Friday, April 06, 2007

[Book] 容赦なき戦争 War Without Mercy


[本] ダワー,ジョン.1986. 猿谷要監修.斉藤元一訳.1987.『人種偏見: 太平洋戦争に見る日米摩擦の底流』.TBSブリタニカ.(同.2001. 『容赦なき戦争』.平凡社)

ピューリッツァ賞を受賞した『敗北を抱きしめて』と同じダワーの著作。
こちらの方が書かれた時期も扱っている時代も早い。
『敗北を抱きしめて』が戦後の日本に焦点を当てているのに対し、
この『容赦なき戦争』は戦中の日米両国におけるプロパガンダを扱っている。
大変興味深い一冊。沢山の実例を伴っているので説得力もかなりある。
平凡社ライブラリー版への序文は9.11直後に書かれており、
テロと真珠湾攻撃の比較も、流布する言説の比較もなるほど、と読んだ。
何よりも、ダワーの示す絶望と希望の危ういバランスに惹かれずにはいられない。

ちなみに、『敗北を抱きしめて』というタイトルを初めて聞いた時は、
なんて凄いタイトルだろうと雷に打たれる思いだったが、
英語の原題がかなり違う印象で酷くがっかりしたのを覚えている。

今まで私が映像で見たダワーはいつも英語で話していた。
けれど日本側の資料にもかなり良質のものも含まれていて、
ダワーは果たして日本語ができたものかと疑問を抱かせるほど。
それでも私的にはダワーよりもラミスの方が好感が持てます。

とにかくそれでもこの本は一読の価値がある本だと思います。

ちなみに去年と同じこの時期に突然戦後史ブームがやってくるのは偶然ではなくて、
東工大杯でショッキングなラウンドを体験してしまうから。
主催者の論題選択には別に問題はないわけだが、
いかんせん参加者の読書量に愕然とさせられる。
それについてはまた後日書くこととします。

---------------------------------
言葉というものは、重要である。スローガン、イメージ、シンボル、ステレオタイプ、記憶の断片――すべてこれらのことは、自己や他者についての概念を形づくり、私たちの行動に影響を与える。そして言葉はたびたび誤解のもとになり、言葉から生まれた概念はゆがめられ、行動は悲惨で破壊的なものとなる。(p.21)
---------------------------------

[Book] Dower, John W. 1986. War without Mercy: Race and Power in the Pacific War.

No comments: