Sunday, November 18, 2007

愛すべき者達 The Lovable

はふう.
シーズン真っ盛り.

高校生たちは全国大会にむけてスパートしてるし,
大学生たちは世界大会に向けて練習中だし,
社会人たちは忘年会に向けて余念がないし(って,おい).

色々な世代・専門・熟練度の人々の試合を日替わりメニューのように見ている中で,
私にとって「愛すべきスピーチ」とは何か,改めて考えさせられます.

ユーモラスなスピーチ?
真っ正直にガチンコにかみ合ったスピーチ?
華麗で秀逸な修飾に溢れたエレガントなスピーチ?
皆さんにとってはどんなでしょう?

私の答えは随分前から決まっているのですが,
その言葉を私に教えたコーチの性格のためか,
口にするのが躊躇うような代物でして・・・
なんでもっとマシな表現を教えてくれなかったものか,
何とか上品に同じことを同じインパクトをもって伝えられないものかと
模索している次第です(笑)
困ったことにオリジナルが相当言い得て妙な言葉なので対抗馬が見つかりません.

まあ,その・・・・・・・・・・コーチの表現を借りると・・・・・・
「インテレクチュアル・オーガズムをくれるスピーチ」ということになります.
(あーあ,書いちゃった.何か大きな越えてはならない壁を越えたような気がします)
(ちなみにこの表現はTではなくてPコーチのものです.いかにもでしょ?)

でも実際あるんですよね,
頭の芯がジーンとするような,
「あぁーーーーーー,そうだったのかぁーーーー」
と得心する瞬間って.
しかもその後その感動の余韻が長く続いたりして.
で,確かにそういう瞬間を求めて懲りずに足を運んでいるような気がします.

ハラハラ息をつめるような巧みで気迫のこもった鍔迫り合いも楽しいし,
ダイナミックなどんでん返しが続くガチンコ対決にも血が沸くわけですが,
「あぁーーーーー,そうだったのかぁーーーー」は身も心も蕩ける感じ.
そのアーギュメントに恋してしまいますね(笑)
そういうアーギュメントを自分に複数回聴かせてくれた選手のことは,
生涯嫌うことが出来なさそうな気さえしますし,
多少次のディベートが下手でもまた足を運んで聴きに行こうと思わされます.

ここ最近やたらと「勝つこと」に拘ったスピーチを聞き続けて,
ちょっと心配になりました.
あの「ジーン」をちゃんと皆経験できてるのかな・・・
あの恍惚感を知らずにトロフィーのためにディベートしてるなら勿体無い気がします.
(ってこの台詞怪しげな愛の伝道師みたい・・・)
コーチや教員側の方が,良質な議論を味わう恍惚感の存在自体知らなかったり,自身経験なかったり,学生に伝えようとしてなかったりするように見えると・・・「勝つことが全て」的な応援をしていると・・・すごーーーーく,不安になってしまいます.

確かに聴衆に恍惚感まで抱かせるようなアーギュメントというのは
そう頻繁にお目にかかるものではありません.

まず,幾ら目新しくて感心するような議論でも,
そのディベートでイレレバントなら恍惚感は得られません.
つまりちゃんとクラッシュ(crashやcrushではなくclash)していることが前提になります・・・
clashしてないとcrushしようがない,みたいな・・・(笑)
なのに,そもそも上手くclashしてる試合自体なかなかお目にかかれなかったりします.
なのでクラッシュが期待できない大会を審査するのは本当に辛いです.
10中8,9駄目だろうと思いながら1時間ジッと聴かなきゃいけないわけですから・・・
(これがそもそも論題がclashしようがないようなものだと怒り心頭です.
これじゃ出るホームランも出ないじゃん!!!みたいな・・・)

clashの仕方はTが散々教えてくれているわけですから,もう今更でしょう.
教わっても実行に移せない私達が情けないだけ.

ではcrushは・・・あの「ジーン」はどうやって出来ているのか.
私としては,「試合の中の重要な局面において,以下のどれかが高い妥当性をもって提示された場合」ではないかと思います.(以下の「新しい」は「聴衆がそれまで知らなかった」の意)

1. 新しい情報/事象
2. 事象の新しい解釈
3. 事象同士の新しい関係性(因果関係とか類似性とか・・・)
4. 旧知だが忘れていた1-3の再発見

で,番号が大きくなるほど,「ジーン」とする割合が大きいような気がします.
これを聴かせて貰えると百万回見たことある論題でも「今日来て良かった!!!」と心でガッツポーズです.

何とかこれが3回に1回くらいできる「ヒット・メーカ」になりたい!!
聴衆をあの知的な恍惚感で酔わせるようなスピーカになりたい!
聴衆に「今日来て良かった!」と思ってもらいたい!!

・・・わけですが,これはホント相当な精進がないと難しいように思います.
・・・それでもたまにそういう人がいるから辞められないんですよねー・・・はふう.

自分のスピーチが小器用になっていくとき・・・
思い出したい情熱です・・・

浅田真央ちゃんがパリのショートプログラムで,
1位になったにもかかわらず,ミスをしたことで悔し泣きしていました.
あの気持ちが分かる気がしました.
勝つことよりも,観客を魅せることに成功するほうが,達成感が大きいように思います.

でもその情熱が過ぎるとはた迷惑なスピーカになってしまうことも・・・
いわゆる・・・紙一重っていうんですか・・・?頓珍漢っていうか・・・?
躍動感と恍惚感と精密さへの驚嘆を観衆から引き出すには
不可能なほどの完璧さと大胆さが同時に求められます.
それを狙うばかりに分に過ぎた賭けをしてしまう場合もあります.
私はこの失敗がとっても多い.(最近少し良くなりましたけど)
そしてこの手の失敗は傍目には相当イタイ・・・
いつぞや書いたとおり,私はどこまでもキャンデローロ型なんですよね・・・
自戒しておかねば・・・

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