Friday, June 02, 2006

【Book】アフォーダンス Affordance

【本】佐々木正人.1994.『アフォーダンス: 新しい認知の理論』.岩波書店.

アフォーダンス、というと大抵の人はこの短い冊子から入るみたいです。私も学部の頃にこれを読みました。生協で平積みされていたような気がします。なるほど、大変解り易く平易な言葉で書かれています。

もちろん、ギブソンの圧倒的なまでの観測データに触れたければ、この本ではあまりに物足りないでしょう。けれど入門用というか、発想だけ知りたい場合には良いんじゃないでしょうか。

ラディカルなギブソニアンは「脳は体内ではなく環境にある」とまで言うそうですね。うーん・・・まあ確かに行為を環境が誘導している以上、そうとも言えるでしょうか。もちろん合理的に考えて、人間も環境もどちらかが全てを決定していてもう片方はカラッポ、というわけがない。当たり前ですけど。そもそもそこまで行くと内外の区別が難しいわけで、大抵の研究者は内外の情報を同じ平面上でモデル化することに落ち着いている筈です。

認知科学的な分野への影響はもちろんですが、環境と人間の関係に関する抽象的なアイディア自体は何にでも応用してみることができます。哲学以上に哲学的な成果ですよね。そういう仕事ちょっと憧れます。まあとにかくちょっと日常的なことに置き換えて考えみます。

「朱に交われば赤くなる」じゃないけど環境によって自分の行動が決まる面は認知にかかわらず全ての行為に言えそうです。なら、善人になりたければ善行をアフォードされるような環境に身を置くことが理想的だし、識者になりたければ学習をアフォードされる環境に身を投じた方が良いということになりますか。他力本願な話ですけど、わからなくもないです。でも「こうなりたい」と思ったのは自分?でもそれも環境にアフォードされた結果?鶏と卵のようにグルグルして答がはっきりしない。同様に、犯罪者は環境に犯罪をアフォードされたことに。「俺が悪いんじゃない、環境が悪いんだ」!!(サウス・パークでサダム・フセインがそういう歌謡ってましたね。ちなみにアフォーダンスが人気あるらしい日本はじゃあ犯罪者に同情的か…というとそうでもなくて死刑制度健在。)太ったのは太るようアフォードする消費社会のせいだし、恋人に優しくできないのは冷たくなるようアフォードした恋人のせいだし、芝生の上でうっかり昼寝しちゃったのは昼寝をアフォードした芝生のせい。なんだか空が青いのもポストが赤いのも全部環境のせいに。気違いに刃物、無法者にアフォーダンス(笑)

結局重要なのは環境なの、人間なの?

「どっちだって良いじゃん。どっちもだよ、どっちも!!」?
はい、やっぱりそれ正解。研究者も皆結局そう思ってるんですよね。

そういえば最近、「鶏と卵は卵が先」と「識者」による合意が図られたそうですね(笑)
http://cnn.co.jp/fringe/CNN200605260024.html
遺伝学者・哲学者・養鶏家による結論って……
トリビアの泉じゃないんだからさ……って感じ(笑)
しかもディズニーの「チキン・リトル」の宣伝かぁ。企業は真実を買えるのね…(笑)

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 アフォーダンスとは、環境が動物に提供する「価値」のことである。アフォーダンスは良いものであれ、悪いものであれ、環境が動物に与えるために備えているものである。(中略)アフォーダンスは事物の物理的な性質ではない。それは「動物にとっての環境の性質」である。アフォーダンスは知覚者の主観が構成するものではない。それは環境の中に実在する、知覚者にとって価値のある情報である。
 物体、物質、場所、事象、他の動物、そして人工物など環境の中にあるすべてのものはアフォーダンスをもつ。動物ならばそれらにアフォーダンスを探索することができる。
 環境にあるものは、すべてアフォーダンスの用語で記述することができる。
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 椅子は座ることをアフォードするようにつくられている。椅子の本質は「座る」アフォーダンスである。すべての道具は、何か特定のことをアフォードするようつくられている。アフォーダンスをピックアップすることは、ほとんど自覚なしに行われる。したがって、環境の中にあるものが無限のアフォーダンスを内包していることに普通は気づかない。しかし、環境は潜在的な可能性の「海」であり、私たちはそこに価値を発見し続けている。
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【Book】Sasaki, Masato. 1994. Affordance: New Theory of Cognition. Tokyo: Iwanamishoten.

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