Monday, July 02, 2012

久しぶりに。【Vol.4】

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4. 【倫理編②】言葉によるリンチ
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昨日の決勝に限らず、耳を疑うような発言を聞いた時に、観客が逆に喜んでいたりすることがあって本当にゾッとする。そういう集団は言葉で他者をリンチしかねない。(この辺りの詳細は拙著「コミュニケーション摩擦と社会公正:国際ディベート大会での調査から」に。)恐ろしいディベータ―と聴衆の共犯関係だ。狭いコミュニティの内輪同士の熱狂は時に暴力的だ。

その暴走に大会の進行を中断してでも敢然と異議を唱える。

それができるのが2001年のIDEAスタッフ達であり、Alexandraさんはじめとする良識ある審査員諸氏だった。

あれには本当に感動した。

駄目ですね。私にはまだあれはできない。情けない。
審査員として座っている大会の決勝戦で、最終スピーチ終了直後票も集める前にスックと立ち上がったあの姿を私はきっと一生忘れない。
「こういうことを言うために我々はディベートしているのか。囃し立ててた観客の姿に私は心が凍りついた。」とそう毅然と彼女が言ったとき、私の隣に座っていたガキは彼女への憎悪をむき出しにしてグチグチと言い訳を隣の席に呟いていた。でもそのガキは立ち上がって反論しなかった。おそらく彼女の方が正しいと心の何処かでわかっているから。
それでもいい。今納得いかなくても、時間をかけてゆっくり理解できれば、分からないままよりはずっといい。いつか分かった時に、教えてくれた彼女に感謝できれば尚更いい。

コミュニティには彼女みたいな人が要る。
私はまだ全然彼女のようにはなれない。
でも彼女みたいな人が要る。
あの時のIDEAスタッフ達のような人々が要る。
本当は今すぐ要る。
でも、今が駄目でも、いつか日本にも現れると良い。
それで初めてAcademic Debate(学習・教育を目的としたディベート)が本来の姿になる。

丁度今、日本の高校生たちがメキシコで開かれている今年のIDEA YFに参加している。勝っても負けても良い。IDEAから学べることはそんなことよりずっと大きい(そして残念ながらWSDCではそれがイマイチ学べない)。是非その心を、「優しくなるためにディベートするんだ」って気持ちを掴んで帰ってきてほしい。

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