Tuesday, May 16, 2006

【Book】沈黙のファイル The Silent File

【本】共同通信社社会部編.1999.『沈黙のファイル: 「瀬島龍三」とは何だったのか』.新潮社.

この本には、旧陸軍参謀本部で中心的な役割を果たしていた人物が、戦争責任は問われず、商社の賠償ビジネスで暗躍し、政界とコネを深めたとあり、その経緯がインタビューも含めて記されてある。

ちなみにこの人物、瀬島龍三という人は、1990年の湾岸危機勃発時に「日米エネルギー委員会」の日本側ミッションの団長だった。(エネルギーは金の生る木だというのは世間の常識だ)この委員会の会合に出席するためという名目で1990年11月7日、渡米している。その実は日本政府(当時は竹下政権)からスコウクロフト将軍と接触するために派遣された密使だった。このことは手嶋龍一の『一九九一年 日本の敗北』に書かれている。

どうしてそんなことが可能なんだろう?

滅茶苦茶な作戦で何百万もの人を死に追いやり、シベリアに抑留されれば他の兵士がバタバタ死んでいく中機密情報を売り渡すことで1人特別待遇を受け、帰ってくれば戦争責任は問われず、賠償金の受け取り国の政治家とマージンを山分けすることで儲け(当然その分受け取るべき市民が受け取っていないことになる)、挙句の果てに政府の要人として歴代首相のアドバイザー?

少なくとも私がこれまでに読んだ資料からはそのように受け取れる。
もし本当なら酷い話だと思う。どういうこと?ホントどういうこと?

酷い話じゃないか。得するのは悪いヤツばかりって話でしょう?救いようのない話だ。
こんな輩と腐敗した政治的指導者に大切な賠償金を吸い取られた、
日本人もインドネシア人も韓国人も良い面の皮だ。
しかも「払った」「貰ってない」と被害者同士の敵対感情を煽られるなんて愚の骨頂だ。
お互いの政府がありえないほど不誠実なだけだ。

今年のアジア大会(AIDCの方)では、
「THW pay reparations to the victims of colonization」
という論題が出たらしい。一体どんな議論が交わされただろうか。
実態をよく分析して、現実的で実質的な議論に発展したなら良いなと思う。
「払った」「貰ってない」のレベルで善悪を云々しても虚しいばかりだ。
「払うべきだ」「もう済んでる」で争うのではチーチーパッパのチーパッパ。
アジアの大学生が集まってお遊戯をしたのも同じことだ。

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 瀬島は旧陸軍参謀本部作戦課のエリート参謀だった。三十歳で事実上、対米英戦の作戦主任となり、「陸軍大学校開校以来」と言われた頭脳は四百万人の軍隊の生死を左右した。
 戦後、十一年間のシベリア抑留を経て伊藤忠商事に入社。十年で専務、二十年で会長になり、さらに中曽根康弘、竹下登ら「歴代首相の指南役」「政界の影のキーマン」と呼ばれるまで出世階段を上り詰めた。 「瀬島神話」の言葉を生んだ華麗な経歴。だが、そこには謎がつきまとう。無謀で愚かな戦争の核心にかかわった瀬島が、なぜ不死鳥のようによみがえったのか。
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 戦時中の日本軍のインドネシア占領支配に対する賠償問題は五七年十一月、首相岸信介とインドネシア共和国初代大統領スカルノの会談で、総額八百三億円を日本側が支払うことで決着していた。
 ただし十二年間に毎年二千万ドル相当を「現物」で支払うという条件付きだ。インドネシア政府が必要な物資などを日本企業に注文し、代金の支払いは日本政府が保証する。日本の商社にとってはインドネシアの政府からの注文を取り付けさえすれば代金の取りはぐれがなく、うまみの多い商売だ。各商社はその巨額利権をめぐって争奪戦を繰り広げた。
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 東日貿易社長久保正雄は東京・銀座の外車ブローカーから身を起こした立志伝中の人物だ。終戦後、高級乗用車が不足した時代に、占領軍の軍人や米人牧師らの名義で米国車を輸入し、日本の大企業などに転売して荒稼ぎした。(中略)スカルノ政権に食い込んだ久保正雄は、ジープ納入を手始めに紡績工場プラント、テレビ局設備など賠償絡みの仕事を次々と伊藤忠商事に仲介し、その都度コミッションを要求した。(中略)コミッションは通常一三パーセントだった。久保の説明では、一〇パーセントをスカルノに渡し、残り三パーセントが東日貿易の取り分になるという。
 「こういう裏のコミッションの費用を捻出するには、輸送費などの経費を水増しするしかない。ジープの場合、輸送費を二倍に水増ししたら、インドネシア国家警察の幹部が『いくらなんでも輸送費が高すぎる』と文句をつけてきた。『車にいろんなもの(スカルノ政権へのリベートの意味)を上乗せするから輸送費が高くなるんだ。お前らも事情は分かってるだろう』と言い返したが、結局輸送費は半分に削ることにした。もちろんその分、車本体の値段が跳ね上がったけどね」
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【Book】Kyodotsushinsha Shakaibu ed. 1999. The Silent File: What was "Seshima Ryuzo". Shinchosha.

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