個別的自衛権 Right to Individual Defence
前回の『美しい国へ』の感想文にhiloki君からコメントを頂戴しました。
Hiloki君,コメントありがとう!! (^v^)/
それで,これは大切な話題だと思ったので,段階を踏んで確認してみたいと思います。
何かおかしいと思うところがあったら是非言ってください。
---------------------------------------------------
1.国家とは何か
国家は国土と国民からなります。
土地を全く持たない国家も,無人の国家もありえません。
2.主権(国の自治権)とは何か
主権(sovereignty)とは,国土とそこに住む国民とを守る/治める権利です。
何を以って守る/治めるのか。法治国家では法律ということになります。
3.国内法はどこで有効か
そのままですが,国土内です。国土外には適用できません。
日本人がフランスで犯罪をおかしたとして,日本は日本の法律で裁くことを要求できません。フランス国内で起きた犯罪は,フランス国家/警察が対応する権利を持ちます。治外法権がない,わけです。逆に言えば,フランスはフランスの国土で起きた事件についてフランスの法で対処する権利を持っています。
4.外交特権とは何か
元首と外交使節(現地の国家が認めれば軍隊も。在日米軍とか)に,例外的に認められる治外法権のこと。領土外であっても,現地の法律に従わなくて良い(=自治権を侵害して良い)権利です。ですから,在外日本大使館の中は日本の法律に従い,外交官の携行物も入管審査で中身を改められることがありません。
外交特権は,国交を結ぶ際に,普通は互恵的に取り決められます。
さて,『美しい国へ』で述べられている「テロリスト」とは,北朝鮮の外交官を指しているのでしょうか?答えはNoです。日本と北朝鮮は国交正常化を行っておらず,お互いの国に大使館を置いていませんし,外交官の外交特権も発生しません。ですからこの「テロリスト」は日本領土における治外法権を持ちません。
5.個別的自衛権とは何か。
主権を武力を以って守ることです。つまり,領土や国民,それを治める法律が他国に侵害された場合,侵害する者を武力を以って領土から排除することです。
現在の政府見解は,憲法九条は,
①個別的自衛権 の保有/行使を認めており,
②集団的自衛権 は保有するが行使を認めておらず,
③攻撃する権利 は保有/行使共に認めていない, というものです。
つまり,九条の禁じる「交戦権」は,「集団的自衛権」と「攻撃する権利」,ということになります。(ちなみに私はこの政府見解はリーズナブルだと思っています)
『美しい国へ』で述べられている「日本を攻撃するために,東京湾に,大量破壊兵器を積んだテロリストの工作船がやってきて」という状況では,このテロリストは,
①日本の領海を侵犯している 上,
②日本の法律に違反しています。
ですから個別的自衛権を行使できるケースです。
ですから,「こちらから武力を行使して,相手を排除することは出来ない」というのはウソです。
---------------------------------------------------
私はこのことを中学3年の公民で学びました。
忘れもしない私の初めてのディベートは,
1993年4月,「選択社会科 C(公民)」の授業ででした。
論題は自衛隊のPKO派遣の是非でした。
湾岸戦争が終結し,その結末に社会が憤り,自衛隊の海外派遣がすぐに立法化され,
次の年には自衛隊はカンボジア入りしました。
あのディベートはその熱冷めやらぬ頃のことでした。
No comments:
Post a Comment