Thursday, April 27, 2006

【Book】ワード・ポリティクス Word Politics

【本】田中明彦.2000.『ワード・ポリティクス』.東京:筑摩書房.

高瀬淳一の『武器としての<言葉政治>』が国内の政治に焦点があるとすれば、こちらは外交について。特に極東外交について言及している。

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 通例、軍事力も経済力も言葉を伴って使われ、その言葉によって意味が与えられる。いわゆるアメとムチの区別は、言葉によって与えられる。「私の要求にしたがいなさい。さもないと攻撃しますよ」という言葉を伴って、軍事力は、多くの場合意味をもつ。また「私の要求にしたがってくれれば、これだけの代価を支払いますよ」という言葉を伴って、経済力は多くの場合意味をもつ。その意味でいえば、すべてのポリティクスは、ワード・ポリティクスである。(中略)
 しかし、それにもかかわらず、本書で指摘したいのは、現在の世界システムにおいて、特に東アジアの国際政治において、そしてとりわけ日本の外交政策を考える時は、パワー・ポリティクスやマネー・ポリティクスとならんで、ワード・ポリティクスが重要になっている、ということなのである。しかも、そこでのワード・ポリティクスは、かならずしも、単純な脅迫や交換の言明に直結しないシンボル操作を含むものである。よくよく考えてみれば、相手に影響を与えようとして使う言葉やシンボルは、必ずしも脅迫と報酬というコミュニケーションにのみ還元されるわけではない。
 コミュニケーションには、単にこちらの意向を伝えるだけでなく、そもそも相手の思考内容自体に影響を与えようとする機能も大きい。何が好きか嫌いか、何が正義で何が悪か、何が重要で何が重要でないか。これらの問題について、さまざまな言葉を使うことで、相手の見方を変えることは十分ありうる。さらにまた、自らが何者であるか、何のために存在しているのか。これらの根源的なものの見方についても言葉は影響を与え得る。そしてもし、このような側面に影響を与えることができれば、相手に影響を与えるのに軍事力や経済力はそれほど必要なくなるだろう。こちらの思うとおりのことをすることが、相手にとっても正しいことである(あるいは得になることである)と認識してもらえば、特にそのために脅迫をする必要もないし、報酬を与える必要もないからである。(中略)最近になってより鮮明になりつつあるが、1990年代後半、日本を取り囲む外交は、ますます会議外交・首脳外交を中心としたものになっている。これ自体、グローバリゼーションの進展する世界システムの動向、つまり『新しい「中世」』で論じたさまざまな動向が生み出した現象であるが、これを一国の外交ということでみると何がいえるのだろうか。この二つの論文で、私は初めて明示的に「ワード・ポリティクス」(言力政治)という言葉を使って、当面する課題を提示したつもりであった。説明的にいえば、現代の会議外交・首脳外交においては、ますますシンボル操作能力が重要になる。着想力、表現力、発言力、説得力、演出力、すべてを引っくるめた言葉の力、「言力」とでもいいうるパワーが重要になってきていると論じた。そして、残念ながら日本外交に最も欠けているのが、この力なのではないかと指摘したつもりである。

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【Book】TANAKA, Akihiko.2000.Word Politics.Tokyo: Chikumashobo.

When the " as weapn" by Takase Junichi is focusing on the domestic politics, this one is about diplomacy, especially about diplomatic policies in Far East.

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