい・ばあすでい・ふぉあ・ゆう,と携帯メールしたばかり。
今日ははっぴぃにあやかって日常の色々を書いてみようかな・・・

1.はっぴぃ・にゅうす・ふぉあ・ゆう

超夜型の上,風邪で具合が悪く寝込んでいたのですが,
オーストラリアの友人からSMS(Short Message Service)で起こされました。

競馬のメルボルン杯で一位・二位が日本の馬だったそうです。
デルタ・ブルーが一着,ポップ・ロックが二着だったようです。
あと,雅子皇太子妃殿下に関する本がオーストラリアで著名な賞を受賞したのだそうです。

・・・・・・なんでそんなこと朝の7:30に教えてくれんの・・・ (e . e)zzz...
・・・あ,そうか・・・。向こうは今サマータイムなんだ・・・
そしてそのことに相手が気がついていないんだ・・・
今は時差が1時間じゃなくて2時間になってるんだよぉおおーーー。
君にはもう10時近くても私には朝なんだよぉおおーーー。ネムネム・・・
(国際SMS対応電話の便利さに頬ずりしちゃう最近ですが,
こういう落とし穴もあったみたいです・・・それでも国際SMSの便利さは魅力)

悪気は全然ないのです。無邪気なのです・・・
おそらく私が喜ぶニュースだと思って教えてくれたのです・・・(T-T)
ううううう・・・ありがとううぅぅぅぅ。(本当にその気持ちが有難いとは思っています)

けどそんなことより来日のフライト早く決めてようぅぅぅぅ・・・
馬より飛行機が気になるのようぅうう・・・

2.はっぴい・さぷらいず・ふぉあ・ゆう

最近地元の駅が変です。

いえ,実家の最寄り駅の方は漸く駅ビル工事が終わり,
すんばらしく美しく便利になったのです。全体がアトリウムみたいなの。
屋上庭園はあるは,お洒落なレストランやカフェが沢山あるは,
ファンケルショップの青汁牛乳にはまるは・・・
なにより駅ビルの本屋には英語の雑誌も完備。
しかも店内に座ってくつろぐスペースもあるんですよ(o^v^o)
恋に落ちそうな駅ビルになりました。
そう,そっちの駅は良いのです。

そうじゃなくて下宿先の最寄の駅,学校と反対側のロータリー。
絶対変!!!

先月だけで3回ナンパされました。
自慢じゃありませんが,雑誌に鼻先をつっこんで歩いておりましたので,
容姿なんて見えたと思えません・・・(ていうか歩行者として危険)
そして自分の外見にそこまで自惚れる要因も特になく・・・
(次の項目に書くとおりどちらかというと自信をなくしてる今日この頃)
特別お洒落をしている日だったわけでもなく・・・
大体からしてナンパに向いている場所とは到底思えません・・・

なので,本当に自慢じゃありませんが
「綺麗だからつい声をかけちゃいました」と言われても説得力ゼロ!!
絶対ナンパ目的のナンパじゃないと思う(変な文だ)
あれ一体何だろう?どうしたんだろう?
拉致誘拐?人身売買?何かのセールス??(ていうか最初の二つは犯罪だ)
しかし同一グループの行動と考えるにはちょっと相手の職業・外見に脈絡がない・・・
(最初が土建っぽいお兄さん,次がスーツのお兄さん,
最後は何故か外人さん・・・こんな田舎でレアだ・・・)

うーん・・・結局一体S駅東口に何が起きてるのかよく分かりませんが・・・
若いお嬢様方が東口を歩かれる場合はお気をつけ下さいまし。
どの駅なのかはこれを読んでる友人たちには通じるはず・・・
いや,ホントに気をつけてくださいませ。絶対変だよ,あそこらへん今。

3.はっぴい・いんぷれっしょん・おぶ・ゆう

最近週一である習い事をするようになりました。
習い事と言っても三十分だけなので,ちょっとした気分転換程度。
ええ,気分転換に飢えているんです・・・
デスクワークばかり続くとやっぱりね・・・

そこの先生に友人を紹介しようとして,「けど彼女の職場の都合で・・・」と
説明を加えようとしたら,私の顔をまじまじと見て先生曰く,
「え,masakoちゃんって何歳?」
え??なんで??と思いつつ正直に言ってみたところ・・・
「うっそ!!!!十代かと思った!!
なんで働いてる友人いるのとか思っちゃった!」

・・・・・・え?

これ,明らかに喜ぶところじゃないですよね・・・?
「若く見られちゃった,キャ☆」と喜べるのは,流石に3歳下とかでしょう。
高校生くらいに見られた・・・というのは流石にちょっと・・・
化粧っけがない?幼い?発育が悪い?
それとも逆に太りすぎ(女子高生って固太りしてますよね・・・)?
はたまた年頃らしい華がない・・・?(これが一番きついか)
うーん・・・色々とショックです。ひどひ。

その次の時は「お酒飲ませちゃ悪い年齢に見える」と言われ,
そのまた次の時帰りがけにすれ違いでお教室に入った方には,
「あの子かわいく見えるけど貴女より年上よ」という先生の言葉に
「ええーーーー??ティーンじゃなくて???」と叫ばれたと聞かされ・・・

・・・・・・・。
私ってそんなお子様に見えるん?????
ふけて見えるよりは良いと言う人もいるかもしれませんが,
やっぱりちょっと年頃の娘的には高校生と一緒にされるのは傷つくんですが・・・

あれ,でも待てよ?
平日に美容院に行ったりすると「今日お仕事お休みなんですか?」って聞かれるのに・・・
てことは働く年齢には見えるってことでしょう・・・??
おっかしいなぁ・・・どういうことなんだろう・・・

・・・で,思い当たりました・・・
言動だ,と。
きっと言動が幼いんだ・・・。
美容院では私あんまり喋らないもん・・・大人しくしてるもん・・・
先生とは沢山話すもんね・・・

そっかぁ・・・言動が幼いのかぁ・・・

く・・・。これは自覚あり。残念。心から残念。
これからは大人の女を目指して淑やかになりたいと思います。
(けど最近甘えたい願望が強くてついそれが言動に滲み出る私・・・前途多難・・・)

4.はっぴい・るーてぃん・ふぉあ・ゆう

2でも書いたとおり,暇さえあれば雑誌を読む私。(しかし歩行中は暇と言えるのか・・・)
家でゆっくり読む時間がない今,本屋で買ったらその行き帰りなどは貴重なプレパタイム。
なんと言っても世界大会まで間がありませんので・・・ああ胃が痛い・・・間に合うのだろうか・・・

まあでもルーティンは固定されているのでそれは気が楽。
私が目を通している雑誌は以下です。

『COURRiER JAPON』(月二回/日本語)
『SAPIO』(月二回/日本語)
『ニューズウィーク 日本版』(週刊/日本語)
『The Economist』(週刊/英語)
『TIME』(週刊/英語)
『Newsweek』(週刊/英語)

そんでもって発行から二週間経過したらザクザク切り裂きファイリングする。

ええ??masakoがSAPIO読者なの?!と驚かれたあなた・・・
本当ですよ・・・自分が一番ビックリしてますよ・・・
けど本当っぽいのから胡散臭いのまでとりまぜて
あそこまで北朝鮮問題にページ数割いてる雑誌他にありませんよ・・・。
所詮ディベータはディベートのためには魂売れるんです,ええ。
まあそれに読むものは意識してバランス取った方が良いと思いますしね。
一誌だけ読むなら偏向が気になりますが他誌と併行ですので・・・。
しかし何もあんな風に煽る書き方しなくっても良いのにねぇ・・・・・・

しかし記憶できる割合が低いのが難・・・。
今朝読んだ筈のコンゴの大統領選候補者二名の名前さえ出てくるか怪しい私・・・。
確か二人ともファーストネームがジョから始まってた・・・ジョシュアとかだったかな・・・
そんでもってラストネームはカで始まる人と濁点のつく音で始まる人だったような・・・
・・・・・・・・・(-n-)mmmm....
ああ,カビラとベンバだ・・・

うーん・・・本気で大丈夫か・・・,自分!
頑張れあと一月半!!

Tuesday, October 31, 2006

わくわくの代償 What can you sacrifice for the excitement?

今日はセコム鳴りませんでした(笑)よかったー。
毎月鳴ったらご近所に顔向けできません。

今日の夜の会は、ワクワクとドキドキとハラハラがない交ぜになった気持ちで迎えました。まず、私が誘って来て下さった方には楽しんで頂けなかったら申し訳ないと思いました。逆に、前から参加していらっしゃる方には私の声をかけるセンスを認めてもらえず「空気読めよ」的感想を持たれたら申し訳ないとも思いました。責任重大。しかも論題をひとつ担当したので、もうドキドキしっぱなしでした。

まあそうは言っても、来て下さいってお願いした方達は、かなり自信を持って素敵な方を探してきたので結構自信がありました。けれど論題はねー。国際大会用の練習に特化している私のセンスがズレているのは間違いないから・・・

結果としては、会場も凄く和やかな雰囲気で、飲み会も楽しくて、胸をなでおろしました。
よかったぁあああああ。
あとは呼んで来て下さった皆さんの感想を聞いて・・・といった感じでしょうか。
できれば楽しく過ごしてくださった、また来て下さる、ということだと良いなぁ、と思います。
せめて嫌な思いをされた方がいなかったならいいなぁ・・・
大切なお友達ばかり呼んだので、これがきっかけでどうとかあったら嫌です。
楽しかったって言ってくれますように!!

今日の論題は、1.学区制廃止、2.宝くじ選挙導入 でした。
二つ目の宝くじの方が私の出した案です。

今アリゾナ州では、投票率低下の対策として、
投票した人から抽選で一人に百万ドル当たるという制度を導入しよう、
という案が話題になっています。11月に住民投票で決まるそうです。
http://travel2.nytimes.com/2006/07/17/us/17voter.html


で、論題はこの宝くじ選挙をするのが良いか悪いか、という話でした。

実際のアリゾナでの議論は、投票者に金銭を渡してはならない、とする
米憲法に反しているのではないか、という議論がメインのひとつです。
この条項は、おそらく政党が金品を渡して票を買うのがいけない、という話で、
誰に入れたか関係なくお金をもらえるケースは想定されていないのではないかと思います。
まあ、だからこそ憲法解釈の議論が熱くなるわけなのでしょう・・・

今日の試合で大きく話題になったのは、アメリカの憲法に関するところではなくて、
もっと原則として、金と引き換えに投じさせる票に意味があるのか、とか、
最初は政治に興味なくても、宝くじにつられて投票所に行ってる内に興味がわくんじゃないかとか、
民意を反映させる、とはどういう意味なのか、に踏み込んだ内容でした。
民主主義の根幹に関わる、良い議論だったと思います。

投票を義務とするか権利とするかについては、長い論争の歴史がありますが、
このインセンティブを与えるというのはどちらにも入りそうにありません。
The Third Way??(笑)
それでもまあ大雑把に言って議論の中身は義務投票化と大して変わりません。
それなのに何故かこの論題のほうが義務投票の論題より楽しい。
なんででしょうね。非常識だからですかね。不真面目な感じがするからですかね。

まったくアメリカにはこういう楽しい発想する人がいるんだなぁ、と感心してしまいます。
私たちは半ばジョークとしてこの論題を議論したわけですが、
現地では大真面目に法学者なんかも巻き込んだ議論をしているようです。
非常識、と言えばそれまでですが、そういう柔軟性、私は好きです。
なんていうか・・・おおらかですよね(笑)

実は、義務投票では発生して、宝くじ選挙では発生しないデメリットというのもあります。
「どちらの候補者も最低ラインを割っていて、どちらにも投票したくない。俺はこの選挙自体の価値を認めない」という強いメッセージを、投票しないことで発する権利が、
義務投票では損なわれるというものです。
否定側は、投票しないという意思表明を受け入れるのも、
民主主義における民意の反映のひとつだ、という論陣を張ることができます。

ただこの話が出てくると、「じゃあ白紙投票しろ」というプランの設定そのものに帰る議論で
対処しようとする肯定側が多いので、一気につまらなくなります。
だってもし白紙投票ばかり増えるのなら、そもそも肯定側が主張していた、
より多くの国民の意見を反映する、っていうメリットも成り立たないんです。
でもその矛盾に気づかず、「白紙投票でオッケー」と叫ぶ肯定側が案外多いんですよね・・・。

宝くじ選挙はそういうくだらない議論をしなくて済むというのも、
私が割りとこの論題を気に入った理由でした。
本当は私自身がこの論題でディベートしたかったんだ!(笑)

皆さんが楽しんでくれたなら良いんですけどぉ・・・
どうだったのかなぁ・・・ドキドキするなぁ・・・

ま、そんなことは、今更言っても仕方ないさぁー。
次回何か皆がハッスルしてワクワクできるような論題を探すべく、
明日も私は新聞を読むだけさぁー。

おやすみなさーい。

Wednesday, October 25, 2006

こんなところに影響が Who expected such an influence?

北朝鮮の地下核実験の意外な余波!

韓国で開かれる予定だったディベートの国際大会が
リスケジュールを必要とするかもしれないという騒ぎに・・・

その理由が面白い・・・
スポンサーが北朝鮮でメディアが持ちきりになって,
大会を報道してくれないのではないかと難色を示している・・・んだって。

ホントか。だって何ヶ月も先のことなのに??
まあ,言っても仕方ないことですけど。

関係ないことですけど,運動不足解消にストレッチ始めました。
筋が伸びる感触が無茶無茶気持ちいいです。はまりそう・・・

Friday, October 20, 2006

全然わからん!インフレ・ターゲティング Learning about inflation-targetting seems impossible

昨晩ざざーっとモデルを読んでみました。

うーーーーんんん.....
これって私が経済音痴だからわからないの?
それとも議論の欠陥なの??・
・・前者なのかも・・・。
実際私は非常識なほど経済がわからないので・・・

しかし,一点だけは確信しました。どのアーギュメントもrelevanceが低い。

常々ポリシーとパーラの違いは大してない,と主張している私。
今でもそう思ってはいますが,細かな点では多少の違いを感じます。
ポリシーはrelevanceの評価が変(パーラはセオリーの評価が変)。

いや,けど私が読んだのはあくまでモデルですからね・・・変で当たり前かも。
後で現役生が実際に使ってるケース見せてもらおうっと・・・

とりあえずKESSAモデルとKAEDEモデルを読んだ感想。
後で質問ができるようにメモしてみます。
経済に明るい方いらっしゃいましたら是非ご教示下さいませ。

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1. KESSAモデル

1-1 Claimがあり得んほど抽象的

経済が苦手な私には正直意味が全然分からないような抽象度です。
例えばAffirmative CaseのInherencyは以下のようになっています。

a) Inherency: Instable value of money
1. 日本ではインフレ目標が導入されていない。
2. そして,日本の物価は不安定です。
3. それはすなわち貨幣価値が不安定ということです。
4. 貨幣価値が定まらないと,経済活動全体が困ることになります。
5. 経済活動が鈍化すると,デフレになります。
6. A/L 日本はまだデフレ状態である。

特に4と5!
私には,「経済活動全体が困ることになる」というのはどういうことなのか,皆目見当がつきません・・・。「経済活動が鈍化する」も同じく。そんな一口に経済活動って言われても・・・
しかも4と5の「経済が困る」と「経済活動が鈍化する」は引用文献を見ると全然別のものを指しているみたい・・・。前者は先物取引がよりリスキーになるという話で,後者は不景気のことみたい。これは同一のものとして扱ってしまって良いのでしょうか・・・。何ヶ月も先の値段を設定しにくい,というのは不景気を起こす要因になるのかしら・・・。うーーーん・・・私程度の経済理解度では,ここのリンクはもう少し説明してもらわないと何が何だか分かりません・・・でももしかしてこれは常識??

1-2 理論が理解できない

例えばb)1のevidence。

「デフレが続くと何が悪いのでしょうか?まず企業や家計の実質的な負担が増加してしまいます。借金やローンの実質的な返済額がデフレによって増加し,また人件費などのコストが高止まることで家計や企業は苦境に陥ります。」

ぜーーんぜんわっからーーーん!!!!
デフレって物価が安くなることじゃないの???
なんで物価が安くなって家計の負担が増えるんだ??
安く買えれば消費者には嬉しいのでは?百均万歳なのでは??
価格破壊すれば生産者は泣くけど消費者はハッピーでは??
なんで借金の返済額が増えるんだ??
デフレだと金利が安いのだと思っていましたが・・・
低(ゼロ)金利時代は預けても良いことなくて,逆に借金するには良い時期かと思っていましたが・・・

しかもなんでデフレ時代は人件費が高止まるの???
デフレで価格破壊が続くと企業は競争力を保つために人件費は削るのだと思っていましたが・・・
だからパートや契約社員が増えてるんじゃないの・・・???
どっちかっていうと逆に失業問題が深刻なのでは??
賃金上昇率って普通物価と連動してるから,デフレ時代は最低賃金が下がりはしなくても据え置きになったりするんじゃないの?
公務員の給与とかもそうだったのでは・・・?
そうすると人件費は抑えられるのでは?
しかし物価が下がっていれば給与が据え置きでも生活はさほど悪化しないのでは???

全部私の思ってたのと逆のことが書いてある!!!

やたらと「実質的な」という言葉がつけられているところが味噌なのかもしれないのですが・・・・・・

だめだぁーーーー!!!
私にはわからなーーーーい!!!
これって常識だから省略されている説明を,私はされないとわからないという状態なのでしょうか??

更にはUnderview。

eviには,

「先行きの物価上昇見通しが3%、インフレ目標が2%なら、中央銀行は短期金利を引き上げ,金利は上がっていくだろうとの見通しが立つ。企業は早めに借金をして工場を建てた方が金利負担が少なくてすむ」

・・・とありますが・・・・・・,そうなの????

放っておいたら3%なところを2%に抑えたい場合のことなんだよね??
金利を引き上げちゃったらよりインフレが進むんじゃないの??
皆が引き上げを予想して投資を急いだら物価が上がるのでは??

だめだ・・・本気でわからん・・・
うーん・・・二週間後の審査が一気に不安になってきました。

1-3 リーズニングがない

これは私のせいじゃない。モデルが悪い。でもモデルだから仕方ない?

b)3はD/Rで,物価を安定させることが日銀の使命だ,とあります。
で,evidenceの中身はそのまんま。リーズン皆無。のおおお。

1-4 メカニズムがわからない

ここは明らかに私の経済音痴ぶりが問題。

「目標インフレ率を2%に設定して,日銀は国債購入でインフレ率を調整する」と言われても,国債購入でどうやって目標インフレ率に調整できるのか。私にはそのメカニズムが分からんのです。

なんとなく国債を買いまくれば,国債の評価が上がりそうな気はする・・・けど国債の評価とインフレ率はどういう関係なのだろう・・・KAEDEモデルの方のDAに,金利が上がると国債価格が下がる,とあるので,もし仮に逆も真なら,国債価格が上がると金利は下がる???金利が下がると物価も・・・下がるのかなぁ・・・???つまりインフレ率を下げたい時は日銀が国債を買い,上げたい時は国債を売る・・・ということなのかしら・・・?しかしなんだって国債価格が上がると金利が下がるんだ???

やっぱりメカニズムが分からない・・・
Planの直接的な影響すらイメージできない!!
なんと致命的な・・・
誰か私に経済知識をインスタント注入してくれないかしら・・・
今からマクロ経済の授業採るわけにもいかんし・・・

Solvencyの説明も同様に分からないことが多すぎる私。
金融当局が目標インフレ率を公表するとアナウンスメント効果で市場がそれに誘導される,というくだり。・・・なんで???なんで市場は目標インフレ率に勝手に近づいて来るんだ???市場なのだからその方が得だと計算しているのでしょうが,なんで目標値に近づけることが投資家の利益に適うのでしょう・・・??

ダメだ,真面目に全然わからん。

1-5 このevi使っちゃだめじゃない??

c)1のevi。

ソースを見ると「現時点におけるインフレーション・ターゲッティングは時宜にかなった政策提言ではない」という記事から引っ張ってきている。・・・ダメじゃない??これ記事自体はNegativeの趣旨のものでしょう?こんな一部だけ不自然に切り抜いてきてサイテーションしちゃって良いの??まあ,ディストーションまではいかないのでしょうが・・・evidenceとして使うのはどうかな・・・

2.KAEDEモデル

2-1 やはりClaimが抽象的でリンクに難

こちらのモデルでもInherencyを例にとると,

Contention 1: 明日が見えない
a) 今そこにあるデフレ
1. 今、日本はデフレから脱却しつつある。
2. よってゼロ金利も解除された。
3. しかし、ゼロ金利政策の成功はアメリカ経済が鍵を握る。
4. そのアメリカ経済は今秋徐々に悪化する。
5. 結果として日本はデフレに戻ってしまう可能性が高い。
6. デフレを未然に防ぐために、インフレターゲッティングが必要である

となっていて,こちらは3と4のリンクが私にはかなり不明。

3で述べられている「米国ファクター」というのは,4で述べられている「米国の景気」のことなのかしら??それとも米国の投資家が円や日本のインフレ率をどう評価するか?そんなわけで「米国ファクター」と「アメリカ経済」が同じなのかがそもそも分からない。同じだったとしても「アメリカ経済が鍵を握る」と言われてもどう握ってんだか全然わからんちん。えーーん・・・

しかも全体的にこのinherencyは,インフレターゲティングが必要だ,というよりも,
ゼロ金利の延長が必要だ,という内容に思える・・・うーん・・・

2-2 やはり理論が理解できない。

例えばContention1 a)6。

「目標範囲の下限を1%にして、CPIの指標の持つバイアスに対応し、かつ経済の下方へのショックへの糊のり代しろを持つことが必要だ。」

・・・意味不明です,私には(涙)

「CPIの指標の持つバイアス」って何・・・????
「経済の下方へのショックへの糊代」って何・・・????

更にはContention1 b) 3のevi。

「インフレという役者はマントを着て人知れず舞台に上がってきて、ある日パッとマントを脱ぐ、するとおどろおどろしいインフレの正体が明らかになり、誰も止められない、というのは過去の例が示している。」って・・・・・・あの・・・・・・そんな文学的な表現をされてもですね・・・理屈がわかんねーんですが・・・

2-3 矛盾して見える

私にはContention1のa)とb)が両立するように見えないのですが・・・

Contention 1: 明日が見えない
a) 今そこにあるデフレ
b) インフレのある未来

とあるのですが,a)でデフレする危険が高い!と叫んで直後のb)でインフレする危険が高い!と・・・

どっち???

両方一辺には起きないわけですよね??時間差,という意味なのでしょうが,それもちょっとどう辻褄が合うのか私にはかなり不明です。いつ,どういう形で逆転するわけ??

しかもContentionのタイトルが「明日が見えない」なのに,b)のClaimは「2015年ごろ化石燃料不足のためインフレになる」と明言。・・・見えてんじゃん・・・

まあ,凄くデフレするかもしれないし,凄くインフレするかもしれない。どうなるのかわかんない!って言いたいのかもしれませんが,evidenceはそういう内容では全然なくて理由を挙げて予測しているわけで・・・。やっぱり両方とも主張するのは無理があるのではないかと。

Contention2 b) の「リハビリ費用」というのも私にはさっぱりわからじ。

「1. ディスインフレは仕事を奪う。
Q) したがって、経済がインフレ率を引き下げるには、高い失業率と少ない生産量の期間に耐えなければならない。(Omission) インフレ率と失業率のデータを検討して、インフレ率を引き下げるコストを推計した研究は数多くある。これらの研究による発見は、しばしば犠牲率と呼ばれる統計にまとめられる。犠牲率とは、インフレ率1%ポイント引き下げる過程で、年間の生産量が何パーセント・ポイント失われるかを示す数値である。典型的な犠牲率の推定値は5である。すなわち、インフレ率が1%ポイント低下するごとに、年間生産量が移行の際に5%犠牲にならなければいけない。(UQ」

・・・これってインフレを調整すると生産量ががた落ちするっていうDAのeviじゃないんでしょうか・・・??そしてタイトルは何故「リハビリ費用」??

2-4 そしてSolvencyはアナウンスメント効果一本??

日銀が過度のインフレはしない,と言うだけで市場が安心する,というだけのSolvencyのようです・・・。・・・まじで・・・??そんだけなの・・・??あの・・・実際にインフレ率が調整されるメカニズムとかは・・・??

-------------------------------------------------------

うーーーーーんん・・・・・・

分かったことは・・・
(1) インフレ・ターゲティング論題難しーーーー!!!  
  このままジャッジしちゃ不味い!
(2) それにしたってもっと素直なargument作れないの??
  なんか妙に捻りすぎていて基本的なところの説明がスコーンと抜けてる印象

うーーーんん・・・でもモデルだからなぁ・・・とりあえず実際に使われてるケースのほう見てみようとは思いますが,やっぱり焦りますね。

とにかくあと一週間で少しは分かるようにならんと・・・

Tuesday, October 17, 2006

インフレ・ターゲティング inflation targeting

漸く今後一ヶ月のスケジュールを確認。
で,うわーー,Umeko CupがJDATとかぶってるーーー。
Tsudaの皆様ごめんなさいいいいい。

去年はUmekoへジャッジに行った私。
ブログにもしっかり書いてありますが,二日連続行ったのです。
あの遠いキャンパスへ。
今年も都合のつく限り参加しようと思っていたのですが・・・
JDAに先にお返事しちゃってたんですよね・・・
うーん・・・申し訳ない。

JDAの秋の日本語大会は,JDA設立20周年記念イベントを兼ねているそうです。
なので,審査員として招待されなくても伺おうと思っていたのです。
20周年記念イベント自体が面白そうな企画だし,
何よりJDAにはとってもお世話になってきたので(日米交歓ツアーを筆頭に),
こういう時くらい枯れ木も山の賑わいで駆けつけるべきだと思ったのでした。
だから審査員としてのご招待を頂戴した時に即答してしまったんですね・・・

一瞬,土曜日にUmekoに行って,記念イベントがある日曜日にJDAに行けば,
両方に顔向けできるかも・・・とも思ったのですが・・・一瞬のことでした。
だって,どうやらJDATは日曜は決勝戦一試合しかしないみたい。
並み居る先生方の眼前で決勝戦「だけ」審査するなんて真似,
何様だって感じじゃないですか???恐ろしい・・・。
いくら心臓に毛の生えている私でも無理です。ムリ,絶対ムリ!
というわけで土日連続してJDAに伺うほかないわけです。

ゴメン,津田塾!!
ああ,明日謝りのメール打たなきゃ・・・

ディベートと言えば見境なく,日本語だろうと英語だろうと,
NDTスタイルだろうとパーラだろうと・・・何でも手を出す私の場合,
このてのことは避けがたいのもまた事実です。
だって毎週三つくらい大会あるものね・・・。
どれか一つでも行けるならラッキーと思わな・・・

さて,それはそうとJDAT。
今回のお題はinflation targeting。
またなんとマニアックな・・・
経済に明るくないことを自覚している私としては,
最低限勉強してから行くべきなのではないかと漸く思い当たったりして。
あんまり良いことではありませんが,専門用語を説明なく使ってしまう選手もいますし,
常識レベルのロジックを私が解さなかった場合は明らかに審査員として問題です。
こと経済に関してはその常識レベルの理解すら怪しい私ですから予習が必要でしょう。
やれやれ,今晩から慌ててモデルを読もうと思い立ちました。

しかしモデルが何故か三つしかみつからない・・・
最近はこんなに少ないものなのでしょうか。
それともキャンプに参加しないと貰えないものが多いのでしょうか。
それともアナログで出回っているのでしょうか・・・
現役の誰かに聞いてみなくちゃ・・・

ちなみに前回JDAで審査した時(丁度一年前)は,決勝戦が暴風雨状態でした。
Alternative Justificationに走る肯定側。
それを否定しながらもCounter Planを複数出してしまう否定側。
更にはTopicalityも出てしまったり。(どんだけコントラしたら気が済むのだ)
俗に言う『セオリー』の嵐で,ちょっと大味な試合でした。
審査する側としては決勝に似合わず簡単だったので拍子抜けしました。
まあ確かに議論が深まった試合ではなかったので,
評判がイマイチだったのも仕方ないかと思いますが,
それでも私としてはああいうワイルドな試合もたまには良いな,とか思いました。
いつも穏やかな日ばかりでは退屈です。
選手にも審査員にもチャレンジングな議論というのはたまには必要だと思います。
その意味でも,今回はどんな試合が見られるのか楽しみです。(^v^)
ああいう試合を見ると,JDAの大会は懐の深い大会だな,と思います。
冒険心に溢れた議論を大舞台で試せる,というのはなかなかないことです。

こんなことを書くと生意気でしょうが,
私は主催者の趣旨やDebate観,運営方針によって大会を選好みすることがあります。
お金を出してでも審査させていただきたい,と思う大会もあれば,
幾ら待遇が良かったり,社会的な名誉を伴っても参加したくないと思う大会もあります。
折角ご招待頂いても,日程に関係なくお断りする大会が本当に少数ですがあります。

というのは私はDebateが大好きなので。

Debateを大切に思っていない主催者の方が,
Debate仲間を粗略に扱うような大会には出席する気にはなれないのです。
融通の利かないこの性格は損だとは思いますが,こればかりは変えられません。
偉そうにふんぞり返って肩書きを振りかざし,
Debateについて謙虚に学ぼうとしないスポンサーがついているイベントは,
参加意欲が著しく減退してしまいます。
論題選考のセンスが悪い大会もしかり。
あーー,Debateについて勉強してないなーっていうのが見えてしまうと,
もう翌年参加する気力が一気に落ち込みます。
そういう大会をちやほやする気にはなりませんし,
参加することでおべっかを使うような格好になるのも我慢できません。
ホント,我ながら損な性格だと思います。

その点,JDAの大会には,先述の冒険心の他に数点,
予定さえ合えば是が非でも参加させていただこうと思う理由があります。
去年書いたとおり,この大会が完全なOpen戦であることはその一つです。
主催者であるJDAが,本当にディベートを愛する人たちで運営されているのもその一つです。
参加している選手や審査員の方々が,ルーキーからベテランまで,
皆さん真摯にディベートを学ぼうとし続けてらっしゃるのもその一つです。
こう言っては何ですが,地味で社会的な栄誉と縁がないところもその一つだったりします(笑)。

ですから,趣旨や運営方針に問題を感じる大会が被っている分には気にしないのですが・・・
今回の場合,対するUmeko Cupの方も,初心者を育てるということに特化した,
いい味出した大会なだけに,片方選ばなければならない状態になって残念です。
毎年演出に凝っていたり審査員への配慮が細やかだったりする大会ですし,
近年はリキの入った論題が見られることもあったりするようになって,
是非伺いたい大会の一つだったのですが・・・
まあ20周年記念ということで勘弁!来年はTsudaに伺えるよう祈ります。

何はともあれJDA,今年も年齢層からディベート経歴から色々な意味で多様な選手が,
平等に議論を戦わせる場に立ち会えることを,
冒険心に溢れたヴィヴィッドな議論に出会えることを,とても楽しみにしています。

そのためにも早く金融政策について学ばなくっちゃ!!

Monday, October 16, 2006

陳謝 Apology

このブログに頂戴したコメントは,モノによってはモデレートしないと表示されないことがある,ということが今更判明。何ヶ月も前にコメント頂いていたhibiki-c様,amaturedebater様,koyoshi様,設定の不備に気がつかなくて申し訳ありませんでした!!設定を「モデレートできる」に変更したのでもう大丈夫!!のはずです。よろしくおねがいします。

先日,タイの大学出身のインドで働いているミャンマー人の友人からSkypeが入り,必要書類のチェックがきてないぞ,と叱られました。どうやらメールアカウントのドサクサでチェックできていなかった模様。とりあえず謝って書類を読み始めたのですが,・・・うーん・・・1月のと変わってないじゃん・・・これをどうやってチェックしろと?同じことを言えと?微妙な状態になってしまいました。困ったなぁ。

SMSできるようになった電話にはオーストラリアの友人からSMSが。「交渉難航。まだ宿とるな」。何だか昔の電報かポケベルのようだ・・・けどやっぱり急ぎの時SMSは便利ですね。これ,実は年末に来日する件なのです・・・もう二月しかないのにバタバタとしています。詳細の問い合わせを頂いても,先方からの情報待ちをしている今は何もお伝えできないので申し訳なく思っております。ごめんなさい!あとちょっと待ってね!

ところで,実はこのブログ以外に,日頃見聞きした情報でこれはと思ったものを携帯からメールでアップしているブログもある私。一・二文の短いものばかりで,ディベート用の備忘録というかネタ帳というかになっております。久しぶりにPCで開いてプリントアウトしてみたら結構笑えるものが多いようでした。希望者がいらっしゃるようでしたら公開しようかな,と思いました。

なんだか今日はとりとめのない投稿になっちゃいましたけど,まあいっか。

Tuesday, October 10, 2006

[Music] 精霊流し SHORO-NAGASHI

しばらくオカタイ話題が続きましたので・・・って今日もちょっと重めなんですけど・・・
一体どうしちゃったの,私(笑)

先日安楽死のディベートをして思い出した曲…は、いずれもさだまさしの歌。おじいちゃん・おばあちゃんについてさだまさし以上の詩を書く人を私は知りません。恋愛の歌は全然駄目だと思う(ごめんなさい)けど、老いや死別を描かせたら右に出る者がいないって感じ。でも基本的に詩が良いのであって、音楽性はイマイチ・・・。でも詩はやっぱり凄いと思います。うーん,でも詩もちょっと直接的過ぎるのがねぇ・・・なんか恥ずかしいですよね・・・

若い私(20代のオンナノコですヨ!)が、クサくて恥ずかしい感じのする彼の歌を、初めて「凄い」と思ったのは、「精霊流し」(このパソコン「しょうろう」が変換できないよ・・・。「せいれい」って入れないと駄目なんだ・・・。嘆かわしいな・・・)。歌詞の、「私の小さな弟が 何にも知らずに はしゃぎ廻って」っていうところに、凄さを感じました。精霊流しだけでなく葬儀の時も、子供たちは普段会えない従兄弟や親戚の他の子供たちと会ってはしゃいだりしますよね。自分の両親や他の大人が,静かで深い悲しみとそれでいて妙に実務的にならざるを得ないやるせなさを味わっていることに気づかない,残酷な無邪気さ。小さな子供には、その場に合わせて神妙な顔で座っているような世間ずれしたところもない。あれ、凄く独特な気持ちを生みませんか?腹が立つというのとも,悲しいというのとも違う・・・なんていうか・・・時間が流れてるんだなって。誰かが老いて去っていく悲しみと、その誰かが愛した子供たちが元気に育っていく希望と。一緒くたになって何ともいえない孤独というか、せつなさというか、喪失感というか、無常というか・・・それでいて愛しいというか嬉しいというか・・・。うん。あの気持ちを言葉にできたこの歌は凄いと思いました。

あとね、「おもひで泥棒」っていう歌も子供にする寝物語みたいで良いです。ファンタジー系。おばあちゃんがボケていく姿を、すごく美しい嘘で子供に説明するの。家族がボケるのって凄く寂しいと思うんですよね。相手が生きているだけに喪失感もひとしお。で、それを「おばあちゃんは、思い出とひきかえに幸せの回数券を貰う約束を神様としてるんだよー。その回数券は自分には使えなくて子供や孫のためなんだ。おばあちゃんは君が大好きだからちょこっと思い出を君のために忘れてるんだよ」って説明する。これはねー・・・、痴呆をそういう風に説明するのって凄い優しさだなって思いました。またおじいちゃん・おばあちゃんって本当にそういうことしそうじゃないですか?もし本当に自分の思い出と引き換えに子供や孫を幸せにできる取引が可能だったら、子供や孫のためにせっせせっせと幸せ貯金しそうな気がしませんか?ほら、孫を受け取り人にした生命保険とか入るおじいちゃん・おばあちゃんっているじゃないですか。少ない年金収入から毎月せっせと保険料払って。そういうこと本当にしそうでしょう?家族の痴呆って、本当はもっとずっと苛立たしくて醜くて見苦しくて尊厳に欠けて、やるせないものだと思います。大人にとっては。本当辛いですよね。精神的な疲労もどんどんたまる。そこを子供には敢えてこういう綺麗な嘘(ホワイト・ライっていうの?)で塗り固めてみせる。子供にはおばあちゃんを好きでいて欲しいから。そういうのって辛いけど正しい気がします。そして嘘なんだけど、ひとかけらの真実がこもってる。うん、こういう詩を書ける人は他に知らないですねー。

そして「戦友会」。これも凄い歌だと思いました。「戦争を知らない子供たち」から見たら「可哀想」で「哀れ」な時代の生き残りでも,それでもそれの青春があった,と歌う部分では自分の祖父母の古い写真とかがふぁーーーーって目に映りました。「あいつの分も,あいつの分もと,生きる気持ちはわかるまい」っていう歌詞も,ちょっと他界した祖父の姿を思い出しました。祖父の場合は弟をフィリピンで亡くしたということで,私には大叔父にあたる方のお墓の前でながーーーく頭を垂れていた姿を思い出します。あの日は行きも帰りもいつになく口数が少ない祖父でした。祖父は孫を得たことを大変に喜び,可愛がってくれましたが,同時に自分が戦地に出ず生き残りながら,年若い弟には結婚もさせないまま戦死させてしまったと,長兄として随分自責していたようでした。あの日の祖父の目は,私を見るときでさえ憂いと後ろめたさを秘めていました。あの世代の人は,棺桶までそういう気持ちを持って逝くんだな,とそういえばあの時思ったなと思い出しました。ただ,歌の,守るために戦ったんだと言わせてやれ,っていう節は,やっぱり私には分からない・・・もとい,分かってはいけないという気持ちが残りました。まあ,私の祖父の場合は最後まで戦場に出ずに終戦を迎えたということでしたので,生き残ってしまったという罪悪感が先にたったかもしれませんけれども。私はまだ幼くて,4人の祖父母の誰からも満足に話を聞きだす前に送ってしまいました。今なら聞きたいことが山ほどある。綺麗ごとじゃなくて本音で,どう感じていたのかありのままを,大人になってから聞きたかったと何度も思いました。この「戦友会」っていう歌は,やっぱり私たちの世代ではなくて,両親の世代の歌ですね。私たちよりはずっと,戦前生まれの人たちの話を聞いてる。でも小さな子供だった私が思ったことをちゃんと思い出させたりもするんだから,やっぱり凄いな,って思いました。

精霊流しの子供のように,葬儀の意味もあやふやだった頃両方の祖母を亡くしました。人を亡くす意味がおぼろげに分かった頃,祖父を亡くしました。漸く亡くした後の後悔まで分かるようになった時には見送る相手がいなくなりました。孝行したい時に親はなし,とはよく言ったもので,せめて両親には長生きして貰って,その間にせっせと両親について学びたいと思ったりします。ただいま鋭意観察中(笑)

それと,さだまさしの歌は確かに凄いのもあるけど,やっぱりあまりに辛気臭すぎるから,若者らしい音楽もせっせと聴きたいと思います(笑)

Monday, October 09, 2006

北朝鮮の核実験 Nuke Experiment in NK

うわーーーー。
きな臭い投稿をしていた折も折,実験しちゃったみたいですね…

安全保障専攻の某オーストラリア人コーチのために,日本のメディアや対応の様子などを書いて送りました。通常こちらにはそういうメールの内容はアップしていないんですが,話題が話題ですし,タイミングがタイミングですし,折角ですから今回はアップしてみますね。一部昨日の投稿と被っていますがあしからず。

ホント,「東京湾に大量破壊兵器がやってきたら」なんていう机上の空論する前に,領土外にある確かな脅威にどう対応するつもりなのかを説明して欲しいです...ちなみに具体的なアクションについて一番言及してるのは石破元防衛庁長官みたいですね。賛成するかは別として,こういう風に具体的に言ってくれると助かりますね。・・・うわ,石破さんって慶應の法学部出身だったんだ・・・知らんかった・・・微妙な気持ち・・・

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1. Nuke Experiment in NK

Was reported by Choson Chunang (North Korean TV channel. Its name meansKorea Central) in this morning. Japanese Meteological Agency confirmedshake of magnitude 4.9 at AM10:35 with characteristic wave pattern whosehypocenter was in North Korea. Assuming that North Korea used 20t, theshake was too small for a successful experiment, military analysts say.They say that it is likely that North Korea will try other types of nukein future, based on what they learned from this experience.

2. Radiation

Immediate concern is possibility of leaked radiation. Because of thewesterly, Japanese are nervous about its affects to Japanese islands.The affect of radiation will reach Japanese islands 6 hours later atearliest. Because Tokyo is in East Japan, it will reach Tokyo a littlelater than that. According to the professionals, the amount of radiation is small enough and we do not need to worry about harm to people even in the worst case but US Army in Japan, SDF, RiskManagement Centres of Nuclear Power Plants and Meteological Agency areconducting special surveillances. According to the Meteological Agency,Tokyo is likely to have rain the day after tomorrow. Remembering the experience of "Black Rain" in Nagasaki, it is one of factors to worry.

3. Reaction

PM Abe had been visiting China and South Korea for top meetings and isnow on the way back to Tokyo from Seoul. At this moment, KanbochokanMr. Shiozaki and Minister of Foreign Affairs, Mr. Aso are havingmeetings with American ambassador. They are likely to pressure China tostop feeding oil to North Korea. PM Abe held a press conference withPresident Roh in Seoul and said that he would consider harsher sanctionon NK.

Here are thepossibilities of reactions by Japan other than demanding UN SecurityCouncil to pass another motion.

(1) Halting the movement of people between NK and Japan

Exchange of officials is already banned. But not the private citizens.As you know, we have a lot of Korean residents in Japan and a half ofthem are North Koreans. Because of the historical background, Japanesegovernment did not tell them not to visit their extended family in theircountry however, it is likely to become more restrictive in order tostop the cash flaw through them.

(2) Blockade

Bank Transfer in general became very ristrictive here since last year. (Even though we of debaters are sending money to Australia for Australslast year, we had to show papers to prove that we are transferring for agood reason.) But because they can bypass this restriction with sendintthe money through the third country, Japan needs to consider blockadingthe cash flaw not "from Japan" but "into North Korea", Ex-DefenceMinister Ishiba said just a few hours ago. Mr. Ishiba is one of theopinion leaders for hawkish political groups and it might affect thedebate in the cabinet.

(3) Amending the Law on a Situation in the Areas Surrounding Japan"

The Law on a Situation in the Areas Surrounding Japan"(1999) enabledSDF to "demand" a indiscriminative screening of each ship only when theUN Security Council pass the motion based on Article 7. But what SDF cando with this law is just to ask ships to let them conduct the screeningand it cannot oblige them. So, again, telegenic Mr. Ishiba stated thatwe need to amend this law as well.

(4) Passing another special temporal law to permit SDF to go abroad

Just as the Diet did for dispatching SDF to Iraq, it might pass anotherlaw to allow SDF to provide logistic support for the US outside ofJapanese soil.

(5) Passing a general law

LDP already started drafting a bill to allow SDF to go abroad withoutspecial and temporal laws for the specific purposes. They haven'tdisclosed the content of this bill yet.

(6) Constitutional Amendment (Article 9)

Obviously, what PM Abe want is this one. But this will take for a whileand till then, LDP is likely to push the other methods above.

4. Amending Article 9

This is an enormously complex debate and the most dead heated debate inJapan in the last 60 years. But to summarise...

(1) Preface of Japanese Constitution

The following is the full text of it.
It is widely known that this preface is paired with Article 9.

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We, the Japanese people, acting through our duly elected representativesin the National Diet, determined that we shall secure for ourselves and our posterity the fruits of peacefulcooperation with all nations and the blessings of liberty throughoutthis land, and resolved that never again shall we be visited with thehorrors of war through the action of government, do proclaim that sovereign power resides with the people and do firmlyestablish this Constitution. Government is a sacred trust of the people,the authority for which is derived from the people, the powers of whichare exercised by the representatives of the people, and the benefits ofwhich are enjoyed by the people. This is a universal principle ofmankind upon which this Constitution is founded. We reject and revokeall constitutions, laws ordinances, and rescripts in conflict herewith. We, the Japanese people, desire peace for all time and are deeplyconscious of the high ideals controlling human relationship and we havedetermined to preserve our security and existence, trusting in thejustice and faith of the peace-loving peoples of the world. We desire to occupy an honored place in an international societystriving for the preservation of peace, and the banishment of tyrannyand slavery, oppression and intolerance for all time from the earth. Werecognize that all peoples of the world have the right to live in peace,free from fear and want. We believe that no nation is responsible toitself alone, but that laws of political morality are universal; andthat obedience to such laws is incumbent upon all nations who wouldsustain their own sovereignty and justify their sovereign relationshipwith other nations. We, the Japanese people, pledge our national honorto accomplish these high ideals and purposes with all our resources.
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(2) Article 9

And the following is the full text of Article 9.

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CHAPTER II: RENUNCIATION OF WAR
Article 9:
Aspiring sincerely to an international peace based on justice and order,the Japanese people forever renounce war as a sovereign right of thenation and the threat or use of force as means of settling internationaldisputes.
2) In order to accomplish the aim of the preceding paragraph, land, sea,and air forces, as well as other war potential, will never be maintained.The right of belligerency of the state will not be recognized.
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(3) Interpretation

There are more than a hundred ways to interpret the Preface and theArticle 9. But Japanese government classifies "warfare" into threelevels and the following is its official stance which is known as"Defence Only Defence Policy".

i) Right to Individual DefenceJapan has it and can excersize it.
ii) Right to Collective DefenceJapan has it but CANNOT excersize it
iii) Right to OffenceJapan DOES NOT have it and CANNOT excersize it

Therefore, unless Japanese soil gets attacked by foreign military,Japanese SDF is not allowed to shoot a bullet. Many of the countermeasuresI listed above are likely to violate this principle.

At this moment, although American force has to defend Japan based onUS-Japan Security Treaty in case Japan was attacked by someone, JapaneseSDF cannot defend US if US was attacked because it becomes collectivedefence. This principle was made based on the experience of WW2 whereJapan invaded China claiming collective defence with Manchuria.

In terms of PKO, there are 5 conditions before dispatching SDFfor PKO.

(i) Peace agreement is signed by every parties in the conflict
(ii) Interested country/countries demand PKO
(iii) PKO is keeping absolute neutrality
(iiii) SDF would be in the condition that it can withdraw anytime
(iiii) SDF would be only with very light arms (defensive only)

Plus, Japanese government distinguishes PKO and PKF and SDF cannotparticipate in PKF. SDF has been participating in PKO since 1992.

In the case of current problem of North Korea, it is outside of Japanesesoil and does not meet the 5 conditions above, SDF cannot excersize itspower under the current legal framework. That is probably why LDP is considering numerous bills to change these principles.
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Sunday, October 08, 2006

個別的自衛権 Right to Individual Defence

前回の『美しい国へ』の感想文にhiloki君からコメントを頂戴しました。
Hiloki君,コメントありがとう!! (^v^)/

それで,これは大切な話題だと思ったので,段階を踏んで確認してみたいと思います。
何かおかしいと思うところがあったら是非言ってください。

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1.国家とは何か

国家は国土と国民からなります。
土地を全く持たない国家も,無人の国家もありえません。

2.主権(国の自治権)とは何か

主権(sovereignty)とは,国土とそこに住む国民とを守る/治める権利です。
何を以って守る/治めるのか。法治国家では法律ということになります。

3.国内法はどこで有効か

そのままですが,国土内です。国土外には適用できません。
日本人がフランスで犯罪をおかしたとして,日本は日本の法律で裁くことを要求できません。フランス国内で起きた犯罪は,フランス国家/警察が対応する権利を持ちます。治外法権がない,わけです。逆に言えば,フランスはフランスの国土で起きた事件についてフランスの法で対処する権利を持っています。

4.外交特権とは何か

元首と外交使節(現地の国家が認めれば軍隊も。在日米軍とか)に,例外的に認められる治外法権のこと。領土外であっても,現地の法律に従わなくて良い(=自治権を侵害して良い)権利です。ですから,在外日本大使館の中は日本の法律に従い,外交官の携行物も入管審査で中身を改められることがありません。

外交特権は,国交を結ぶ際に,普通は互恵的に取り決められます。

さて,『美しい国へ』で述べられている「テロリスト」とは,北朝鮮の外交官を指しているのでしょうか?答えはNoです。日本と北朝鮮は国交正常化を行っておらず,お互いの国に大使館を置いていませんし,外交官の外交特権も発生しません。ですからこの「テロリスト」は日本領土における治外法権を持ちません。

5.個別的自衛権とは何か。

主権を武力を以って守ることです。つまり,領土や国民,それを治める法律が他国に侵害された場合,侵害する者を武力を以って領土から排除することです。

現在の政府見解は,憲法九条は,
①個別的自衛権 の保有/行使を認めており,
②集団的自衛権 は保有するが行使を認めておらず,
③攻撃する権利 は保有/行使共に認めていない,   というものです。

つまり,九条の禁じる「交戦権」は,「集団的自衛権」と「攻撃する権利」,ということになります。(ちなみに私はこの政府見解はリーズナブルだと思っています)

『美しい国へ』で述べられている「日本を攻撃するために,東京湾に,大量破壊兵器を積んだテロリストの工作船がやってきて」という状況では,このテロリストは,

①日本の領海を侵犯している 上,
②日本の法律に違反しています。

ですから個別的自衛権を行使できるケースです。

ですから,「こちらから武力を行使して,相手を排除することは出来ない」というのはウソです。

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私はこのことを中学3年の公民で学びました。

忘れもしない私の初めてのディベートは,
1993年4月,「選択社会科 C(公民)」の授業ででした。
論題は自衛隊のPKO派遣の是非でした。

湾岸戦争が終結し,その結末に社会が憤り,自衛隊の海外派遣がすぐに立法化され,
次の年には自衛隊はカンボジア入りしました。

あのディベートはその熱冷めやらぬ頃のことでした。

Saturday, October 07, 2006

[Book] 美しい国へ Beautiful Country

[本] 安倍晋三. 2006. 『美しい国へ』. 文芸春秋.

2ヶ月ほど前に読んだのですが今頃アップします。
なぜなら、テレビでふかわりょうが、「読んで(安倍さんを)大好きになっちゃった」と叫んでいて驚いたから。

えええ??この本で好きになったの????
うーん・・・ちょっとそこは異議ありって感じ。

確かに、尤もだと思う部分もありましたけれども、「これはないだろ!!」と叫びたくなるような部分も・・・

たとえば133ページ。以下引用。
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”交戦権がない”ことの意味

 もうひとつ、憲法第九条第二項には、「交戦権はこれを認めない」という条文がある。これをどう解釈するか、半世紀にわたって、ほとんど神学論争にちかい議論がくりかえされた。
 どこの国でももっている自然の権利である自衛権を行使することによって、交戦になることは、十分にありうることだ。この神学論争は、いまどうなっているか。明らかに甚大な被害が出るであろう状況がわかっていても、こちらに被害が生じてからしか、反撃ができないというのが、憲法解釈の答えなのである。
 たとえば日本を攻撃するために、東京湾に、大量破壊兵器を積んだテロリストの工作船がやってきても、向こうから何らかの攻撃がないかぎり、こちらから武力を行使して、相手を排除することは出来ないのだ。わが国の安全保障と憲法との乖離を解釈でしのぐのは、もはや限界にあることがおわかりだろう。
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えええええええええ??????
この行には本当に驚きました。特に「たとえば」以降の部分です。

だってさ、東京湾は日本の領海じゃん!交戦権全く関係ないし!!!

銃刀法違反だって警察が取り締まれるのに、大量破壊兵器を指くわえて見てなきゃいけないわけないじゃん!!!!万が一銃に関する法律はあるけど大量破壊兵器に関してはないってんなら(んなアホなことあるのだろうか)、つくれよ、法律!!マリファナは取り締まる法律があるけどヘロインはないんだ、みたいな状態だってんならそれ自体変な話だけど、じゃあ法改正しろよ、と思います。そんなの純粋な国内問題じゃん。

たとえば、ピストルを所持して日本に入国しようとする人が成田空港に降り立ったらどうなるか。そりゃ入国許可されませんよね。大体、怪しいと思ったら強制的に鞄を開けさせられて、検査されて、ピストルが出てきたら逮捕ですよね。「銃刀法違反」!ピストルを持ってると知っていてもピストルを撃つまで警察は手出しをできないなんてそんなあほなことない。抵抗したり、逃走しようとしたりしたら「公務執行妨害」!更に事態が悪化すれば警官の方も発砲するかもしれません。実際普通の犯罪捜査中に警官が発砲してるケースなんて沢山あるでしょう?普通の警官では手に負えない相手なら機動隊だのSATだのが出動するわけでしょう?それでも駄目なら自衛隊出すわけだ。

それとどう違うんだ???

「日本を攻撃するために、東京湾に、大量破壊兵器を積んだテロリストの工作船がやってきたら」、領土内なんだから警察や自衛隊(この場合海上自衛隊?)の武力で取り押さえるのは、交戦行為でもなんでもないじゃん!!実際領海侵犯してきた不審船を銃撃したことあるじゃん!でもその不審船の出身地と思われる国と戦争に突入したなんて言う人どこにもいないじゃん!だって領土内だもん!!万景峰号だって拒否できたでしょう?

普通の犯罪者相手に警察が発砲して「交戦行為だ!」なんて言われたことあるかしら。それが大量破壊兵器を持ったテロリスト相手だったら発砲しちゃいけない、憲法にそう書いてある、だなんて、大嘘もいいところだ。

幾ら、空港や港湾施設は法律上特殊だとは言っても、武器や麻薬の所持取り締まりはちゃんと出来ているはず。私は例えば以下のサイトの説明の方が正しいと思う。
http://sociosys.mri.co.jp/stuff/2004/0618_2.html

違うの?????

ロシア領内に入り込んで密漁している漁船があったら、ロシア側が銃撃することもあるわけでしょう?それは犯罪の取り締まりであって、日本との交戦行為じゃないじゃん??

違うの????

正直、この行を読んだ時には寒気がしました。
だってこんな頓珍漢で浅はかな嘘を信じて、この国は憲法改正を検討しているわけ?????

憲法改正の議論は大変複雑で難しい問題だと思います。
両方の意見にそれなりに説得力があると思う。
私個人はそれでもやっぱり九条を変えるのは反対だし、
愛国心教育なんてやめて欲しい。
けど、反対の立場にいる人の気持ちが全くわからないとは言いません。

けどさ、幾らなんでもこんな国の一大事に関して、こんな初歩的なところで、
こんな出鱈目な発言を一国の首相がしているってどういうことなんだろう・・・
こんな嘘を大真面目に言って、「だから憲法改正しなければ」って言ってるの??
いくらなんでもあんまりじゃないだろうか・・・

政治家として、不勉強じゃ済まないレベルでしょう???
中学生レベルの法制度理解がありませんってことだもん。
安全保障以外のことだってこのレベルなんだとしたら由々しきことだ。
それともまさか確信犯なの?
嘘だってわかってるけど、国民を騙すには充分ってことなの?

ホント、どういうことなんだろう・・・
それとも私がよほど馬鹿で、実は領土(海)内に大量破壊兵器を持ち込まれても
警察は何も出来ないのでしょうか?何か私が見落としてるのでしょうか・・・

ふう。

今政権全体の評価はよくわかりません。
安倍さん以外の人の閣僚がどうなのかもわかりません。

けど、こんな、こんな無知とか嘘とかでは済まないような説明で、
憲法改正に政治家生命かけちゃうような首相には投票できません。

憲法改正が必要なら仕方ないさ。改正しよう。
けどこんな、こんな酷い低レベルな議論でそんな大事なことを決めるだなんて・・・
本当の議論はもっとずっと深くて複雑で難しいものなのに・・・
まっとうな議論して欲しい。それでお給料貰ってるんでしょう??
きちんと議論して欲しい。

ディベータの端くれとしては、この本には正直憤りを感じます。
こんな嘘で国民をまるめこもうだなんて・・・汚い。
この本読んで「大好きになっちゃった」という有権者にも激しい憤りを感じます。
こんな嘘にあっさり騙されるなんて・・・情けない。

あ、しまった。今日は随分怒り心頭な投稿になちゃった・・・

ま、いっか。今日は冷凍庫に新発売のハーゲンダッツがあるんだ。(^v^)
夜中だけど食べて幸せ取り戻しちゃおっと。

Thursday, October 05, 2006

文明開化 Civilization

メールの不具合に引き続き,電話まで壊れました。
なんだなんだ何か変な電磁波でも出てるのか私から。

で,じゃじゃん,機種変更しましたー。ちゃちゃーん!

今度のは3G/GSM両方対応なので,
SMSもi-modeも何処の国にいてもできる!
海外共用ACアダプタがあるので,何処の国でも充電できる!

これで,
外国の友達に日本から高い電話かけなくてもSMSで済むようになる!
海外での大会中に外国から来てる友人と連絡取り合うときも,
他の国の子と同じようにSMSし合えば良くなる!
緊急の電話が日本からかかってきても取り損なうから意味ないとか,
それを心配してかける方が躊躇うといったこともなくなる!
だっていつも通りi-modeのメールをすればいいだけだから!
そして海外旅行に目覚まし時計を持参する必要もなくなる!!
やっほーーーい。びば,ぼぉおだれす。

しかも色々割り引いてもらってポイントも使ったので使った現金はゼロでした。
ポイントも半分くらい残せた。良かった良かった。

しかし,ここで一気に無用となったGSM機。
そう,私はNokiaのGSM携帯も持っていたのです。ハードだけ。
上記のメリットのi-mode以外の全てを満たしてくれた愛機です。
(実はストップウォッチ機能があるという別のメリットがNokiaの方にはあった)

FOMAユーザの方は,バッテリー外すとFOMAカードが見えますよね?
そのカードをGSM機に差し込むだけで,海外でも普段通り電話が使えるんです。
番号も普段の日本の番号のまま。
日本とでも現地同士でも,かけるのも受けるのも超簡単。
ホテルの電話使うより安いし,ローミングよりは絶対安い。
初回で既に初期投資(GSM機購入)の元を取ったと思いました。

メカ音痴な母も気軽に旅行中の私に電話できるようになって大好評。
マレイシア滞在中に津波が起きた時は,友人たちのご家族から,
安否確認の電話なども受けられ便利でした。
(公衆電話は不通になったり長蛇の列だったりしたので。
その点携帯の電波は問題なしですから)

マレイシアのKLで一万円強で購入したもので,正真正銘Nokia製。
旅行中しか使わないので,大して使っていないわけで,
バッテリーも殆ど劣化してなくてまだ全然使えるのに。
もうお役ゴメンだなんて・・・
うーん・・・Yahooオークションかなんかで売っぱらっちゃおうかな・・・

・・・と思ってヤフオクをチェックしたら・・・
うおおおお。

・・・なんと・・・

最初買った時の値段と大して変わらない値段で売れちゃうかも・・・?
恐るべし日本のマーケットの閉塞性・・・
うーん・・・本気でヤフオクに出品しちゃおうかなぁ・・・

何にしても,これからはもう一台を持っていかなくても済む上,
i-modeも使えるようになるわけで,ちょっと嬉しいです。

Tuesday, October 03, 2006

だああああ Driving me crazy

ここしばらく,というか何ヶ月も,やたらとメールの調子が悪くてですね,
一体何なのだろうと思っていたのです。

そしたらとうとうInformation Technology Centreが,メールサーバへのアクセスを制限しているということが判明。・・・つながんない筈ですよ・・・

どうやら,

(1)サーバに接続すること自体が20回に1回くらいしかできない
(2)送受信が何十分も,酷いと半日以上遅れる
(3)SpamじゃないメールをやたらSpamフォルダーに移してしまう
(4)SpamがSpamと認識されず普通にフィルターを通過して届いてくる

ようです。

正直とってもout of control。手に負えません(涙)どないせいっちゅーのじゃ。
メーラーの送受信ボタンを押すと,「サーバへの接続に失敗しました」というメッセージが延々と出続けるという,頭をかきむしりたくなるような苛々する状況です。

・・・なので・・・メールの返信等が遅れましたらどうぞお許しくださいませ。

Tuesday, September 26, 2006

命は誰のものか To be or not to be

楽しい集まりがひけて終電で帰りました。
鼻歌交じりのご機嫌で家路につき、玄関のドアを開けたら、

ビイイイイイイイイイ

夜のしじまにけたたましい音が!!!
ひいいいいい、とムンクの叫びな顔になりました。
私が帰ってくると思わなかった家族が防犯システムをオンにして寝ていたのでした。
「帰ってくるなら帰ってくると言え」と、ばっちり叱られました。えーーん。ごめんなちゃいいいい。
叱られるときは幾つになっても子供です。

さて、今日のディベートは、「積極的安楽死を合法化すべきか」でした。
私は否定側第一スピーチを担当しました。3-1で負けました(涙)
まあ、そもそもリベラルな人が多いディベート界では、
この論題で否定側が勝つのは稀です。国際大会なら尚更。
なので、まあ仕方ないかな、という気はします。
それを除いても私の出来は悪かったのですけど(涙)

肯定側の論点は、やはり患者自身の死に方を選ぶ権利、QOLについてなどでした。命は本人のもので死も含めて自己決定権がある、というものです。

私自身は、根っからPro-Choiceなので、堕胎についても安楽死についても肯定側です。だから肯定側の意見につい頷きたくなってしまいます。否定側の意見を組み立てるのは結構大変でした。

まあ、そんなこと言っても始まらないわけで。自分以外の人の考え方もシミュレートしてみれるところがアカデミック・ディベートの美点なわけで。そうやって他人の立場や意見を思い遣ったり尊重したりする術を学んでいくわけで。否定側になった以上は否定側の立場を掘り下げて考えなければなりません。

私たち否定側は、肯定側のQOLに対して、SOL(Sanctity of Life)を掲げ、「どんな状態でも、たとえ息をしているだけでも生きていることには意味がある。それが誰のものであっても、たとえ自分自身のものであっても、命を奪う権利は誰にもない。」というPro-Lifeの立場を打ち出しました。

この部分は、どうやらあまり観客ウケしなかったようです。もっとプラクティカルな話に焦点を絞ってもらいたかったみたい。国際大会では、こういう大上段に構えた倫理に関する議論がウケるので、ついついそちらに合わせた議論をしてしまいがちな私。日本の観客の方はディベート経験者でもそうでなくても一貫してプラクティカルな分析を好む傾向があることをすっかり忘れていました。失敗。

スピーチのリプロダクションもいつもどおりやってしまいたいところなのですが、とっても眠いので明日にすることにします。とにかく今日の教訓は、倫理と実利のバランスを取ろう!ってことでしょうか。また後日スピーチをアップします(^v^)

Tuesday, September 19, 2006

[Comic] 夕凪の街 桜の国 Town of Evening Calm, Country of Cherry Blossoms

[漫画] こうの史代.2004.『夕凪の街 桜の国』.双葉社.

ようやく読みました。

手塚治虫文化賞新生賞と文化庁の賞のダブル受賞をしたと話題になった作品。 プラチナ本とやらにも選ばれたとか。気になってはいたのです。

題材がヒロシマとあって,やっぱり重い内容ではあるのですが,身近に感じる描き方でもあります。特に『桜の国』は,随所に日常感いっぱいのユーモアも散りばめられ,現実の問題としての被爆二世や三世の気持ちと社会を近く感じさせます。変にグロテスクさのみを押し出していたり,お涙頂戴的だったり,政治主張がどぎつかったりしていないので,多くの人に読みやすいだろうと思いました。好感の持てる作品でした。

たった100ページで800円と,漫画の相場から考えると高い価格設定ですが,その価値はあるように思いました。

英語版・フランス語版・台湾版も出版されているとのことで,友人に薦めてみようかな,と思いました。海外の新聞で,『蛇にピアス』とか,『下妻物語』とかしか紹介されていないのを常々残念に思っていました。こういう作品も英訳されていると知って,少し嬉しく思いました。

Wikipediaの解説はこちら


[Comic] Kouno, Fumiyo. 2006. Town of Evening Calm, Country of Cherry Blossoms. Last Gasp.

Read the publisher's review is here.

Amazon's site is here.

Monday, September 18, 2006

邂逅 Encounter

邂逅という曲にまつわる,さだまさしのエッセイを読んだことがある。うろ覚え
だが,確かこんな内容の歌だったと思う。

歌の主人公は,若い頃父親と反目しあって,以来父親との交流がなかった。父親
はそのまま他界してしまった。ある日,父親の遺したカメラにフィルムが残って
いるのに気づく。現像に出すと,写っていたのは母親だった。それを見て,主人
公はそれまで自分が知らなかった父親の一面に触れる。父親が他界してしまった
後になって,父親と初めて本当に出会った気持ちになる。

確かエッセイの内容は,こういう特殊な関係に関わらず,知り合って随分経って
から,本当の意味で邂逅することは少なからずある,というものだったと思う。

***

先週末はずっと家に閉じこもって書き物をしていた。作業中は例によってリスニ
ング用にビデオを流していた。久しぶりに,二十年近く前の父の米国出張土産を
流した。古いVHSのビデオテープだ。ディズニーの『ロビン・フッド』,『マイ・
フェア・レイディ』,これまたディズニーの『メアリー・ポピンズ』といった,
小さい時分に何十回となく観た映画だ。

米国で買ったものなので字幕がない。英語がわからなかった頃にどうやって楽し
んだのかというと,言葉はわからないままだったのだ。大体の筋は,以前に観た
ことのあった母の解説で大雑把に理解していた。ディズニー・アニメーションの
類は元から,言葉が解らなくても大雑把なストーリーは解る画である。子供が映
画を楽しむには画と音楽で充分だった。

しかし,久しぶりに観てみるとクリアに台詞が聞こえてくる。数年前はセリフの
意味が大体察しがつく程度だったのが,いつのまにかシャドウィングできるよう
になっている。一文一文の意味が漸く解って,驚いた部分もかなりあった。特に
冗談やパロディ,引用の類は初めて理解したものが多かった。語彙が不足してい
たために中学生・高校生の時は解らなかったような表現もいつのまにかわかるよ
うになっていた。解るようになると,映画の印象は随分と変わった。

例えば『ロビン・フッド』では,"outlaw for in-law"というオヤジギャグ以外の
何物でもないような台詞が二回も出てくる(リチャード王の唯一の出番の唯一の
台詞がこれ。王様の威厳ゼロ)。「俺みたいなならず者と結婚してくれなんてお
姫様に言えっこないさ」と溜め息をつくロビンに「料理もできないしな」と茶々
を入れるリトル・ジョン。"I'm serious!"と茶々に怒るロビン,といった細かい
掛け合いの数々も漸くわかるようになった。Friar Tuckがどうして「陽気な仲間」
に入るのかも漸く判明(なるほど,こいつぁー陽気だ。加えて言うなら,邦訳は
「陽気な」とするのが一般的だが,元は多分もっと「くだけた」とか「ストイッ
クさに欠けた」,更には「俗っぽい」とか「坊主の癖に色事に詳しい」的な意味
もあったのだろう。邦訳からじゃわかんないよな・・・)。他には例えば,鶏の謡
う"Every town... but not in Nottingham" というシニカルさ全開の歌。「税金
は悪だ」というメッセージがどぎつく感じる。自由経済賛美(弱肉強食・富裕層
優遇)の精神を子供に刷り込もうというディズニーのあざとさに見えてしまう。
政治的に過ぎないだろうか。他の歌の歌詞には十字軍を賛美しているものもあっ
てドキッとさせられる(現代では認められないデリカシーゼロな歌詞だ)。なん
か,子供向けのアニメの癖に妙に際どいなぁ・・・

同じように,『メアリー・ポピンズ』ではパパが「アフリカとの貿易(貿易じゃ
ないだろ,植民化だろ)万歳,紅茶のプランテーション万歳,大英帝国万歳」と
いう植民制度賛美の歌を歌っている(これまた現代では認められないデリカシー
のなさだ)。銀行のお偉いさんは「おかげでアメリカ人でさえ飲めないような紅
茶に成り果てた」と,アメリカ人の味覚音痴ぶりを冗談に使っているが,これも
ちょっとNHK的にはアウトな感じ(今だったらステレオティピカルだと批判され
そう。まあ,制作がアメリカ自身の自虐ギャグだから許されるだろうけど)。そ
の癖foxhuntingの狐を助けるシーンがあったり,パパが「しかし伝統だから」と
言い訳したりするシーンがあったりして妙に現代に通じる。

『マイ・フェア・レイディ』のヒギンズ教授は,「フランス人ってのは,発音に
は気を配るくせに,行いはからきしだね」という冗談を入れた歌で登場。あまり
に露骨な人種差別っぷりだ(まあ,このキャラクターの場合,人種に関わらずジェ
ンダーにも社会階層にも何にでも割と無礼だし,本人も台詞でそう言ってるけど
・・・「俺は別に花売り娘だからぞんざいに扱ってるわけじゃない。貴婦人に対し
ても花売り娘に対するのと同じようにぞんざいで無礼だ」と。。。自慢になって
ないし。言い訳になってないし。コントラしてるし。)。

素朴に楽しい映画として観れた子供時代とは違って,今観ると昔の「ファミリー
映画」は結構怖い。絵面(えづら)が可愛いだけに台詞の際どさにビックリして
しまう。サウス・パークよりこっちの方が問題じゃないか?欧米の子供たちは,
こういうの観て育つのかぁ。税金に対する観念にしても,イスラム教に対する漠
然とした「正義は我にあり」的態度にしても,フランス人の悪口は言い放題なメ
ディアにしても,理屈じゃなくて小さい時から刷り込まれてるのかもなぁ・・・
と思ってしまったり(red statesはこうしてできるのかぁ・・・みたいな)。ちょっ
と怖い。

英語が少し解るようになってこれだから,もっとちゃんと解るようになったら,
こうした古典映画をどういう風に思うようになるんだろう。私が本当の意味でこ
うした映画と邂逅できる日はまだ先なのかもしれない。

***

この「映画とプチ再邂逅」をして,言葉の壁を挟んだ人間づきあいも同じだな
・・・としみじみ思った。

海外の友人たちの言っていることのどれだけを自分は精確に理解しているんだろ
う。親しくしているつもりの相手のことも,実はぜーんぜん解ってないのかもし
れない。

彼らは私をどれだけ理解しているだろう。何せ私のことを保守的で物静かな大和
撫子だと思っていた彼らである。私の外見からさぞや思い込みを膨らませている
のだろう(私は外見だけなら気弱に見える)。

英語が今よりももっと不自由だった数年前は,私は沢山嘘をついた。別につきた
くてついたのではない。つかざるを得なかったのだ,言葉の問題で。

例えば,忘れもしない2002年夏。自販機に飲み物を買いに行った私はたまたまコー
チと鉢合わせした。鼻歌で『マイ・フェア・レイディ』の"Wouldn't it be lovely"
を歌っていた私に,コーチは「お前がヘプバーンのファンとは知らなかったな」
と言った。「うーん,そうでもないよ。どっちかって言うとジュリー・アンドリュー
スの方が好き」と返した私に,「ああ,舞台の時はアンドリュースだったの知っ
てるのか」とコーチは更に返した。「・・・yes」と私は妙な間を空けて応えた。コー
チは,私が知ったかぶりをしたと受け取ったようだった。実のところは,確かに
私はジュリーアンドリュースが舞台の『マイ・フェア・レイディ』のイライザ役
を務めていたことを知っていたのだ。けれど私が彼女とヘプバーンを比べたのは,
そのせいじゃなかった。『サウンド・オブ・ミュージック』と『マイ・フェア・
レイディ』が同じ年のオスカーを巡って競ったのが頭にあったからだった。ヘプ
バーンは負けたショックでしばらくスランプになった。このことをコーチに言わ
ず,彼の勘違いを訂正しなかったのは,別に嘘をつきたかったからではない(厳
密には嘘ではないし)。単に「ああ,これは英語で説明するのには私じゃ時間が
かかりすぎる。こんなつまらないことを説明するために相手を苛々させたくない
し,私自身そこまで元気が残ってない」と判断したからだ。英語が下手なのが理
由だったのだ。

全く同じ年,同じ夏,ひょっとすると同じ日だったかもしれない。同じコーチと
帰り道が一緒になって,食事の話になった。"I'm going to become a
vegitalian because killing is bad"と言う彼に,私は"But aren't plants
also lives?"と返した。すると「ああ,お前○○の××を読んだのか」とコーチ。
訊き返しても私には○○も××も聞き取れなかった。面倒くさくなった私は,ま
たもや妙な間を空けた後で,結局「・・・yes」と応えた。これもまた,知ったかぶ
りをしたと解釈されたようだった。しかし,本当のところは,植物も命であると
いう考えを私にインプットしたのは,一休さんであり,小学校の頃から叩き込ま
れる日本のアニミズム的な価値観(一寸の虫にも五分の魂とか夕日が背中を押し
てくるとか)であり,神は万物に宿るという神道的な刷り込みだった。これもま
た,当時の私には説明する面倒臭さの割りに重要度は低いことだった。私は説明
しなかった。受け売りなのは確かだから「no」じゃ不味かろう,じゃあ「yes」
で良いや,と今考えるとありえない割り切りぶりを見せたのだ。英語が下手だっ
たから。

同じ夏,今度は別のコーチが,ソクラテスの問答の話を始めた。最初に「ソクラ
テスを知っているか」と彼が尋ねたとき,私は「no」と即答した。ご存知だろう
が,英語のSocratesは,発音とアクセントがかなり違う。ソクラテスを知らなかっ
たのではなくて,コーチの言う「ソックラ・ティイイイイイズ」がソクラテスだ
と当時の私は気づかなかったのだ。話が進むうちに,「ああ,なんだ,ソクラテ
スのことだ」と私は内心思ったが,「やっぱり知ってる」とは言いにくい雰囲気
だった。そもそも,英語力に自信のない私には,話を蒸し返すのも,訂正のため
に説明するのも面倒臭いことこの上なかった。私はその後1時間,コーチの長い
話が終るまで,ソクラテスを知らないフリをし通した。

こうしたことを重ねていると,私自身と友人たちの抱く私に対するイメージは乖
離していく一方だろう。私は嘘をつき続け,彼らはその嘘を通してしか私を見れ
ない。どこまでいっても,彼らが私に本当の意味で邂逅する日は来ないのではな
いか。そんな風に思った。

今の私は,当時に比べれば英語でもずっとお喋りになっていて,当時のように誤
解を解かずに説明するのを諦めるようなことは,まずありえない。それでも,日
本語の時と同じだけの伝達力を保っているか,と言われれば否だ。例えば,上の
例なら,一休さんのことや小学校で学ぶ詩文の話など言ってもどうせ通じっこな
い。だから適当に端折ってしまうだろう。結局,私自身を彼らが知る日は来ない
のではないだろうか。

言葉の壁を挟んでもなお,この十年弱に沢山の友人ができた。私は彼らを愛して
いるし,彼らを近く感じてもいる。

でも,本当のところは,彼らは私を知らないし,私は彼らを知らないのではない
だろうか。

まるで思春期に入りたての子供のような,小さくてとりとめのない疑いがいつも
つきまとう。完全に分かり合うことがないなんてこと,日本人とだって同じだろ
うに。結局のところ,知り合って何年経っても,まるで今日初めて出会ったかの
ように,邂逅を繰り返していくしかないのだろう。そんな諦めにも似た気持ちが
私を奇妙に冷たくする。

それでも,今日も,邂逅記念日。
甘く,苦く,そして冷たく。邂逅記念日。

だって私はコミュニケーション・フェチだから!!

Tuesday, September 12, 2006

[Book] λに歯がない λ has no teeth

[本] 森博嗣.2006.『λに歯がない』.講談社.

読みましたー!ようやく。
感想としては,εよりずっと好み!楽しめました。

あ,以下ネタバレだらけです。お気をつけをば。

中盤で赤柳さんと話している女性,最後のシーンで梶間さんと話している女性は,両方とも各務さんだと思いました。口調とかSP同伴なとことか。でもって最後のシーンの男性は保呂草さん。問題は赤柳さんが誰なのかですよねー・・・。うーん・・・誰なんだろう。あと海月君。でも山吹君と同じ島出身でしょう・・・??うーん・・・誰だろう・・・。ヒントは犀川先生と思考回路が似ていること。・・・林さんにもう一人子供がいるとか・・・?でも犀川先生の頭は紅子さんの方が似ている気がするから・・・。うーん・・・いっそ全然関係ない方がすっきりするかな。

ご多分に漏れず,萌絵ちゃんと犀川助教授の仲が少し進展したことも嬉しさ5割り増しでした(笑) 膝の上に萌絵ちゃんが座って抱きついてもようやく動揺しなくなった犀川先生。頑張れ,その調子!なんだかいつのまにか萌絵ちゃんちにお泊りすること増えてるし。よしよし。

・・・あれ,けどさあ,萌絵ちゃんちって諏訪野さんいますよね??あれ???それって実家生の家にお泊りしてるって感じ・・・?あ,それはいやかもー・・・。紅子さんと林さんの時も思ったけど,プライバシーなさすぎる感じが・・・。うーん・・・。まあ,いっか。なんかこの二人は心配なさそうだから,喜多先生の心配でもしてようっと。

Saturday, September 09, 2006

そしてもっとショックだ Something a lot more shocking

森博嗣占い(http://u-maker.com/75491.html)で鵜飼さんになってしまった私。

そのショックを払拭すべくSM(犀川×萌絵)シリーズ占い(http://u-maker.com/154486r.html)にも挑戦してみました。そして結果は・・・

・・・・・・なんと・・・・・・林警部・・・・・・。

なんで,なんでなんでなんでなんでなんで!!!!
超ショックですよ。

森博嗣さんの作品を読んだことがない方のために簡単に解説すると,林警部というのはぶっちゃけ「たらし」なわけです。別れた妻との間には息子が,内縁の妻との間には娘がいて,そのどちらとも関係を続けたままあっちふらふらこっちふらふらしている男なわけですよ。しかもいざという時の態度がひたすら情けない。二人の女に挟まれたり,息子の彼女に鉢合わせたりした時どうするか,というと,ずばり逃げるんです。その状態をずっと続けているわけ。卑怯者の臆病者じゃないですかぁ。

私は断じてそんなに浮気性じゃないし,卑怯でもない!!

ちぇー・・・。まだ鵜飼さんのほうが傷が浅かったぜ・・・。

Friday, September 08, 2006

小さい驚きみつけた Small Surprises Shocked Me Much

夕方以降は虫の鳴き声も大きくなり,小さいどころか大きな秋をみつけている今日この頃です。そんな夏の終わりの個人的に驚いたニュースを3つほど。

1. Rob Corddry,TDS降板
Rob CorddryがThe Daily Showを離れる??んでもってFoxに移動?なんでなんでなんで?ボストン育ちの生粋リベラルじゃなかったですっけ??何でFoxなの?うーーん・・・。まあ,確かにそろそろ賞味期限切れな感じがしなくもないTDS(最近質が落ちたと思う)。離れるなら今って気持ちもわからなくもないかな・・・。ちなみに私は,「北朝鮮に先制攻撃すべし」って(米国)民主党が言った時TDSがそれに同調したのを見てTDSに幻滅しました。・・・ホントただの民主党の手先って感じに見えてしまいました・・・。久々にお気に入りな番組だったのでショックでした。今でも見てはいますが,以前ほど楽しめません。何か別のものを開拓しなければ・・・

2.東ティモールは北朝鮮以下
ディベータに人気の『COURRiER Japon』によれば,東ティモールの平均所得は北朝鮮のそれより低い。うーん・・・大変だ・・・。でも独立前に所属していたインドネシアもあまりリッチではないので仕方ないかしら・・・。けれど東ティモールは北朝鮮と違って天然資源を持っている筈では?オーストラリアも譲歩して東ティモールのものと認められたのだと思っていましたが,だからといって一朝一夕で利益が上がるわけじゃない,ということでしょうか・・・。国内で東西の争いがあると報道されていますが,それと資源運用と何か関係あるのでしょうか・・・。うーん・・・今度もう少し勉強してみようと思います。

3.ピルには処方箋が必要
先日,日本におけるフェミニズムについてコーチ達や夢チームと議論。その際,私は避妊用のピルが日本でも売薬になった・・・とばかり思っていたのですが,産婦人科に勤める友人に尋ね,まだ処方箋が必要だと判明。ビックリです。他の国では経口堕胎剤まで売薬となる今日に,なんで普通のピルに処方箋が必要なんだろう・・・??低容量なら副作用はなさそうだというのが一般的だと思っていましたが・・・。生理不順とかも含めて,避妊に限らず必要としている人は多いだろうに・・・。しかもモーニング・アフター・ピルなんかもっての他で処方箋すら書いて貰えないんだそうです。へーーーー。へーーーーー。「なんで?」って聞いたら「そんなもん多用されて余計コンドーム使わなくなられたら困る」とのことでした。・・・・・・。「そんなのもう妊娠しちゃって困ってる人に言っても意味ないじゃん!!コンドームしたけど失敗したのかもしれないじゃん!ていうか堕胎手術の方がましだと言うのか??」と驚いてしまいました。更に,「モーニング・アフター・ピルは『正しい』堕胎の仕方じゃない」とか,「学会で認められていない」とか,「どうしてもって言うんなら制裁的な意味も含めて4・5万出せば処方してくれる病院もあるかも」とか,いかにも「不慮の妊娠をするヤツは社会のゴミ」とでも言いそうな軽蔑を込めて言われて,もう頭痛ガンガンです。「制裁」ってどういうこと,「制裁」って・・・。いつから医療は司法の場になったんだ・・・。しかも裁く根拠は法律じゃなくて医学会の考える善悪なんだ・・・。日本の医療はどこまでも医者が患者より偉いんだなぁ・・・と思いました。ちなみにこの友人は女性です。女医さんがこうなら男性のお医者さんはもっと女に厳しいのでしょうか・・・。幸いこうしたことが自分自身の問題となった事は一度もないわけですが,それでも背筋に悪寒が走りました。Pro-Choiceなんていう言葉自体が存在しないのでしょうか,この国には。

Sunday, September 03, 2006

かおりの楽しみ decencies for incense

















お友達に食器と小物入れを貰いました。あんまり可愛いからここに写真を出してしまいます。イヒヒ。

小物入れはお香入れにしました。最近別のお友達がタイに行ったお土産にお香をくれました。元々持っていたものも合わせるとちょっとしたコレクションになったので,しまい場所に悩んでいたのでした。 うーん,なんて丁度良いサイズ! Kちゃん,ありがとーーー!!!

アロマオイルとかの方がメジャなのかもしれませんが,私はこういうお香が好きです。あの煙がゆらめくところを見るのも好きだし,使い続けるとお部屋に微かに香りがつくのも好きです。抹香臭い?いいじゃないですかー。

ちなみにこの小物入れの置き場所は棚の着物の段にしました。着物を着る度に毎回焚き染めるというようなことはしていません。でも香りが移ったら一石二鳥かな(笑)と思って着物の近くで使うことが多いからです。

お香の種類は主に棒状のタイプ。オーソドックスに白檀が一番好きですが,気分によって色々炊いてみます。今家にあるのは,ピーチ,ジャスミン,蘭と竹です。

お香立ては4つあって,右から二番目の「蓮の葉」が一番片づけが簡単です。でもスティックの一番下の部分が詰まって取れなくなってしまうことがあるのが難点。

黄色いゾウさんにも同じ欠点が。しかも周りに粉が落ちます。見かけはとっても可愛いんですけど。

一番右の青いお皿状のは,片付けが簡単で棒が詰まってしまうこともなく一番スマートです。でもかなり長く燃え残ってしまいます。短いスティックを使う時はちょっと勿体無いかな。

そんなわけで,一番お気に入りは実は,一番左の茶色い四角のものです。みかけは冴えませんけどシンプルでさり気ないのがかえって好みです。燃え残りも殆ど出ません。粉は落ちますけど,まあ一拭きで済むわけですしね。

こうして可愛い入れ物に入れると,こんな小さな趣味も幸せな楽しみ度が大幅アップですね。Kちゃん,ホントありがとーo(^v^)o

Thursday, August 31, 2006

少しでもましな将来 slightly but surely better off future

嶽南亭主人さんのブログに,

「ディベートって「未来を選択する訓練」なのだと、私は思います。(中略)ディベートに実際に取り組むこと、あるいはディベートを見ることにより、「議論を通じて将来を考え、議論を通じて将来のシナリオを選択していく」こと。(中略)よりよい議論の実践を通じて、「少しでもマシな将来」を、あるいは将来は今よりもよくなるという確信を、今投票権を有していない世代、さらにはいままだ生まれてもいない将来の世代に残していくことが、いま現に投票権を持っている我々のつとめなのだと思います。」

とあって感動。今日一日この言葉でハッピーでいられます。

私が本当に尊敬するディベータが言う事は皆同じです。
私が本当に尊敬するディベータはディベートに切ないほど夢を見ている。

議論すること。人の意見をよく聞いて,自分の気持ちもきちんと表現して,心通わせて吟味して未来を決めていく。そんな言葉の力を信じてる。言葉の力で,少しでも優しくなれんじゃないか,少しでも世の中良くできるんじゃないかって夢見てる。その同じ夢を見れるだけで,私の毎日は捨てたもんじゃないって思えます☆

以下,masakoの心に残る名言集から3つほどピックアップ。

アレクサンドラさん「Debating is about educating ourself. Debating is about fighting our own ignorance」
リチャードさん「Who on earth wants to live as an ignorant? We debate to be less ignorant」
ソネレック氏「Debating is not a hobby. It's a life style」

私は,優しくなるためにディベートするんだと思う。

世のなかに飢えている人がいることを知らなければ,彼らを助けようなんて思わない。知っていても,他の人の知性の助けがなければ,どうすれば良いのか考えを深められない。自分の意見が正しいのかチェックすることができない。ディベートすることで,私は世の中のことを知りたくなった。ディベートすることで,私はいつも「じゃあ,どうする?」という方向に考える焦点を置けるようになった。ディベートすることで,沢山の人と意見を交わす機会を持てた。そのおかげで,今まで思いやるとっかかりもひっかかりもなかったような立場の人を大切に思えるようになった。

Debating is to know more, to think more and to love more

バカで無知な私だって,もう少しで良いからマシな人間になりたい。
明日もディベート頑張るぞ☆っと。

Tuesday, August 29, 2006

愛は地球を救う? Love saves the world?

今日は、ひょんなことから普段忌み嫌っているラヴ論題でスピーチしました。忘れると勿体無いので、やはりメモっておくことにします。

論題は「バレンタインを廃止すべし」で、私は否定側の第二スピーチを担当しました。スピーチ時間は5分、準備時間は15分と、普段より少し短めでした。以下が私の覚えている限りの自分のスピーチの内容です。やはり論題が論題なので、多少ユーモアを交えて面白おかしく話せるように心がけました。

(野球の松井選手(ゴジラ)によれば、上達と成功の秘訣は経験を記憶することだとか・・・。記憶力の悪い私は駄目です。その法則だと・・・。せめて書き残すことで覚えておけなくても思い出す手がかりは残して置こうっと・・・)

ちなみにこのラウンドの前に、裁判員制度の廃止の試合を見学しました。ものすごくレベルの高い試合で大変勉強になりました。ああ、いつもこういう試合だったらどんなに大会の審査も楽しいだろう・・・

-----------------------------------------------
肯定側は先ほど、バレンタインは画一的な愛の象徴だと述べられました。
しかし私たち否定側は、それでも愛は地球を救う、と信じます。
愛情表現の方法・機会・手段は多ければ多いほど良いと思います。

まず何故バレンタインが大切な愛情表現の機会なのかをご説明し、その後コストとベネフィットについて考察します。そして最後に私自身の議論である経済効果についてお話したいと思います。

1.まず愛情表現の機会としてのバレンタインについてです。
バレンタインが愛情表現の一種であることは確かです。
普段ことさらに口にはしない感謝の気持ちを上司に伝える。
今まで言えなかったけど実は好きだと告白する。いろいろです。
たとえ義理チョコであっても、今後まったく縁を切ってしまうつもりの相手には渡さないわけです。
たとえばお父さんが娘にチョコを貰えばやっぱりうれしいでしょう。
バレンタインはそうした愛情表現の大切な機会になっているのです。

これに対して肯定側は最近はそういうご時勢ではない、いつでもどこでもだれにでも愛情を表現できるようになったんだと言っていました。しかし、
1)愛情表現の機会は多ければ多いほど良いではありませんか
2)皆がみんな、いつでもどこでも誰にでも愛情表現できるわけではありません。肯定側の分析は単純すぎると思います。そういう人ばっかりではありません。日本では特に、愛情表現をしにくい文化があることは先ほど私のパートナーが説明してくれました。
3)もし本当にみなさんがいつでもどこでもだれにでも愛情表現できる状況にあるなら、少子化が1.25という出生率まで深刻になっているはずがありません。

これに対して肯定側は、女性にかかる経済的コストが大きいという話をしていました。しかし
1)女性が男性のためにお金を使うことは良いことです。なぜならまず①経済効果があるからです。これについては後ほど詳しくご説明します。そして②女性たちは楽しんでいます。そうでなければデパートに大挙して押し寄せてキャーキャー騒いでいるはずがありません。あれはレジャーなんです。彼らのお金を彼らの楽しみのためにつかうことにやましいことはなにもありません。
2)これはフェアな負担です。なぜならホワイトデーにお返しを期待できるからです。

次に2点目として肯定側は、勝ち組・負け組(ここで肯定側第一スピーカ「その点について」とPOIをオファー)に分かれてしまうことで劣等感が生まれてしまうという話をしました。その話に移る前にどうぞ。

肯定側第一スピーカのPOI: ホワイトデーのお返しはもらえるとは限らないんじゃないですか

それは、この人にはどのくらいのお返しを貰えそうかな、ということを良く検討してどの位の金額のチョコレートを買うか決めればいいんです。

さて、二点目として勝ち組・負け組に分かれることによる劣等感が生まれると肯定側は言いました。
しかし、
1)恋愛において勝ち組・負け組が分かれるのはバレンタインデーに限ったことではありません。どうせ25年以上一度も彼女ができたことのない男性もいれば、一度に5人の女性と付き合う男性もいるんです。それが現実です。現実を無視しないでください。
2)皆が愛を貰えなければ、皆がチョコを貰えなければ、みんな平等だというのは偽善的です。全員一等賞のかけっこと同じです。
3)それよりも、どんな人に自分はモテて、どんな人にはモテないのか、マーケットを熟知することが重要です。バレンタインデーはまたとないそれを知る機会です。恋愛を促進しています。
4)また、チョコが欲しいから、と自分を磨くのなら、それも恋愛を促進することにつながっています。

現代は、お見合いビジネスを国がやらなければならないほど、出会いがない、きっかけがないことが問題になっているのです。バレンタインが少しでも愛情表現の機会を増やすなら、それは巣晴らしことです。

さあ、3.経済問題についてです。

年齢にかかわらず平均して、一人の女性がバレンタインに使う金額は7000円といわれています。
6000万人、人口の半分が女性として、これは4200億円相当になります。
更に、ホワイトでーには3倍返しの法則があります。こちらは1兆2千億円になります。
合計1兆7000億円の産業です。

いくらパチンコが3兆円産業だとは言っても、それは年間で3兆円です。
バレンタイン産業は、わずか1日や2日でほぼ2兆円を達成してしまうのです。
こんな素晴らしい市場を捨ててよいのでしょうか。
この2兆円の産業は日本の景気回復にどんなに消費拡大の形で貢献してきたことでしょう。

しかも人々はこの消費を楽しんでいます。
誰も彼らに強制していません。
チョコを買いたくなければ買わなければ良いんです。
楽しめて経済に貢献できる。
(ここに「まさに愛は地球を救うのです」と入れる筈がうっかり忘れる)
だからバレンタインはあるべきです。
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この試合は4-0で否定側の勝ちでした。ヤッター。とはいえ、パートナーの方が大変大人な方で、初心者にもかかわらず上手に合わせて下さったので、それに助けられたと思います。 初めてとは思えないほど落ち着いた方でした。

スピーチの評判自体は、割と良かったようです。エンターテイメント性と理詰めな部分のバランスがほど良かったというコメントを頂戴しました。内容的な密度は5分のスピーチとしてはいっぱいいっぱいだったのでは、と言われました。確かに詰め込み過ぎたかな、とはちょっと思いました。というか、またもや、反論と立論のバランスが悪い。反論までで4分使って立論は1分強しか使えませんでした。せめて2分は裂くべきだった・・・。まあ、でもラヴ・モーション嫌いのmasakoとしてはまあ良かったのかな・・・。はあ、やれやれ。まあ大きく失敗せずに済んで何よりでした。

Sunday, August 27, 2006

[Book] 自由はどこまで可能か How far can liberty go?


[本]森村進.2001.『自由はどこまで可能か』.講談社.

この本を読んで,自分はリバタリアンというよりリベラルなんだな,と思った。

特にそう思ったのは,著者が書いてる相続禁止(相続税100%)の理由。贈与は個人の所有物に対する意志が明確だから自由を尊重しているが,相続は故人の意志という架空のものに依拠している,というのが主張のようです。

私は,人によってスタートラインが違いすぎるのがフェアではないという根拠を最初に思ってしまう。でも確かにそんなこと言ったら贈与はどうするんだよ,親に受けさせてもらった教育の違いはどうするんだよ,子供の食生活と健康だって親の収入に影響受けてるよ,スタートライン一緒なんて幻想なんだよ・・・と言われたらホントごもっともです。贈与もすんなっって言えるほどラディカルにもなれないしなぁ・・・(ていうか贈与を禁止したら経済取引として同じことをするだろうな。だからといって市場も否定したりしたら全くの共産主義に・・・そんなんやだ)・・・うーん・・・リバタリアンの方が一貫性が高いなぁ。(但し,リバタリアンの多くは故人の意志を想定して相続を正当だと考えているようです)

でもやっぱりこうして考えると私は,人格的(社会的)自由度は高ければ高いほど良いと思ってるけど,経済的自由度はあまり高いといやだ(ない方が良いと思っているのではなくて,高すぎるのは嫌だ)と思っているんだなぁ・・・。うん,やっぱり私はリバタリアンではなくリベラル・・・かな。

他に,「臓器移植くじ」のたとえ話(くじに当たった人の臓器を病気の人たちに移植すれば,一人の犠牲で沢山の人を救える。そうするべきか?という思考実験)も面白かったです。「殺すのと死んでしまうのとは倫理上違う(病人が死んでしまうことよりもくじに当たった健康的な人を殺すことの方が問題),というのには根拠がない」という部分がかなり。私もやっぱり殺すのと死んでしまうのは違うと感じるので,社会の持つ価値観の非論理性が確かめられて興味深く思いました。

頭の体操になる本です。リフレッシング!こういうの好きです。

羊の道 第六話

時系列的にはちょっと戻ってしまいますが,
プレオーストラルの予選3試合目について。
論題の精確なワーディングがわからないのですが,
忘れてしまうと勿体無いので書いておきます。

大雑把に言うと「婚姻で政府が果たす役割はない」というような論題でした。
対戦相手は平和チーム。平和チームが肯定側で,夢チームが否定側。
ソネレック氏がファースト,キティがセカンド,私がサードで,ヒメが最終答弁でした。

準備中は,「婚姻制度廃止」のケースを想定して準備していました。

日本ではあまり意識されていませんが,婚姻には法的な側面と,宗教(文化)的な側面とがあります。なので,準備していた議論は「宗教だけに任せてはいけない」というものでした。宗教上認められていない結婚(ゲイ・マリッジとか)で認められるべきものがある,そういうケースでは教会の代わりに政府が承認してあげることが大切という話をすることになりました。極端に言えばアンチ宗教っぽい内容でした。

ところが蓋を開けてみると平和チームのケースは,「同性愛者の権利を認めて,結婚ではなくCivil Unionの制度にしよう」というもの。げげげっ。そんなんあり?!と思いつつ大慌てで議論を反転。
宗教的・社会的な価値感に反しすぎているのはダメ,という議論を急いで準備しました。当初予定していたのとは真逆の内容です。

しかし・・・ファーストのソネレック氏のスピーチを聞いていて,正直スタンスがよくわからない。突然30分の準備を捨て去ってゼロからやってるわけですからチームメートの話は注意深く聞かなければいけません。まったくのアドリブ。音楽ならジャズな状態。矛盾のない一貫性のあるスタンスにするべく必死でソネレック氏のスピーチを聞きました。・・・が,わからない。もう混乱するばかりでした。

仕方ないので,相手のスピーチ中に必死でソネレック氏と意見調整。
混乱する頭を何とか無理やり整理してスピーチに立ちました。

私のスピーチ内容は以下。

---------------------------------------
両チーム共,ゲイ・マリッジが認められるべきだ,ということでは一致しています。
しかし肯定側は法制度の改変によって社会に無理やり今すぐ認めさせようとしています。
否定側は,そうではなく,社会の価値観と歩調を合わせて少しずつ浸透させるのが良いと思います。
それがこの試合のクラッシュ・ポイント(対立点)です。

民族をまたがった結婚,国籍が違う者同士の結婚,宗教を異にする者との結婚など,過去にタブー視されていきた結婚も今では認められるようになっています。否定側はゲイ・マリッジも将来的に社会の承認を得られると信じます。しかし焦って今すぐ強制してしまえば,かえって社会の反発を招き逆に差別を悪化させる結果になると思います。ですから,肯定側が言うように突然法制度を先行して変えることには反対です。

今日,私のスピーチの中でお話したいのは次の4点です。
①婚姻における政府の役割が何なのか
②政府が介入するべき時がいつなのか
③現状を維持した場合に今後どんな社会になっていくのか
④肯定側の提案を採択した場合の影響

では順番にお話したいと思います。

①政府の役割

政府の役割は,市民生活のミニマム・スタンダードを確保し,その上で文化的宗教的な価値観を尊重することです。そもそも結婚とは,法的な手続きだけではなく,社会的な承認の儀式となるものです。だからこそ我々は指輪の交換をしたり結婚式を披いたりするのです。これは社会・コミュニティに私たちの夫婦としての絆を認めてくださいと要請する象徴的な意味を持つのです。こうした社会の承認の有無を無視して法律だけ変えても解決にはなりません。

肯定側は政教分離を根拠としていましたが,政教分離とは市民を無神論者にすることではありません。社会や宗教の価値観を尊重することも大切な政府の役割です。我々は社会から宗教を排除することなどできません。排除したくもないはずです。そのことは共産主義国家が壮大な実験を行い確認したはずです。宗教は社会の大切な一部です。政府の役割は宗教を無視したり,市民から取り上げることではありません。

②ではどのような時に政府は婚姻に介入すべきなのでしょう。

それは,特定の集団が搾取されている場合です。深刻な搾取が発生している場合には,私たちは社会の成熟を悠長に待っているわけにはいきません。

例えば一夫多妻制は,女性を搾取するシステムです。男性一人に対して女性は複数。強い立場にある男性が弱い立場にある女性を利用したり脅かしたりすることのできる制度です。このような慣習に対しては政府が介入し,男女が平等な一夫一婦制を基本にすえるべきです。同様に年少者との婚姻も法律で禁止されるべきです。なぜなら,強い大人の立場を利用し,弱い子供を搾取するのが年少者との婚姻だからです。このような深刻な搾取に対しては政府が介入することで防がなければなりません。

しかしながら,ゲイのカップルに関してはこのような搾取の関係がありません。確かに婚姻が認められないのはフェアではありませんが,それによって差し迫った危険や搾取の構造が生まれているわけではないのです。ですから,一夫一婦制や婚姻開始年齢の法制化の場合とは異なり,政府の介入の必要性は低くなります。

③これに対し,否定側は現状維持による徐々な変化が実を結ぶと考えています。

先ほど述べた通り,民族間結婚・国際結婚・宗教間結婚を初め,そもそも離婚や別居も長くタブーとされてきました。しかし社会は徐々にそれらを受け入れました。現在では,国際結婚をしたからといってもしくは離婚したからといって差別を受ける危険は殆どありません。同性愛者の婚姻についても,今後同じように社会的認知が育ってくることと思います。

④しかし,肯定側のように焦って急激な変化を社会に強いると,かえって反発を招き逆効果になります。

それは,人びとが婚姻の価値自体が汚されたと感じてしまうからです。結婚は神聖で社会的認知を乞う儀式であると信じている人びとにとって,教会が神の教えに反していると言っている関係まで結婚と一くくりにされてしまえば,結婚に幻滅する事は避けられません。そのような結婚をしたいという気持ちも薄れますし,既に結婚しているカップルにとっては自分たちの絆の価値が下がったかのように感じてしまいます。政府が法制度改変の形でこのような変化を人びとに強制すれば,結婚に対する侮辱が行われたとして必ず反発を呼ぶことになります。

例えば,米国のいくつかの州が同性婚を認める法律改変をおこないました。その結果,国内での大きな反発を呼び,現在米国では同性愛者の婚姻を連邦政府が憲法で禁止するという「Defence of Marriage Act」が検討されています。これは同性愛者の婚姻に対する差別を長期的に解決する上で,かえって逆に困難を増やす結果になったといえます。せっかく成熟の過程にあった社会的認知が時代に逆行した方向に走ってしまった残念な例です。敗因は焦りすぎたことです。我々はあくまでも社会の成熟を待つべきであり,法制度の改変により無理やりに社会に変化を強いるのは良くないのです。社会の意識変化が法律を変える事はできても,法律が人びとの心を変える事はできないのです。

このような理由から,私たち否定側は肯定側の提案に反対します。
--------------------------------------------------------

この試合は夢チームの勝ちでした。

私のスピーチは結構褒めてもらえて嬉しかったです。最初の2試合はとにかく構成がダメで苦労しました。構成を良くすることがこの試合の目標だったので,その意味ではかなり改善したのではないかと思いました。特に混乱した試合だったので,かなり話を整理できたことは自信につながりました。

ただチームとしては私も含め前半の間かなり混乱して,スタンスを明示するのが遅くなりました。またスタンスを共有することにも難しく感じた点が多くありました。課題も残る試合でした。

ソネレック氏は,どうやら自分のスピーチに納得が全然いかなかったらしく,やたらへこんでいました。相手のケースが想定外のものだったので仕方ないのではないかと私は思いましたが,自分に厳しいソネレック氏的には充分へこむ要素だったようでした。「この試合はコーチ二人のスピーチも含めてmasakoのスピーチが一番良かったよ」と褒めてくれながらも表情に「俺はしくったぁーーー」という悔しさがにじみ出ていました。こういう表情を見て,ああこの人いい選手だなって改めて思いました。ディベートへの愛情と向上意欲に溢れる顔でした。

Thursday, August 24, 2006

羊の道 第五話

やばい。もうだんだん忘れ始めています。
面倒だから複数の試合を一辺に書いちゃえ。

[Adjudication Test Debate]

プレトーナメントの余韻冷めざる翌日。朝,普通に本大会のブリーフィングを受けるつもりで会場に行ったら、この後のテスト用の模擬ディベート出て,とレイン氏に頼まれる。正直内心「うげっ」(笑)しかも20分後には準備始めてくれって・・・

論題は,「イランには核兵器を開発する権利がある」でした。私は肯定側。

チームメートになったのはMUDのリズちゃんとMMUの風船男。あああーーーあたし初めて組む外人選手と大舞台って大嫌いなのにぃ・・・。何がイヤってプレパがイマイチ上手くいかないのです。初めて組んでるだけでもやりにくいのに、プレパ中の会話って妙に隠喩や指示語が多くてわかりにくいんだよね。つい主体性を放棄しがちになるのよ...と文句たれる暇もなく開始。階段教室にぎっしり座る受験者と見物人にどんよりしつつ腹をくくります。私は二人目でイマイチ喋る中身が準備不足で足りない。仕方ないのでくだらない冗談で上げ底する。ああ薄い,薄いぞ内容が・・・

あとで審査員として試験を受けていたソネレック氏に感想を聞くと,「出だしの冗談を無駄と思うか、わらかしてナイスと思うかで君のスピーチの評価はかなり分かれた」とのことでした。まあそんなもんか。

しかしソネレック氏に嬉しいコメントを貰う。
「けどね,俺は凄いと思ったよ。外国語で冗談言うのって難しいよ。けどさ,masakoはconsistentlyに面白いもん。それってなかなかできないよ。」
ああ・・・そう言って頂けると嬉しいです,ホント・・・。
(これが前述の「ユーモアに関しては嬉しいことがありました」の部分)
しかし中身も充実させたかったなぁ・・・

ちなみに私の言った冗談というのは,否定側の「国際的なプレッシャーを与えて開発を思いとどまらせるべき」という話に対するもので,「いやね,ぶっちゃけそんなこたできないわけよ。つーか,できるんだったらうちの隣の国先にどうにかしてよ」という自虐ギャグ。折りしもテポドンが発射される前々日でした。試験中にもかかわらず笑ってくれた観衆がいたからまあ良いとするか。

[Practice Round (v. MUD)]

ソネレック氏抜きでもプレトーナメントと同じパフォーマンスができるのか不安になった私たち。練習試合をさせてもらうことにしました。相手はMUD。ソネレック氏がジャッジしてくれました。

論題は・・・
a) that Media should not reveal counter-terrorism measures.
b) that militarily intervene in Burma
c) that US should crack down the illegal workers

和訳すると・・・
a) メディアはテロ対策の手法をあばいてはならない
b) ミャンマーに軍事介入しろ
c) 米国は不法就労者を根絶しろ    ってとこでしょうか。

結局a)でやりました。

感触的にはイマイチの試合(うちのチームのせいだけじゃなくて両チームともイマイチだった)だったんですが,時間がないのでジャッジのコメントも聞けずにオープニングセレモニーへ。

セレモニーは国立博物館で開かれました。原住マウリ族の伝統的な歓迎の儀式を受けました。儀式では対岸にマウリの長達が座り,こちら側には大会参加者が男性前,女性後ろの席順で座りました。(これは男女差別的で大会主催者は最初難色を示したらしいのですが,マウリの伝統を結局優先したとのことでした)こちら側の最前列と次の列の端だけマウリの人が座っていて、途中なんとなく「この者たちをどうぞ受け入れてやってください」って意味かなーっと想像されるスピーチを対岸の長老たちに対して行っているようでした。ソネレック氏は有名人なのでちゃっかりマウリの方の隣に座って,内容を英訳してもらっているようでした。羨ましいぞ。

その後レセプションとして軽食と飲み物が振舞われました。結構沢山ワインやシャンパンを飲んでしまい,ほろ酔いかげんになりつつ,夢チームはちゃっかりソネレック氏を拉致。会場の隅でさっきの練習試合の感想・アドバイスなどをしてもらいました。

ソネレック氏は夢チームが勝ったと思ったとのことでした。ただスピーチの構成など何点か改善点を指摘して貰いました。酔っ払ってて覚えていられるか不安だったので,おもむろにペンとメモ帳をパーティバッグから取り出してメモり出すTPOをわきまえない私でした。

パーティが終って部屋に帰ると,おやおや?サイドボードに見慣れぬ紙が。なんとソネレック氏が練習試合中取っていたノートでした。試合終了後すぐノートをポイ捨てするソネレック氏のこと。これは私が貰ってしまっても文句は出ないのでは。しめしめ,とネコババ決定。

読んでみると・・・なんと!!!あたし77点貰ってるよ!!(Matter 31, Manner 31, Method 15でTotal 77) ご存知ない方に補足説明すると,一般に75点が大会の平均点になるようにと審査員は指導されます。が,現実的には73点や74点が平均になることが多く,76点取れていれば予選通過レベルとされます。ファイナリストの平均スコアが78とか。80点越すと,マハトマガンジーとかキング牧師レベル。その中で,日本の選手に77点というのはメチャメチャ高いのです。うきゃーーーーー大感激です。もーこれをお守りにしてあと3日間の予選に臨むわ!と大興奮でした。

しかもどうやらソネレック氏には,気に入った議論の横にチェックマークをつける癖があるらしく,読むと結構勉強になりました。いつかこちらでもご紹介できると良いのですが。

本大会初日はそんな感じで終了。いよいよ次は予選だ。
そろそろ書く気力が萎えてきたけど忘れてしまわないように頑張ろう・・・。

Sunday, August 20, 2006

羊の道 第四話

なんか予選の他の論題をどっかにやってしまったようで書けないので,2試合ほどすっとばかして突然PreAustralsの決勝戦について。

決勝のことを書く前に自分自身の選手としての特徴についてもう少し考察しておこう。というのも決勝戦はそれが諸に出た試合になった。

私の弱点は制御系等の甘さである。際どいところで「踏みとどまる」ということができない。フィギュアスケートの荒川静香のオリンピックでのトゥーランドットを思い出してもらいたい。彼女のスケートは傑出した派手な技術を誇るタイプではない。伊藤みどりや安藤美樹のように派手なジャンプで一か八かの勝負をかける選手ではないと思う。しかし隅々までコントロールが行き渡っている。一つ一つの技が控えめながら美しくかつ確実に決まる。例えばイナバウアー。あれは彼女の得意技。どうしてももう少し反りたいとか,もう少し長くやりたい,という欲があるはず。それを上手に制御して安全圏ギリギリの範囲でとどめる。無理な賭けをしない。ジャンプなら3回転を2回転にしても得点に響かないところは2回転に減らす制御をしっかりするタイプだ。結果,精密機械のような精確で繊細,美しく整った演技になる。同じディベート仲間で言うならI大からT大の院に移った斎藤さんはこのタイプの典型例だろうと思う。精確無比で綺麗に整ったスピーチをする。卓越した制御力だ。

私は明らかにこのタイプではない。同じくフィギュアスケートなら,やはりキャンデローロのようなタイプだろうと思う。何をすべきかよりも何をやりたいかが優先してしまう選手なのだ。観客やその場のノリに左右される側面も大きい。真剣勝負の真っ最中にユーモアや茶目っ気を覗かせる。必ずしも技術が低いわけではないが大味で詰めが甘い。ま,つまりはかなりのお調子者なんである。ただし,演出には情熱的なのは確かで,見せ場では後先考えずに一投入魂する。例えばキャンデローロの長野五輪のフリー演技「三銃士」では,配点は大して高くもないだろうが見せ場となったリンクを突っ切るステップのシーンに渾身。配点は恐らく高いであろうその後のジャンプはスタミナ切れになってミスを出した。たかだか8分のスピーチにスタミナの配分を考える必要はないわけだが,時間の配分は明暗を分ける。私はついノリに任せて時間をかけすぎてしまう失敗をかなり頻繁にする。基本的に自制御力が低いのだ。観客を喜ばせたいという欲が先走ってしまう。その代わり大胆さや迫力、パワーがある。荒川型の選手が絶対に出さないような奇抜で派手なクリティカルヒットが出て観客を熱狂させることもある。当たり外れの大きい選手だ。長野五輪のキャンデローロもフリーではスタンディングオベーションを浴び,金銀メダルを差し置いてエキシビションに選ばれながらも、調子を落としていたフリー以外での演技が足を引っ張りメダルの色は銅だった。私はかなりこちらの傾向が強い選手だと自分では思う。十五年も選手生活をしていれば,こうした自分の長所も短所もある程度は冷静に自覚するようになる。必ずしも自分がなりたい選手像と同じとは限らない。落胆する面も愛着もある。

さて,第四試合を終えるとすぐに手短な反省会をして,集会教室に戻る。外は小雨が降っている。戻りながら,ソネレック氏は「スピーカ・オーダについて話そう」と言った。

集会教室として使っている階段教室に戻ると,ソネレック氏はすぐさま切り出した。「セカンドとサードをチェンジするのはどうか」と。これまではファーストをヒメ,セカンドをキティ,サードを私が務めてきた。これには幾つか理由があった。

まず,ファースト。このポジションは文字通りチームの生き死にがかかっている。パーラメンタリー・ディベートと呼ばれるこのスタイルでは,議論の提出、相手チームとの差別化、対立箇所の明確化など何に関してもタイミングが早ければ早いほど評価が高くなる。重要な議論を後回しにするのは禁じ手だ。カードの出し惜しみなどもっての他。だからファーストがチームのスタンスが不明確なスピーチになれば致命傷になることも多い。ファーストに求められるのはスタートダッシュに失敗の少ないステディな選手。勝ちの要素を作ることより負ける原因を作らない確実なスタートをきることが大切だ。先述のスケートの例で言うなら荒川型が望ましい。この点で,私はファーストに向かない。しかも私は立ち上がりが遅い選手なのだ。頭のエンジンがかかるのにかなり時間がかかる。キティもここには向かない。キティは頭の良い選手だが,まだ英語力が追いついていない。スタートダッシュのダッシュ力の要となる喋りのスピードがないのだ。そこのところ,ヒメは申し分のないファーストだった。瞬発力が高く,高速の英語スピーチを予備動作なしで繰り広げる表現力もある。否定側第1になった時に即応するための経験量も充分だ。その代わり分析力や知識量で話を掘り下げるパワーと持久力には欠けるのでサードには向かない。正にスタートダッシュ向きの選手だ。ミスも少ない。先述の荒川とキャンデローロなら少々攻撃的だが荒川のタイプである。

そんなわけでファーストは確信を持ってヒメに任せていたわけだが,セカンドとサードについては今ひとつ私たちの間でも確信が持てなかった。キティにセカンドをしてもらうか,私が前に出るか・・・。キティと私の比較的似ているところは,相手の意見を聞いた後のほうが本領を発揮するところだ。キティも私と同じ瞬発力よりもパワーの選手だ。そしてキティも私も,というか夢チームは全員攻撃型のファイターである。血の気の多い三人娘。違いは,キティがシステマティックに物事を捉える冷静さをもつのに対して,私はかなりスタンドプレーが目立つ直感型だということ。あとは経験が少ない分英語での出力に不慣れなキティと比べて私のほうが多少英語力の難が小さいことだった。三人の中で知識が一番あるのはおそらく私だった。つまるところ頭がクリアに整理されているのはキティだが,経験勝負になる分野(知識量や英語力や勘)は私の方がある。時間や議論陣営の制御のようなバランス感覚があるのはキティで,クリティカルヒットになる議論を本能に任せて出す可能性があるのは私だ。

こうしたスピーカの特性に対して,ポジションにも勿論必要とされる技能の特徴がある。
セカンドというのは攻守両方をバランスよくこなす堅実さが求められる。これに対し,サードは基本的に攻撃専門,ファイター型である。と同時に,ディベートでは攻撃にこそ冷静さが,守りにこそ情熱が必要,という側面もある。奇妙に聞こえるだろうか。

まあとにかく正直キティと私のどちらがどちらを受け持つかは難しい判断だった。ただ,日本のチームの定石としては,セカンドとサードに実力差がある場合にはサードに上手な人間を入れるのが一般的だった。セカンドで空いた穴をサードがリカバーに入って埋めるという戦略だ。そんなわけで出力系の弱いセカンドをキティに,サードを私にしていたのである。

しかしソネレック氏もピエトロパウリ氏も,4試合実際に見てみた結果キティと私を交代させる案を推していた。二人が言うには,「サードでリカバーに入るのでは遅すぎる」ということだった。確かに,先述のとおりパーラメンタリー・ディベートの場合,立ち上がりが遅いチームや対応が遅いチームは評価が極端に低くなる。キティのスピーチが英語力の壁で伝わらなかった場合,同じことを私がサードで言っても審査員は「初めて聞いた」と思ってしまう可能性がある。それに加えて知識面で利があるのが私だったために議論の要になるような具体例や理由付けが私のスピーチで入ることが一再でなかった。これは審査員には「サードでは遅すぎる。もっと早く」と言われ続けた。ソネレック氏もピエトロパウリ氏も「サードは僅差の試合のマージンを大きく広げる事はできる。けれど死に掛けたチームを救う逆転はできない。」と力説した。私たちのチームは競争で常に優位に立てるような恵まれたチームではない。サードで挽回を図るわけにはいかない,と。

しかし私には二つ不安があった。一つは,エンジンのかかりが遅い私がセカンドに繰り上がってもサードの時と同じパワー(分析力)を保てるかということ。これはソネレック氏に後でホームランを沢山出すよりは数少なくてもヒットを早く打った方が良い,というような意味のことを言われた。もう一つは,攻守のバランス,特に4分のタイミングで精確に攻撃から守りに転じられるかどうかだった。何しろ制御系が弱い選手なのだ。しかしこれはジョージョー達が4分の切り替えポイントでサインを出してくれるということになった。ソネレック氏が更に言う。彼はこういう助言をする時は常に控えめな表現をする。自分の考えを押し付けず,選手達本人に選択させる大切さを知っているのだ。しかし内容は私には決定打だった。「masako個人のパフォーマンスはサードの方が良いかもしれない。しかしチームは君がセカンドをした方が機能するだろう」。私も集団競技の選手をしてきた端くれ。この言葉の意味する事はわかる。集団競技では個人よりもチーム優先。何より,チーム優先という姿勢を貫くことによる信頼感・結束力は不可欠だ。そしてその信頼感や結束力は水ものなのだ。一緒に練習を長く重ねてきた間柄でも(だからこそ,か)ほんの些細なことでこの信頼が崩れ去る時もある。だから私は負けた試合での仲間のスピーチには絶対にコメントしない主義だし,だからこそ全身全霊で「私はこのチームが好きだ」という態度でい続けることが大切だと思っている。ヒメもキティもこういったチーム・メートへのマナーがずば抜けて良い。戦略的な意味を抜いても私は本心からこのチームが大好きだった。この言葉を聞いてしまったからには絶対にノーと言うわけにはいかない。もともとキティも私も自分たちのポジションに関しては迷いがあったわけだし,コーチたちの判断力への厚い信頼もあった。助言を素直に聞くことにした。

そんなわけで,急遽,決勝戦の大舞台(?)を前にポジション変更。ドキドキしながら決勝を迎えた。

さて,決勝戦。

対戦相手はインドネシア大。予想通りだ。語学上の問題なんて殆どないチームだし,インドネシアでは多国籍企業のコミュニケーション・トレーナさえ務める実力揃い。そうやって企業に自分たちの能力を売ることで大会費用を稼いでいるというのだから頼もしい限りだ。相手にとって不足はない。

両チームから代表が一人ずつ出てサイドをコイントスで決める。私はこの手のことが大の苦手で,絶対に自分は行かない。夢チームでこの手のことで前に出て行くのはヒメ,と暗黙の了解で決まっている。今回もヒメが前に出る。サイドは我々が肯定側になった。ヒメは恐らくこの時内心「ゲッ」と思っただろう。しかし立派立派。顔には出さず不敵な笑みさえ浮かべて戻ってきた。気合充分。

論題発表。
a) Foreign companies should not comply with Chinese censorship laws.
b) Nations should uses quotas to protect culture
c) American should pay reparations for the Vietnam War

和訳するなら,上から
a) 外国籍企業は中国の検閲法に従うべきではない
b) 国家は文化保護のために割り当て制を利用すべきである
c) 米国はベトナム戦争の賠償を払うべし

インドネシア側の意向と夢チームの希望順位をつき合わせた結果,使用論題はb)となった。

準備時間が始まって割り当てられた教室に向かう。まだ歩いている内から「韓国の映画産業の話にしたいか」とソネレック氏からご下問があった。(韓国は、各映画館が一年間365日の内最低140日は国内映画を上映しなければならないという『上映日数割り当て制(Screen Quota)』を採用してきた。フランスにも似た制度がある。しかしFTA交渉で大きな障害となった。)私の返事は「why not?」(にやり)。既に好戦モードである。知識的に圧倒できる自信があるし、極東に関して無知な観客達を教育する絶好の機会だし、何より自地域の話題なら自虐的な冗談も出しやすい。観客が多くなるとエンターテイメント性を追求し始めてしまうのが私の良いところであり悪いところ。この試合は多少エンターテイメント性を上げたい,と思っていた。EFLでもユーモアに溢れた試合ができるということを証明したかったのだと思う。極東事情を観客に教え,極東の選手も自地域のネタなら圧倒的な情報量を誇ることを見せつけ,そして更に笑わしてやる。一粒で何度も美味しい試合にしようと目論んだわけだ。

そんなわけでケースは「米韓FTA交渉の結果,これまで年間140日だった国内映画への割り当てを韓国は今月から70日に減らす方向だ。我々はそれに反対する。140日大いに結構。韓国の映画産業は保護貿易のままで行け。妥協の必要一切なし」というものにした。最初は「現在決定済みの70日を下限にそれ以上は譲歩しない」というケースで考えていたが,「What a bother. Let’s go harder」というソネレック氏の思い切りの良さにより「保護貿易大いに結構。喧嘩上等」のケースになった。正しい判断だったと思う。現状の政策の推移を考えれば勿論70日下限案の方が現実的である。しかしそれでは議論の対立軸がぼやけてしまう。肯定側は保護貿易をしたいのか市場を開放してアメリカと上手くやりたいのか何なのだ,ということになってしまう。立場がどっちつかず,中途半端になる。有意義な議論をするために現実味を多少犠牲にしても主義主張のキッパリした提案をすることは大切である。最近の日本の大会の決勝はやたらと現実味ばかり重視して臆病でスカなセッティングをする肯定側が多い。相手チームとの立場の差別化がされないディベートはもはやディベートではない。それは明らかな誤りである。お勉強は大切だし,現実の政策を知っている事も重要だが,学習発表会じゃあるまいしお勉強した内容をそのまま吐き出せば良いというものではない。頭つかわな。

さて、いざ議論の準備に入る。独自の文化を保存するなんていうのは素直な議論だが安直すぎる。正直それだけで試合の後半に生き残れるとは思えない。何か捻りを加えないと・・・。と思っていたところでソネレック氏が「King and the Crownって作品知ってるか」と言う。「知らん」と答えたところ「ブロークバック・マウンテンの韓国版みたいなヤツで…」と言われてわかった。邦題が違ったのでKing and the Crownと言われても何のことかわからなかったのだ。「ああ,凄い美少年が二人の男と恋に落ちる話でしょう」と言うと「それそれ!」と。「なんでも韓国ではゲイってタブーなんでしょ。ああいう社会的に重要な作品が韓国人監督,韓国人俳優によって作られることは韓国人にとってゲイの問題が身近に感じられて良いと思うんだ。白人の男がカウボーイ姿で演じても他人事にしか見えないけど,自分と同じ外見の人間が自分の母語でゲイを演じてれば,見てる人間にとってずっとナマナマしいじゃないか。その方がawarenessの向上にずっと効果があるよ」と。なるほどね。そういえば「韓国ではゲイがタブー」云々というこの映画の解説は確か行きのカンタス航空の機内エンタメ雑誌で読んだぞ。さてはソネレック氏も機上であれを読んだな。正直「韓国ではゲイはタブー」というのはどの程度本当なのか疑わしく感じた。西側のメディアはすぐ「東洋は民主主義の皮は被っていても社会の成熟度はまだまだ自分達より低い」と思いたがる。まあ準備時間の真っ最中に「西洋メディアのオリエンタリズム」を語って仲間割れしてる場合ではないので目を瞑った。

しかしこのソネレック氏の「社会的に重要な作品」という発想が引き金になって,私も色々な韓国映画を思い出した。「President’s Last Bang」はパク・チョンヒ大統領の暗殺事件を題材にした作品だし、「Brotherhood」は朝鮮戦争についてだし、「シルミド」は金日成暗殺計画についてだし、「送還日記」は北朝鮮のスパイが韓国から本国へ送還されるドキュメンタリーだし、「38度線」は非武装地帯についてだし・・・と出てくるわ出てくるわ。「良いね,良いね」と喜んでいたソネレック氏。更に「じゃあさ、そうやって日本のような外国に韓国を理解させる上でも良いって話をしようよ。極東地域の相互理解と安定の話。昔朝鮮人を見下していた日本の大衆もそうした文化的な交流を通じて朝鮮人にリスペクトを示すようになったとか。」と提案してきた。そんなわけでヒメが韓国自身にとっての文化的・社会的意義について話し、私が国際的な話しに広げるという分担になった。

この試合の準備時間の主導権はいつもと逆転、私が事実関係を喋り,ソネレック氏がそれをまとめて議論の骨格を整える係りに。質問するソネレック氏に私が答える形になった。ちょっとくすぐったい感じだったたけど,おそらく私自身は凄く生き生きとした顔をしていたろうと思う。そういうところを見てもらえたのは良いことかな。いつもソネレック氏の垂れ流す情報を必死にメモるという一方的な関係は如何なものか。極東の選手も、極東の話を出してくれれば知識面でコーチをも凌げるということを見てもらったわけだからこのプチ下克上は良い事だったと思う。

ここまで準備したところでニヤリと笑うソネレック氏。「知識で圧倒してるって印象を与えるために韓国人俳優の名前も二三個散りばめてやれ。」と。「越後屋,お主も悪よのう・・・」とか言いそうな悪代官系の表情だ。「原宿にいっぱい飾ってあったメガネかけた韓国人男優の名前なんて言ったっけ?」と尋ねるソネレック氏に夢チームハモって叫ぶ。「ぺ・ヨンジュン!」

この試合,実は準備時間の時点から思っていたのだけど,ヒメと私が分担している議論は実は同じもの、良くて紙一重の差。芸術的・文化・社会的な側面を押し出したのがヒメの議論であり、政治・外交的な意味を押し出すのが私の議論。しかし発生過程はほぼ同じ。これをどう異なる議論に演出するのかが私の課題になった。幸い,具体例を使い分けることである程度のすみわけができた。あとは表現を多少変えればいいだけ。(これ,英語がもっと下手だった頃は本当辛かったけど,最近少しましになってきたかな。英語が母語の選手はこういうのが最初からできるんだからズルイよな・・・。)しかしそれさえできてしまえば,ディフェンドしなければならないフィールドは半分なのに評価はちゃんと二人分という費用対効果の高い展開になる。相手が散らし型の陣営を取ってきた時に一気に優位に持ち込める。多くのまともな議論が出された場合には対応する時間をディフェンドにかける時間を短縮することで稼げる。多くのくだらない議論が出された場合には,軽くいなすだけに留め,自分たちの議論の要一つ一つをかなりの時間を割いて補強できる。もちろんそれは,共通した発生過程の何処かにクリティカルな攻撃を受けたら二人分の議論を一度に失うことにもなる。ディフェンドは数少ない要所を確実に守り抜かなければならない。

この試合でその要所となる議論は何になるのか・・・そんなことに頭を悩ませている内に制限時間いっぱい。会場に移動した。入ると大きな歓声を上げて歓迎してくれる観戦者たち。なんだかやけに好意的なお客さんたちだ。しかもなんか思ったより人数が多いぞ。ほぼ満席に近い。平和チームも私たちの丁度真後ろぐらいに座っている。頭の中がいっぱいいっぱいで手も触れないけど応援してくれている感じがして嬉しい。

重要なのは,中央最前列に陣取っている韓国チームの3人。おおう。これは彼らに満足してもらえるスピーチになるよう頑張らねば。正直この瞬間に私にとってのジャッジは正規の審査員ではなくこの韓国の3人になった。私は誠実なディベータでありたい。この韓国の3人が「良くぞ言ってくれた。自分たちの想いが代弁されて嬉しかった」と言ってくれるようなスピーチをしたい,そう思った。声なき弱者に声を与える。彼らのマイクロフォンになる。それができるディベータになりたい。そういつも思っている。

ソネレック氏は私の前にしゃがむと,真剣な顔を寄せて「割り当て制が製作者のリスクを軽減してるっていう話が鍵だ。そこは忘れずにきっちり話せ」と低く指示した。私がよしわかったと大きく頷くのを見ると観客席へ下がっていった。

試合開始。ヒメの第1スピーチは,なかなか良い滑り出し。「お,いいね,いいね」と思う。この人は本当にセッティングのスピーチが上手い。これだけ喋りだしのマナーが良い選手は日本では稀有だ。喋り出しこそが勝負にもかかわらず,どうしても舌が回らずにどもってしまう選手が多い。ヒメにはその難しさを乗り越えるだけの英語力,そして何より精神的な強さがある。是非磨きをかけて貰いたいと思う。問題はスピーチの後半で,どうしてもプロセスを飛ばしたり分析が浅くなってしまう傾向がある。とはいえ,第1スピーチというのはそういうものでもある。一番準備時間が短いのだから仕方ないと言える。しかし流石ヒメ。大きなミスはやはりない。ヒメのスピーチを聞きながらキティがメモを回してくれる。「第2スピーチでは,割り当て制のおかげで韓国の映画業界が盛んだ,というイニシャルリンクをもっとしっかり説明しろ」と書いてある。なるほど。ガッテンガッテン。こういうバランス感覚の良さはキティの強みだ。いつも全体像を見て何処が欠けているかをチェックしている。ヒメが観客の拍手と共に戻ってくる。私はヒメに大きく一回頷いて見せた。

対する否定側インドネシアの第1スピーチが始まる。流石に表現力が豊かだ。しかし可哀想なほど知識不足。何だか支離滅裂なことを言っている。「韓国の文化を保護する事は,朝鮮民族だけを特別扱いすることで,国内のマイノリティ民族をかえって抑圧する結果になる」とか。韓国って朝鮮民族以外の民族が「マイノリティ民族」と呼べるような規模でいたっけ???(沢山の自治州や独立問題を抱えるインドネシアらしい発想ではある)似たような苦し紛れの細かく散らした議論が続いたあとは普通の自由貿易ディベート。消費者の選択権の話だ。観客が見たくない国内映画を無理やり押し付けるのは間違っている,良い物はそんな人工的な保護を施さなくても市場原理で生き残るものだという議論だ。韓国映画業界に限定的な部分ではヒメの議論が明確に上回っているので,この一般的で理論的な議論は五分に引き分けても試合はおそらく勝てる。しかし五分以下では夢チームが負けてしまう。一般的な理論・理念の議論は日本人審査員が思うよりもずっと国際大会では重視されている。だからまず自由貿易対保護貿易のどちらが消費者の選択を広げるか,にしっかり理論的な反論をし、残りのくだらない数勝負の議論は短い反駁でいなせばよい。余った時間で「保護貿易が国内産業を守る」という自軍の議論の要部分を韓国映画産業に特化させた具体的な形で集中補強。これで当初の目論見どおりディフェンド・フィールドの重複を利用した効果的な守りを発揮できる。計算どおり。あとはその通りにアウトプットできるかである。私らしいパワーを保ったままで,ある程度制御力も上げたい。

そんなわけで以下が私のスピーチの概要である。
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いやあ,否定側にはホント申し訳ないです。我々が韓国事情に詳しすぎて。知りすぎてて悪いですねぇ。(ここで観客少し笑う)
けど韓国人じゃないよそ者として思うんですけれど,韓国の映画を通した自己表現は,韓国人にとっても世界中の人間にとっても大切でしょう。(韓国チーム軽くうなずく)
これには文化的な側面と国際関係の側面とあるわけですけど,まず文化的な側面について反駁した後で私自身の論点である国際関係について述べたいと思います。

まず文化的な側面。
なんで韓国映画を守ること,そして割り当て制が韓国人にとって大切かです。

否定側は最近の韓国映画が盛り上がっているのは本当に割り当て制のおかげなのかと懐疑的でした。しかし韓国映画は割り当て制があるからこそ,今のような発展を見せているのです。これには4段階あります。
1.割り当て制によって俳優や監督など映画関係者の食い扶持が直接的に保証されています。(ここでなぜか左側のメルボルン大の観客達が一斉に大きく頷く)
2.より多くの韓国映画が発表の機会を得ています。映画館は140日間の枠を埋めるために沢山の韓国映画を発掘しなければなりません。熱心に良い作品を探したり,良さそうな企画に投資したりすることになります。
3.韓国映画の収益率が保証されています。とりあえず140日はハコがあるのです。
4.製作者のリスクを下げています。社会的な問題作やドキュメンタリー作品のようなものは収益が見込めるか,赤字になるかという判断をする上ではリスクの高い作品です。製作に踏み切るためのリスクは,割り当て製によって大きく軽減されています。より多くの社会的価値を持つ作品が世に出ることになります。(ここで観客席のソネレック氏,よし,とばかりに親指を立てて見せる)

こうした韓国映画業界が割り当て制から得ている利益は,ソウル市街で割り当て引き下げに反対するデモを行っている監督や俳優がいかに多いかを見れば明白です。韓国映画の成功は割り当て制の賜物なのです。

これに対し否定側は,二つの理由から韓国映画は大切ではないと述べました。

一点目は,インターネットの普及により,Web上で文化について学べるようになったから,というものでした。しかし一体何人の人が,何時間もかけてWeb上に公開された研究成果を読むでしょう。映画は,誰にでも楽しめます。映画は最もエンターテーメント性に富み,手軽で短い時間で済み,そして社会的評価の高い文化表現です。(観客の多くが頷く。ソネレック氏はやけに烈しく頷く。コーチ,応援ありがとう)

二点目は,国際化する現代において民族の独自性は時代遅れで,かえって韓国の国際化を妨げるものだというものでした。しかし韓国の皆さんは「フレンズ」を見たことがありませんか?(ここは観客も韓国チームも微妙な反応)別に割り当て制があったって,韓国人はハリウッド映画へのアクセスはふんだんに持っています。アクセスを保証されるべきなのは自国映画の方です。しかも,韓国は殆ど単一民族国家です。朝鮮文化を保護したところで抑圧される少数民族なんて特にいません。(ここで韓国チームと観客そうだそうだと頷く)

ですから,韓国映画の保護は韓国にとって必要なことなのです。

否定側は更に,割り当て制は観客の選択肢を狭め,面白くもない国内映画を押し付けるものだと言いました。しかし,それは誤りです。ハリウッド映画を観たい人は観に行けば良いんです。その選択肢は奪われていません。逆に割り当て制こそが選択肢を増やしているのです。(ここでヒメがそうだそうだと掛け声を入れる。ソネレック氏頷く)韓国映画産業が潰れてしまってから幾ら自国の映画が見たいと言ったところでそれを選択することはできないではないですか。割り当て制は観客の自由な選択を広げこそすれ狭めてなどいません。

それでは反論はここまでにして,私自身の論点「国際社会にとっての利益」に話を移したいと思います。

皆さんご存知の通り,私たちの地域,極東は安定した状態ではありません。沢山の域内摩擦を抱えています。沢山の誤解とミスコミュニケーションに苦しんでいます。(観客頷く)極東の国同士,相互理解が必要です。お互いについて学び合うことが求められています。

そのために映画は理想的な助けとなります。

例えば「President’s Last Bang」はパク・チョンヒ韓国初代大統領の暗殺を題材にしたものです。もしこの作品を見なかったら,私はパク・チョンヒについて調べてみようなどと思わなかったでしょう。

「Brotherhood」は朝鮮戦争についてのものです。日本の一般市民にとってこうした映画を見ずに民族分断の悲哀や直面する問題(ここで韓国チーム頷く)を理解することがどれだけ可能でしょうか。

ドキュメンタリーにも素晴らしいものが沢山あります。「送還日記」は韓国で数ヶ月を過ごした北朝鮮人と地元韓国人たちの心の交流を追ったものです。こうした作品を見ることで,私たちはいかに,朝鮮半島の人びとが複雑で微妙な心情とアイデンティティとを抱いているのか(ここで韓国チーム激しく頷く)学ぶのです。

もちろん韓国について薀蓄を書いている日本の学者だって山ほどいます。けれど彼らは決定的に韓国を誤解して伝える。彼らは韓国人ではないのです。私たちが誠実であろうとするなら韓国人の生の声を聞いて韓国を知るべきです。韓国人自身の韓国観を学ぶべきなのです。(韓国チーム再び激しく頷く)映画はそのために最高の手段になります。

大体,そもそも,ハリウッド映画ばかりの映画館なんて退屈な限りです。しかもそれは退屈なだけではない。国際社会をおびやかすものです。何故でしょう。

皆さんがアクション映画を見に行けば,そこにはお決まりの登場人物によるお決まりのストーリーが待っています。そこには善玉と悪役がいて、正義はいつも勝ちます。マッチョな男が悪者の手から美しい女を助ける,それに尽きるのです。そしてヒーローはきまって白人男性です。ヒロインはブロンドの美女。そして悪役はいつもミステリアス,エキゾチック,そして(少し声音を変えて)「オリエンタル」(ここで観客なぜかやたらとウケる)例えばバットマン最新作の悪役は渡辺謙でした。

これはステレオタイプを助長するものです。たまにはアジア人が善玉だって良い筈です。私たちは,ヒーローとしての韓国人を見たい!(ひときわ大きく吼える私に韓国チーム「そうだそうだ」と歓声) ですから,皆さんのご賛同を乞うのです。(観客の拍手と共に退場)


どうですかね・・・?そんなに悪くないと思うのですが・・・

一番の問題は,反論部分に5分もかかってしまい,立論部分が3分ほどになってしまったことです。制御系の弱い選手なだけに特に観客のノリが良い時はタイム・マネージメントに難が出ます。とはいえ,試合の展開的には返すべき議論は返し,守るべき議論は守ったはず。

席に戻った私にヒメは小さく頷いて寄越し,キティは自分のスピーチの準備を真剣な表情で進めていました。

さて,自分のスピーチは終った私。まだスピーチの残る他の二人のサポートがこの後の私の役目。否定側第二スピーチをしっかり聞いて,大事な議論やその反論を的確にチームメイトに伝達しなければ。

インドネシア側の第二スピーチは,メラニーという痛烈に面白いユーモアに溢れた選手が担当している。しかし彼女もこの試合は歯切れが悪い。知識面での差に焦っているのだろう。masakoみたいな日本人が観ているからといって韓国人が見たがっているとは限らない,とか,日本でそんなに人気があるなら割り当て制がなくても日本のマーケットで稼げるから平気だとか,真っ芯をつかない反論が続いた。ヒメと私は反論を書いてキティにメモを回し続ける。合間に馬鹿げていると思う議論に対してはshame!と言ってみたりもする。

さてキティのスピーチ。キティはよく状況を把握しているので,私が反論に時間を使いすぎて立論で端折らざるを得なくなったようなところを上手く入れ込んで話を進めていく。例えば日本と韓国の関係改善にどうつながるのかといったようなところは私が説明しそこなったところだ。そうした穴を着実に埋めていくスピーチだった。キティは確かに英語でのアウトプットはまだ辛そうに見える。しかしインプット,リスニングはとてもよくできる子だ。だからこそこうした状況把握をきちんとできるのだろう。しかし内容のシャープさに不似合いに観客の反応は少ない。これはひたすらに,観客にとってキティの英語を聞き取るのが大変だからだと思う。必死に耳を澄ませないとわからないから,拍手したり歓声をあげたりしている余裕が観客にもおそらくないのだ。その分,ヒメと私が反応した。良い議論だ,と思ったところは「Here, here」と合いの手を打つ。あまり回数が多いと逆効果なので多少抑え目に,しかし数回する。こうすると審査員が聞く気力を失いそうな時に頑張って聞き取らなければという気持ちを起こさせる。よく聞いてくれれば良い内容を喋っているんだぞ,というプレッシャーを与えたかったわけだ。どの位効果があったのかはわからないが,しないよりは良かったのではないかと思っている。誰よりも最初に自分自身の仕事は終えてしまうセカンド担当の私的にはそういうところに自分の存在価値を細々と見出したかったのかもしれない(笑)申し訳ない気持ちを軽くするというか・・・。

相手側のサードは混乱しているのかまとまりがなく地味な印象。リプライ(最終答弁)は対照的にかなり強引なまとめに入った。こちら側はヒメが最終答弁。相手のスピーチ中も一生懸命準備している。ヒメは話をまとめるのは得意だ。何回も話をノートに整理しなおしていき,仕上げにマーカで重要なところを確認していく。キティがメモを回す。「日本と韓国の関係の話さえ残ればうちが勝てる」。ヒメは小さく頷きながらまたもマーカを引く。私は,集客力のある良質の韓国映画は割り当て制がなくても生き残るという話と消費者の選択権の話が絡まりあって相手の持ち札となっているのが一番気になった。そう伝えるとヒメは手短にそこをどう整理するつもりなのか説明してくれた。私は両手の親指をグッと突き立てた。申し分ない整理だと思った。ヒメが大きくよしと頷く。

ヒメのリプライもとても良い出来だった。私が気にしていた部分は真っ先に華麗な整理をしてみせる。「否定側は集客力のある良質な作品が突然降って沸いたように単独で生まれると思っているようです。肯定側は違います。ある程度量が保ててこそ,その中から良質なものが生まれます。」と。質を確保するためには量が必要という簡単な理由付けで一蹴する。更にインパクトの説明ではキティの言ったとおりに日韓関係を強調する。「もともとは韓国を対等に見てこなかった日本ですが,韓流ブームのおかげで随分朝鮮文化への認知度が上がりました。相手の歴史や文化を尊重できるようになったのです」安定感のあるスピーチだった。

試合終了と同時に大きな拍手を貰った。審査員が判定を出す間,両チームとそのコーチ達は外に出された。廊下に出た私たちはすぐにソネレック氏に駆け寄る。すぐさま感想を聞きたい。ソネレック氏もドアが閉まったのを見届けてすぐに「I thought・・・」と切り出した。しかしその声はとすぐ横で同じく自チームに感想を話そうとしていたインドネシアチームのコーチ,ディロン氏のものと綺麗にハモっていた。バツの悪い顔をしてお互い距離をとる両チーム。ハハハ,と妙な笑い声まで上げる。話の内容が聞こえない程度に離れたところで両チームとも凄い勢いで話し始める。ソネレック氏は「良かったと思うよ。うちが勝ったと思うよ」と抑えたトーンで言う。私は「反論に5分も使っちゃった!」と試合中は見せることのできなかったテンパった姿を今更ながら見せる。「うん。そうね。確かに反論に使いすぎた。4分の合図をする計画はどうなったの?君達masakoを上手く誘導しなきゃダメだよ」とソネレック氏。「けど話の内容は良かった。君らが勝っただろうと思うよ。」とのことだった。正直言えば,夢チーム自身も「勝ったな」と思っていた。「交代したポジションはどうだった?」と訊いてみると,ソネレック氏は「想定どおり,こっちの方が良かったと思うよ」とのことだったので,このまま本大会も固定することにした。

部屋に戻るよう言われた。会場に戻る。ドキドキする。で,結果は夢チームの勝ちだった。やったやった。国際プレトーナメント,日本初優勝だ!ばんじゃーい。チームメイトを抱擁した後,後ろのソネレック氏を振り向いて笑顔を送る。親指をグッと突き立てて返してくれる。貰ったトロフィーは結構大きかった。その後個人賞の発表。最優秀賞のみ用意していたのだが二人が同点一位だったという。あはは。トロフィー分けようがないな,と笑ってしまった。で,発表された最優秀個人賞受賞者はインドネシアのメラニーと私自身だった。優勝しただけでなくベストディベータ賞まで貰えるとはつくづくラッキーだ。私たちは優勝カップを貰ったから,個人賞のトロフィーはメラニーに譲ることにした。大満足の夢チームはコーチも交えてトロフィーを掲げた写真を撮った。

観客の何人かが近寄ってきて観想を言ってくれる。ユーモラスで面白かったと言ってくれた人が結構いたのは嬉しかった。「なんかウケルと思ってなかったところでも結構笑いが起こっててちょっとビックリしたよね」と私たちも笑った。長身の見覚えのない男性が,私に歩み寄ると「君のスピーチはとても力強かった」と言ってくれた。ピエトロパウリ氏が「うん。落ち着いてできてたわよ」と言ってくれる。私はくしゃっと笑い「えええ.私自身はもう胃がひっくり返るような動揺を感じてるんだけど,スピーチ中は」と正直に言ってしまった。件の男性は「そんな風には全然見えない。力強くて人の心を掴むスピーチだった」と言ってくれた。凄く嬉しかった。

Saturday, July 15, 2006

羊の道物語 第三話 Road of the Sheep Vol.3

長いなー、このシリーズ。
書き終わる日は来るのかなぁ・・・

さて、昼食は「だろうと思った!」な特大サンドイッチ。
食べ終わるより早く二試合目開始。

二試合目:

韓国 対 平和チーム
インドネシア 対 夢チーム

論題: We support prisoner exchange within our region
和訳すると「囚人の域内交換を認める」といったところか。
これは、オーストラリアとインドネシアの間で行われるもの。
相手はインドネシアだから知識がありそうだが、
そんな理由で負けているわけにもいかない。
頑張るぞ、と。

さて、1試合目の反省を基に、ソネレック氏の手綱を夢チームが握る・・・
ことになっていた筈だがやはりソネレック氏は既に弾丸トークを開始している。
ちょ、ちょっと・・・話が違うんじゃないっすか・・・と思いつつ、
なんとか手綱の端でもつかもうとワタワタしました。

とりあえずまず訊いたのは、オーストラリアで執行猶予で釈放が早まる率がどの程度なのか、ということ。このディベートは基本的に裁判は全てインドネシアでやり量刑もそちらで決め、服役する場所だけが母国(ここではオーストラリア)になるというもの。けれどオーストラリアで執行猶予がやたらとつくならインドネシアが出す量刑は骨抜きになってしまいます。これはソネレック氏曰くかなりの確率で仮釈放されるとのことでした。

次の質問は、麻薬不法所持のように死刑判決が出る(東南アジアは麻薬には厳しいのです)犯罪だった場合、オーストラリアに連れて帰ってきてオーストラリアで死刑にする、というのはあり得るのかというもの。オーストラリアは死刑を廃止したので、もしするなら倫理上の議論が巻き起こるはず。ソネレック氏のこれに対する答はノーでした。死刑の場合は本国へ送還することにはならないだろう、と。

ここで、具体的な事例として有名なのは、コービーやミシェルのケースだとのことでした。しかしこれらはどちらも麻薬不法所持の例。そこがちょっと気になりました。

とりあえず①抑止力が失われること、②主権・裁判権の尊重 について話すことにしました。

肯定側インドネシア大は、インドネシアの刑務所のHuman Right Recordが悪いことを説明。拷問が行われていたり適正手続き(due process)が守られていないのだとか。だからインドネシアの刑務所で服役させるのは人道問題だ、と。更にオーストラリア人を守るのはオーストラリア政府の義務だと主張しました。第1スピーチはまあ、ほぼ想定内の内容でした。

問題は第2スピーチ。国際組織犯罪の元締めを裁く時に、捕まえた子分がオーストラリアにいた方が証言させやすい、という謎の議論が登場。・・・・・・?どういうこと?普通に召還するんじゃダメなの??

なんだかよくわからないままにドンドンドンドン細かいよくわからない議論が増殖し始めて、焦点が絞れませんでした。あと私はまたもや構成がダメ。何故上手くいかないのかよくわからないけど兎に角ストラクチャーに苦労しました。

結果はインドネシア大の勝利。これで1-1となりました。

羊の道物語 第二話 Road of the Sheep Vol.2

7月1日。二日目。

この日は3試合練習できることになっていた。
日本では一日に4試合も5試合もこなしてしまう我々にとっては、
あまりにもゆるゆるなスケジュールである。
とはいえ、豪亜大会の試合形式は世界大会と全く同じ長さ。
一試合一試合がやたらに長く重い。
朝から気合を入れて、と言いたいところだが
朝に弱い私はいつも通りギリギリまで布団の中だ。

寝ぼけ眼でホテルの朝食に降りてみると、
スクランブルエッグ・ベーコン・ソーセージ・トマトの水煮・ハッシュドポテトがある。
スクランブルエッグの色は健康そうな黄色。
何よりトマトがあるのが嬉しい。
本大会中もこれと同じものが出ますように・・・。

素晴らしく礼儀正しく5分前行動な平和チーム。
謝りつつ大急ぎで朝食をかきこむと、
集合場所のバッグパッカーズの宿へ6人で向かった。
昨夜往復して道を覚えたのは私一人なので、
方向音痴な私が珍しく先導を務める。
朝の冷たい空気の中で、私は奇妙な空虚感を感じていた。
あれが何だったのか、今も言葉にならない。

左手には古くて大きく立派な駅舎がある。
キティはすかさず写真を撮っている。
この駅舎は昨夜はライトアップされて夜空に浮かび上がっていた。
それは華やかで美しくて、それでいて妙に孤独な姿だった。
朝はこの建物の個性を奪い、代わりに慰めを与えているように思えた。

バッグパッカーズに着く。
ロビーなのか売店なのかわからない一階を通り抜けて
二階のラウンジへ。後ろから「本当にここですか?」という声が聞こえる。
確かになんだか学生寮の奥に迷い込んだような空間だ。
しかし安宿としてはかなり手入れが良い方だし、
こういうところは案外居心地は良いものだ。
よそ者だという気持ちを持たせないから。

ラウンジではレイン氏やピエトロパウリ氏たちがまだ朝食の真っ最中。
ディロン氏は共有端末でネットを使っていて挨拶にも生返事だ。
こういう時に「もう集合時間じゃないの?」「他の皆はどこ?」
「私たちどうしてれば良いの?」などと所在なさげにするのはNG。
基本的に自分自身が快適にしていることが気配りすることより大切な場だ。
ここは日本じゃない。誰も私たちに余計な気配りをすることなど求めていない。
手近なソファに深く身を沈めてお喋りでもしていることにした。

ニューズウィークをまわし読みしたり、
どんな議題が出そうかなどと雑談していると、
ジョージョー達はまたも写真を撮りはじめた。
こういう細やかさは自分にはないので、少し羨ましく思う。

ここでソネリック氏登場。
ピエトロパウリ氏は「鞄取ってくるー」と部屋へ戻った。マイペースな人である。
レイン氏が階下に集合と言うので降りてみると本大会責任者のビショップ氏がいた。
どうやら本大会の会場でもあるビクトリア大を今日も使わせてもらうらしい。
ビショップ氏の案内でぞろぞろとすぐ傍の大学の建物へ向かった。
先ほどの駅舎の隣のビルである。
なんでもメインのキャンパスは街の反対側にあるということで、今回は使わないらしい。

なーんだ、こんなに近いのかぁ、と小さい街主催のメリットを満喫。
横断歩道を渡っていたらディロン氏がキョロキョロそわそわしている。
そう言えばインドネシアのチームがいないぞ。
インドネシアチームもバッグパッカーズに泊まっている筈なのだが、
ラウンジに顔を見せなかったのだ。
「彼らの部屋番号わかる?」と呼びに戻ろうとするディロン氏に
ピエトロパウリ氏曰く、「フロントで聞いてみたら?」
「Ah, that's very helpful. Thank you.」というディロン氏の口調が可笑しくて、
ジョージョー達も私もつい笑ってしまった。
確かに言わずもがなな助言だし、そもそもバッグパッカーズに
朝早くからフロントにスタッフを張り付かせるような人的サービスがあるわけもない。
ピエトロパウリ氏の助言どおりにできるなら苦労はない。
こういう軽妙でちょっと斜に構えた受け答えはディロン氏らしくてチャーミングだ。

この手の会話に含まれるユーモアというのは言葉の壁を感じるシーンでもある。
日本語なら普段気にも留めずにしているような気の利いた受け答え。
これが英語だと出来ない時がある。
それはやたらとイライラする経験だ。
こうしたなんでもない会話こそが日常自分の個性を最も表現している部分で、
それを封じられてしまうのは社会性の羽をもがれた気持ちになる。

会話の妙を楽しむには英語力と共に精神的なゆとりがいる。
リスニングに懸命になっている状態では難しい。
肩を楽にして会話に溶け込むには慣れが必要だ。
聞き取れなくても聞き間違えてもかまやしねーさ、といういい加減さを要す。
聞き間違えて変な返答をしても大丈夫な相手だ、という安心感も助けになる。
そもそも聞き間違えなんて日本語でも日常茶飯事だと割り切るのも良い。
そういえば今回、英語でのユーモアに関しては
ちょっと嬉しいことがあったのだけど、それはまた後で。

はてさて階段教室に入り、雑誌を読んだり予想論題について話しつつ待つ。
待つ。
・・・。
待つ。
・・・・・・。
待つ・・・って他のチームどこっ??

韓国のチームはおろかインドネシアのチームさえ来ないぞ。
主催者はどうやら韓国チームのホテルに電話しようとしているようだ。
ちなみに我々と同じホテルである。
「韓国の子達は昨日見かけたんだけど部屋番号は忘れちゃった」と言うと、
複数の顔が一斉にこちらを向いて叫んだ。
「ああ、じゃあニュージーランドにいるのは確かなのね!!良かった!」

・・・・・・・・・。おい、まて。
その位誰か確認しておいて欲しいぞ。
放任もここにきわまれりの行き当りバッタリなマネージだ。
もしこの国に着いていなかったらどうするつもりだったんだろう。

しばらく始まらなさそうなので、
ヒメと私は、ピエトロパウリ氏たちと珈琲を買いに行くことにした。
キャンパス内の売店は土曜日なので開いておらず、
結構歩いて珈琲屋を見つけた。私はホットチョコレート。甘いのが幸せ。

帰ってきてみてもまだチームが揃っていない。
いい加減もう日本人同士で練習しようか・・・と思ったところで
他のチームたちが到着。やれやれである。

さて、肝心のディベート。
本大会のルールでは3つの議題が提示され、
その中から一つを対戦相手と選択することになっている。
が、この準備大会の最初の2試合は1議題制でやることになった。
ちなみにこの準備大会の名称は、Pre-Australs ESL Invitational。
Free Debate Instituteという団体が主催。
この団体、文句なしの豪華面子をメンバーとしている。
なので準備大会の癖に審査員は超世界大会本戦級である。
いいんだろうか・・・。

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第一試合:
 
平和チーム 対 インドネシア
夢チーム 対 韓国

論題は「We should allow surrogacy for profit」
和訳すると「営利目的の代理母出産を認める」といったところか。

正直古典の初心者向け論題である。
一瞬幼稚園児扱いされたような憮然とした表情を浮かべてしまった。

さて、この大会のユニークなところはコーチの存在である。
各チームに世界大会決勝戦級の選手がコーチとしてつくことになっている。
通常3人1チームのところ、コーチも含めて4人。
リプライ・スピーチ(最終答弁)も含めて4回のスピーチを一つずつ担当する。
コーチにどのスピーチをさせるかは各チームの自由である。
但し、翌日の第四試合と決勝戦だけはコーチはスピーチできない。
夢チームのスピーカ・オーダは、ヒメ・キティ・私の順がデフォルトだった。
豪亜大会のフォーマットが始めてなキティには肩慣らしをしてもらうべく、
このPre-Australs1試合目はヒメ・ソネレック氏・私と話し、最終弁論をキティとした。
対する韓国チームは帰国子女ばかりのチームで語学のハンデはあまりない。
但し所属ディベート団体自体が比較的若く、彼らもディベート歴はあまり長くない。
流暢で美しい韓国と、海千山千の技巧をかけた夢チームの闘い
・・・となる筈であった。

論題発表後の準備時間は30分。
割り当てられた部屋に移動し、大急ぎで作戦会議を行う。
ソネレック氏は既に弾丸のように話し始めている。
つくづく頭のスタートダッシュが速い人だ。

結局、肯定側である夢チームは、
「約9ヶ月分の給料である2・3万ドルを代理母に支払う」という提案をまとめた。
提案理由は3点。
①女性の身体自決権(Bodily Autonomy)と代理母にとってのメリット
②不妊カップルにとってのメリット
③女性のライフスタイルの解放

分担は、①をヒメ担当、②と③をソネレック氏担当とした。
①や③についての話の掘り下げ方は、さすがソネレック・マジック。脱帽。
なるほどねー。そうやって話を具体化したり重要性を説明するのかぁ・・・。
自力でできるようになりたいなぁ。

内容はともかく、この時点で準備時間の使い方に大きな問題が発生。
ソネレック氏がくれる情報量が自分の処理能力よりも多すぎる。
ついて行くのに精一杯で準備時間終了時のノートがまっさら。
正にタブラ・ラサ。のおおおおおお。そして容赦なく試合は始まる。

蓋を開けてみると・・・・・・
あれ?ヒメが話してるのBodily Autonomyの話じゃなくね??
どっちかって言うとソネレック氏が話すはずだった部分に食い込んでるぞ?
とか思ったらソネレック氏と視線が合った。
どうする?と目で尋ねると、サクッと「その議論は捨てよう」という返事。
思い切りが良いなぁー・・・

私自身のスピーチは、内容はまあまあ。特に問題ないがパッともせず。
それよりも何よりもマナーに覇気がなく、構成がダメダメ。ぬああああ。
チーム全体としては、なんだかバラバラな印象。
打合せと分担が違ったり、お互いに矛盾しあう表現が入ったり。うぬう。

この試合はそれでも結局夢チームの勝ち。
イマイチ不完全燃焼ながらとりあえず勝ちは勝ち、と深い息を吐く夢チーム。
というのもソネレック氏は負けず嫌いなのだ。
そんな我々の胸中を知ってか知らずか、
ソネレック氏はすぐに隣の部屋に夢チームを誘導。
反省会である。この勤勉さが素敵。
気分は「先生、どこまでもついていきます」なスポコン的マゾ。

(羊の道物語 第二話 おわり)
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羊の道物語 第一話 Road of the Sheep Vol.1

帰国してからバタバタしていて随分経ってしまいました。
ここの更新も随分久々。
忘れる前に色々時系列順にメモろうと思います。

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あらすじ

世界大会の次に競争が厳しいと言われる豪亜大会。
試験日程の関係もあり日本の大学には敷居が少々高め。
日本からは二つの大学が一チームずつ送ることとなった。
両チーム合同で直前特訓を受けるべく2日間早く現地入り。
そこはロード・オブ・ザ・リングのロケ地となった某国。
人間よりも羊の方が多く居住していることでも有名である。
首都とは思えない小さな都市で、
K大チームをソネレック氏が、I大チームをピエトロパウリ氏が、
直前の練習の専属コーチとして待ち受けた。
(各コーチの和名から、ここではK大チームを「夢チーム」、
I大チームを「平和チーム」という恥ずかしい渾名で呼ぶこととする。)

言葉の壁やメディアの壁に阻まれながら、
前人未到の道なき道を掻き分けて進む羊のような日本選手たち。
このお話は、そんな彼らの通った獣道、羊の道をたどるルポ・・・ということで。

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主な登場人物(日本人は渾名です。わかる人にはわかるだろうけど)

ピエトロパウリ氏: 和名、瑠知安。平和チームのコーチ。MUDチームの選手でもある。
トモ: 平和チームの黒一点。
キャン: 平和チームのおキャンな元気キャラ。 
ママ: 平和チームの癒し系キャラ。

ソネレック氏: 和名、帝夢。夢チームのコーチ。MADチームの審査員でもある。
ヒメ: 夢チームの楽観キャラ。渾名は姫様のような振る舞いから。
キティ: 夢チームの根性キャラ。出発2日前にピンチヒッターに入ったツワモノ。
私: 夢チームのババキャラ。ヒメとキティを合わせて「うちのジョージョー」と呼ぶ。

リンチ氏: ソネレック氏の恋人。MUDの選手。
ディロン氏: インドネシアチームのコーチ。MADの選手でもある。
レイン氏: 本大会の副審査委員長であり、準備大会の主催者。
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6月30日、午後到着。

空港で即効MMUのチームと鉢合わせる。
今回は若い衆しかおらんのだなと思ったら、ラジェンドラ氏はまだ機上、
バラビジェンドラン氏はあそこだと指差す。
空港の床に転がる足だけが見える。
・・・・・・ローガン・・・・・・床で寝んなよ・・・。
とりあえず挨拶を交わしているところに、これまた審査委員長のモア氏登場。
副審査委員長のレイン氏を待ってるんだって。
なんか眠くて頭が回らないのでヘンテコリンな挨拶をして辞す。

我々6人はとりあえずバンでホテルへ。
訛りの強い運転手のおっちゃんは、明日から日本の高校生のガイドだと言う。
小さな港町に着いた。どうやらこれが首都らしい。いやはやびっくり。
薄暗くなりつつある空を見上げつつホテルチェックイン。
便利そうなロケーションに一安心したがこれには落とし穴がある。
それはまた後で。

とりあえず一部屋に6人集まってみる。
主催側のお気楽なマネージにより、
明日からの訓練の集合時間はおろか集合場所も知らされていない。
どうせこのホテルに皆泊まってるんでしょ、と思ったらどうやらそうではないらしい。
誰か情報を持っていそうな人からブリーフィングを受けないことには
にっちもさっちも行かない状況である。

「着いたら連絡しあおう」と約束していたピエトロパウリ氏に電話。
つながらじ。
仕方ないので氏の泊まるホテルにも電話。
おらじ。
何処で遊んでるの、ルシア。

仕方ない、とりあえず夕飯を食べよう、と出かける。
が・・・、何もない!!!
レストランは、パブは一体どこだ!!??
何故金曜日の18:30に何処の店も閉まっているのだ??

散々歩いて漸く見つけたのは中華の店。
入ってみると8.5ニュージーランドドルのディナセットがあるなど、
リーズナブルなお値段。味もなかなか。
幸せいっぱいの私たちは「いざとなったらここに来ることにしよう」と決める。
まさかこの時はこの中華料理店に毎日通いつめることになろうとは知らない。

食事中にソネレック氏から電話をもらう。
総出で一緒に飲みに行くことに。
優しいことにリンチ氏と2人でホテルまで迎えに来てくれると言う。

約束の時間20:00の5分前にノックの音。再会の抱擁。
恒例のチューハイをお中元に渡す。
ヒメと私は何度も面識があるのでリラックスしているが、
他の日本勢はちょっと緊張しているようだ。
・・・と思ったらピエトロパウリ氏からSMS。
こちらも一緒に飲みに行こうと言ってくださっておる。
しかしどうやら同じパブのことみたいだぞ。なーんだ。
じゃ、行こう行こうということになる。

リンチ氏の先導でパブに向かうと、
そこにはMUDやMAD、MMU、そして主催大学の人たちがゾロゾロ。
皆さん既に出来上がっていらっしゃる。
まだ早いだろ、と心の中で大きく突っ込む。
無事ピエトロパウリ氏やディロン氏、レイン氏とも再会。
嗚呼会えて嬉しい。たった半年なのに随分長いこと会えなかったみたいだ。

飲み始めてすぐ、ソネレック氏が「あそこに座ろう」と日本勢を誘う。
彼を囲んで座って、準備大会・本大会の下情報をブリーフィングされる。
最初は酒の席のたわいもない話がメインだったのだが、
すぐに試合準備の打合せに入る。まことソネレック氏らしい。

一番時間を割いて話したのはWTOの過程差別禁止条項について。
WTOには、製造過程の違いを理由に関税障壁を設けてはならないという原則がある。
「Product Not Process」を基準にする、というものだ。
これは自由貿易促進には良いことだが、
環境問題や労働条件の低下に対抗するためにはしばしば問題となる。
ソネレック氏は、夢チームの選手やたまたま居合わせたMUDチームの若い選手に、
何故環境・労働問題に悪影響なのかを説明するよう執拗に要求した。
一度説明を聞くとキーワードを提示し、より解り易く簡潔にするためのヒントをくれる。
そしてもう一度説明するよう要求するのだ。
酒場でビールを飲みながらまだスピ練させる。
この生真面目さがソネレック氏の持ち味であり、可笑しくも愛らしいディベキチぶりだ。
言葉の壁のためシャープな表現をし損なう傾向がある日本チームにとっては
これほど有難いことはない。無二のコーチだ。

私は延々とソネレック氏のディベート談義に耳を傾け、
その場でスピーチ練習までおっぱじめ、その合間に旧友達と乾杯し・・・
というのを続けていたわけだが、
平和チームの面々はどうやらフライトの疲れが残っていたらしく、
早めにホテルへ帰っていった。
ジョージョーたちもしばらくするとそわそわし始めた。
そこへディロン氏の一言。「宿で飲みなおそうぜー」

ていうかあんたの宿どこ?と思わないでもなかったが、
どうやらそこが明日の朝の集合場所らしいので行かないことには大弱りだ。
仕方ないな、じゃあ付き合うか、と思ったら日本勢は総勢引き上げ。
私一人になってしまった。やれやれ、いつも通りな展開だ。

ピエトロパウリ氏とジョージョーを送りがてら一旦私たちのホテルまで歩いた。
ついでにお土産に持ってきた日本酒を二次会に差し入れようということになった。
今回持参したお土産は、ソネレック氏にチューハイ6本、ピエトロパウリ氏に塗りの三段重に入ったお菓子、ディロン氏と主催大学にそれぞれ日本酒一本ずつである。一応個々人の好みに対応した形にしたつもりである。主催大学の分はその場にいたモア氏に手渡したところ、なんだかとっても喜んでくれて持って来てよかったなぁと思わされた。これは後日改めて持って来て本当に良かったと思わされるシーンがあった。

着いてみると、どうやらホテルのラウンジは飲酒厳禁らしく、皆は飲まずに酔う二次会に興じていた。こんなことならもう一・二杯飲んでからパブを出るのだったと思ったが後の祭りだった。

皆アルコールもなしに飲み会ゲームをしている。
たとえば「ネバー・エバー」という古典的なゲームは、丸く座って順番に
「私は今まで一度も○○したことがない」と言う。
座中の人で○○したことがある人は飲まなければいけない。
誰も○○したことのある人がいなければ、言った本人が飲まなければならない。
そういう単純なゲームである。
しかしまあ若い人間の集まる飲みゲームの常で、どうしても下品な方向に行きがちである。
例えば「私は今まで一度もアンジーの彼と寝たことがない」なんぞというのは、
座中の特定の人間をターゲットとしたもので、こういうのがアンジーのいる場で言われるのだ。
しかも誰が飲むことになるのかは皆知っている・・・(汗)エグ過ぎないですかね・・・
ていうか私はこの手のゲームが苦手で、早くもギブな気分でした。ギブ、ギブギブ。勘弁して。

素面で参加するにはテンションが高めな集まりだった上、長かったフライトの疲労がたまっていたので、お喋りやゲームの騒ぎが一心地ついたところで早めに引き上げた。とても治安が良い街とは聞いていたが、女の夜中の一人歩きはやはり恐いものなので、できるだけ明るい道を携帯を握り締めて自分のホテルまで歩いた。

歩きながら色々思った。
翌日からのこと、本大会のこと、
直前にメンバー入れ替えのあった夢チームのコンディションのこと、
これからの自分のディベートとのかかわりのこと、
出国直前に慌しく出してきた原稿のこと、
そしてこれまでのこと、これまでのこと、これまでのこと。

考えても仕方ない。
早く試合がしてみたい。

そう夜空を見上げて思った。

(羊の道物語 第一話 おわり)
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