Tuesday, May 09, 2006

【Book】日本の多言語社会 Multi-lingual Society of Japan

【本】真田信治・庄司博史編.2005.『事典 日本の多言語社会』.岩波書店.

タイトルの意味が最初イマイチわからなくて本屋で一瞬眉間に皺を寄せてしまいました(笑)地方言語や移民言語の現状について説明しているならあんまり「事典」って感じしないし、多言語社会関係のキーワードの解説なら日本に特有な感じがしないし・・・。なんのことじゃい、って思いました。が、買ってみたら思いのほか使い勝手が良くて感激。

以下、引用。
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言語権

 言語権とは一般に,自らの言語,特に母語を自由に用いる権利とみなされている.また最近では,言語的人権ともいわれるように基本的な人権の一部とする見方がある.しかし一般の基本的人権に比べ,その解釈は多様であり,また言語権という概念自体が広く理解されているとはいえない.
 その概念の由来にかかわるものとして,1815年のウィーン会議での最終議定書は,他民族の支配下におかれることになった小数民族(エスニック・マイノリティ)の言語の公的使用を擁護しようとした最初の国際条約といえる.また国家の法律として少数民族の言語権に踏み込んだものとしては1867年のオーストリア憲法がある.そこでは,すべての民族はその言語を守り育てる全面的権利を有するとしたうえで,教育,行政,および公共の場において地域で使われている言語の平等性が国家によって認知され,自己の民族言語で教育を受けられるように手段を講じなければならないとのべている.ここに集団を中心にした言語権の認知と擁護の原型を認めることができる.
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 こうしてみると,言語剣は大きく,1)個人の自由な思考感情表現の手段であり,個人の自己同定の対象である母語の習得と使用を平等に保障しようとする立場と,2)民族,エスニック集団などの集団の表象として,そして,その成員にとって帰属意識の紐帯としての言語の存続を保証しようとする立場と,2つの見方がある.
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ことばと帰属意識(アイデンティティ)

 ことばは,個別言語や地域方言,さらにジェンダー,階層などの社会的方言にかかわらず,それぞれ,言語構造,イントネーション,語法,スタイル等において特徴を有している。一般に話者は発話にみられるこれらの特徴により,特定の(言語)集団に属しているとみなされる.そして話者自身も,特に異言語話者と接触する時には,その特徴を意識し,場合によっては,自己の言語,あるいはその変種に強い帰属意識(自己同一性,アイデンティティ)を感じることがある.
 多くの場合,話者にとって,その帰属する集団のことばは,知的・情的表現,対人関係維持の最良の手段であり,母語や方言には,なかば運命的で密接な関係をもっている.したがって,自己の(帰属意識の対象である)ことばに対し,原初的な愛着をもち,同じことばの話者に対し親しみを感じるのはある程度自然なことである.
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【Book】SANADA, Shinji and SHOJI, Hiroshi ed. 2005. Dictionary of Multi-Lingual Society of Japan. Tokyo: Iwanamishoten.

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